2018.11.07.
喜界島の言葉「喜界語」を保存・継承へ 総合政策学部教員が島民を巻き込んだプロジェクトを展開

11月25日(日)現地の小学生が喜界語で狂言を披露します

 鹿児島県の奄美群島・喜界島に残る言葉「喜界語」を保存・継承するプロジェクトに、関西学院大学総合政策学部の教員が取り組んでいます。ともに言語学が専門の本田盛(ほんだ・まさる)・教授と今西祐介・専任講師。2014年からフィールドワークを通じて調査・研究を進めており、11月25日(日)にはプロジェクトの一環として、現地の旧荒木小学校で地元小学生による喜界語を使った狂言が披露されます。遠隔地ではありますが、活動を取材・ご紹介していただきたく思います。

 世界には現在、少なくとも約6,000言語が存在し、そのうち、今世紀の終わりまでに約3,000言語が消滅すると言われています。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2009年2月、消滅の可能性がある言語を調べた“Atlas of the World’s Languages in Danger”を発表。日本では、消滅危機言語として「極めて深刻」と分類されたアイヌ語など8言語が入り、喜界島(喜界語)は、奄美大島、徳之島とともに「奄美語」として「危険」分類に入っています。

 消滅危機言語の記録や保存に関する試みは各地にありますが、継承が進んでいないのが現状です。本田教授らはフィールドワークを続けながら、70歳以上となった話者と、喜界語を知らない小学生が協力して喜界語を保存・継承していくため、今年4月からプロジェクトを開始。喜界島言語文化保存会や島民、狂言の講師らの協力のもと、狂言『附子』の喜界語への翻訳を進め、小学生に言語や狂言を指導してきました。公演は11月25日(日)14時から、旧荒木小学校で。小学生6人が喜界語を使って演じます。このプロジェクトは、日本言語学会の2018年度「言語の多様性に関する啓蒙・教育プロジェクト」に採択されています。

 本田教授は「日本では地域語や方言を話すと、かつては罰として方言札をぶら下げさせられたり、話者が差別を受けたりすることもあり、『使ってはいけないもの』『はずかしいもの』という意識が広がり、継承されていません。話者の年齢を考えると、言語の保存・継承には猶予できない状況です。今回のプロジェクトでは、小学生が積極的に参加してくれ、島全体で良い効果が生まれています。小学生が習った喜界語を使って、すれ違う高齢者に挨拶すると、みなさん驚きながら本当に喜んでいます。住民が進んで継承活動することは、世界でも珍しい事例になるかもしれません」と話します。今西専任講師は「私たちが現地で研究することで、話者の方からは『自分たちの文化や価値観など魅力を再認識するきっかけになった』という声を聞きます。フィールドワークを通じて得た音声や映像を残し、論文という形で世界に発信することが私たちの役割。世界の消滅危機言語の地域でも生かせるものにしたい」と話しています。