2023.11.08.
楽しく、まじめに、体験しながら防災を学ぶ「防災キャンプ」を開催

関西学院大学とモリタホールディングスは10月27日(金)、28日(土)に、神戸三田キャンパス(KSC)で「防災キャンプ」を開催しました。2023年3月に包括連携協定を締結して以降、初めて実施する連携事業で、防災教育の新しい取り組みとして企画しました。
大学1~4年生、大学院1年生の22名が参加し、自然豊かなキャンパスの中でキャンプを楽しみながら様々なプログラムを通じて防災について学びました。

【1日目】―オリエンテーション―

オリエンテーションの冒頭、モリタホールディングスの明田京子さんは「災害が起きてKSCが避難場所になったという想定でプログラムを企画し準備してきた。モリタと関学がコラボし、三田の地から世界へ、防災と環境衛生の重要性を発信していく最初の一歩となる」と、防災キャンプの意義を語りかけました。
留学生で経済学部4年生の林志因さんは「日本で暮らしていく中で、防災知識は必要不可欠だと思い参加した。KSCに来るのも初めてで、自然豊かなこの雰囲気を目いっぱい味わいたい」と防災キャンプへの期待感を語りました。

―給水車への水汲み体験―

キャンプが始まると、まず学生たちはテントを設営しながら、順番にグループで水汲みを体験。3000リットルを貯水する給水車から、1日の避難生活に必要な3リットルほどを非常用給水バッグに注水しそれぞれのテントへと持ち運びました。
生命環境学部1年生の大浜愛莉さんは体験後、「この給水車1台で1000人を支援できると聞いてびっくりした。水汲みの手順はとても簡単で、こうやって綺麗な水が手に入ることは被災時には本当に助かると思う」と感想を述べていました。

―夕食『防災食を美味しく食べる』―

夕食では、きのこごはん、ハンバーグ、豚汁などの防災食を体験しました。きのこごはんを提供していただいた尾西食品の小池和明さんは「阪神淡路大震災まで非常食といえば乾パンくらいしかなかった。被災時でもご飯を美味しく食べたいという声がたくさん届き、アルファ米を使うことで少量の水で調理可能な防災食を開発した」と商品が誕生した背景を話しました。
理学部1年生の井上裕太さんは、実際にきのこごはんを食べ「炊き込みご飯のような香りで、味もしっかりしていて美味しい。防災食は美味しくないというイメージを持っていたが、印象がガラッと変わった」と嬉しそうに話していました。

―焚火でトーク①―

防災キャンプ1日目を締めくくったのは焚火でトーク。焚火を取り囲みながら防災用品を開発した2名の方にお話を伺いました。「+maffs +住宅用消火器」を開発したモリタホールディングスの清水範子さんは、消火器を一般家庭に普及させることに成功した秘話を紹介。「当時は赤色が定番であった消火器を、白・黒を基調にデザインすることでインテリアとの調和を図り、家庭内に消火器を設置することの違和感を取り除いた」と話しました。
清水さんの話を聞いた生命環境学部1年生の岡村颯泰さんは「消火器の一般普及率向上という課題を解決するのに色に注目したという発想にとても驚いた」と感想を述べました。

―焚火でトーク②―

続いてヤマトエスロンの松永貴至社長が無水ハミガキの開発背景を紹介しました。「阪神淡路大震災の被災地では水利用は飲食が優先され、ハミガキが疎かになっていた。そのため口内環境が悪化して誤嚥性肺炎を発症してしまい、多くの方が亡くなった。水がなくても口腔ケアをしてほしいという思いから無水ハミガキを開発した」と話しました。
総合政策学部1年生の水野永莉菜さんは「被災時の健康管理というと飲食ばかりをイメージしていたが、それと同じくらい口腔ケアも大切だと学んだ」と松永社長の話を振り返りました。
焚火でトークの後、就寝時間まで少しの談笑をし、防災キャンプ1日目を終えました。

【2日目】―防災レクチャー①『災害時の環境衛生と活躍する特装車』―

2日目はまず防災食で朝食をとった後、モリタエコノスの藪博之進さんと坂口裕宣さんによる防災レクチャーからスタートしました。熊本地震発生後に現地で支援活動を行った経験も踏まえながら、大量の災害ゴミをスムーズに処理するためには、分別がポイントとなることを説明。「ゴミを被災現場から一時置場へ移動させる際の分別は住民の大切な役割の一つ」と語りました。
総合政策学部3年生の寺東結実さんは「もし自分が被災したら、周囲の人たちと協力して一時置場での分別を行い災害ゴミのスムーズな処理に貢献したい」と話しました。

―防災レクチャー②『火について〜火災のメカニズム〜』―

続くレクチャーでは、モリタホールディングスのフェローである坂本直久さんから火災のメカニズムを伺いました。火災は可燃物、熱、酸素が連鎖的に反応することで発生します。そのため消火の方法には「熱を冷却する」、「酸素を遮断する」、「負触媒作用により連鎖反応を止める」という3つのパターンがあることを学びました。
受講後、総合政策学1年生の岡田有未さんは「大学の授業ではあまり扱わない内容で新鮮だった。消火のメカニズムを学べたので、この後の消火体験で実践するのが楽しみ」と語りました。

―消火体験―

早速防災レクチャーでの学びを実践するため、グラウンドに移動し消火活動を体験しました。オイルパレットに燃え上がる炎を消火するため、火元に向けて消火器を噴射。油面全体を粉末消火剤で覆うことに成功すると連鎖反応が止まり消火することができますが、初めて体験する学生にとっては難しい様子で、消火に成功したのは7割ほどでした。
工学部2年生の山本晃大さんは「消火器を使えば簡単に消火できると思っていたが、火元に狙いが定まらずなかなか消すことができなかった。訓練して慣れることが必要で、また消火を体験できる機会があったら参加したい」と話しました。

―防災クイズ大会『なまずの学校』―

続いてのプログラム『なまずの学校』では、「避難所である小学校に3日分の食料としてもっていくのにふさわしいのは?」など、被災を想定したクイズが出題。1分間で学生が答えを書き出した後、「なまず先生」が丁寧に解説しました。「乾パンやチョコレートは日持ちし栄養価も高いが、食べ続けると飽きてくる。バラエティも豊富な缶詰やレトルト食品が最適」と実践的な学びとなりました。
優勝したAチームの理工学研究科博士課程前期課程1年生の中西杏菜さんは、「クイズでは1分間で3つのアイデアを考える時間があったが、実際の災害時はもっと時間がないと思う。知識として持っていると、いざという時に引き出すことができるので、防災について学ぶことは大切だと感じた」と話しました。

―昼食『ポリ袋を使った米炊き』―

2日目の昼食では、災害時を想定した米炊きに挑戦。ポリ袋に米と水を入れ、鍋に張った湯煎で米を炊くという方法で、湯煎に使用する水は飲用である必要はなく、被災時に貴重な水を節約することができます。学生たちは炊き立てのご飯をカレーライスにし、仲間とこれまでのプログラムを振り返りながら昼食をとりました。
総合政策学部1年生の松本紗季さんは「ちょっと硬く感じたが、味はおいしかった。ポリ袋と少しの水でご飯が炊けるのはすごい。災害時には役立つ知識なので、たまに自分でやって思い出したい」と話しました。

―クロージング―

防災キャンプの最後では、この2日間のプログラムを振り返り、22人一人ひとりがそれぞれの感想を発表し、参加者全員で学びや気づきをシェアしました。「キャンプを楽しみたい、視野を広げたいと思い参加した。防災についてプログラムを通して楽しく学ぶことができた」「防災についての知識はあっても、初めて体験することが多かった」「防災というものを思い出して、いざという時に行動できるようになる経験ができた」など、防災キャンプでの貴重な体験をそれぞれの言葉で語りました。

最後に、モリタホールディングスを代表して、明田京子さんが「今回のキャンプが防災と街づくりのきっかけになることを願っている。皆さんがこの2日間で学んだことを周りの人たちに伝えていってほしい」と語り、今回のプログラムを締めくくりました。