2023.09.04.
関西学院大学 手話言語研究センター 主催 「手話言語×AI~ICTを活用した新たなチャレンジ~」 開催のお知らせ

関西学院大学 手話言語研究センター(所長:松岡克尚・人間福祉学部教授)は9月10日(日)、「国際シンポジウム『手話言語×AI~ICTを活用した新たなチャレンジ~』」を関西学院大学西宮上ケ原キャンパス中央講堂で開催いたします。当シンポジウムでは、公益財団法人日本財団、香港中文大学、Google Japan、bit.studioからゲストスピーカーを招聘するほか、巳波弘佳・関西学院大学副学長を交えたディスカッションを開催予定です。当シンポジウムでは、AIやICTを活用したオンライン手話学習ツールの開発で得られた知見を通して、AI手話認識技術を用いた新たな手話学習の可能性について考えます。

当日のプログラム概要

13:30-13:35 開会アナウンス
13:35-13:50 土井健司 副学長挨拶「手話言語研究センター大学常設化について」
13:50-14:50 「プロジェクト手話」紹介
・「プロジェクト手話」の概要紹介
・各機関の役割
・視覚言語/空間言語である手話をAI機械学習させることへのチャレンジ
・今後の展望
・「プロジェクト手話」デモ
<登壇者(敬称略)と本プロジェクトにおける役割> ▶ Ka Yiu Cheng(香港中文大学 手話言語学・ろう者学研究センター)…
   本プロジェクト立ち上げ、香港手話およびヤンゴン手話データ収集などを担当
▶ Joe Fry(Google)…AIなどのテクノロジーを用いたプロジェクト開発を担当
▶ Kiattiyot “Boon” Panichprecha(bit.studio)…Googleの協力企業、AI機械学習の技術全般を担当
▶ 川俣郁美(日本財団)…本プロジェクト助成支援、PRなどを担当
▶ 前川和美(関西学院大学手話言語研究センター)…日本手話データ収集などを担当
15:00-16:00 シンポジウム
モデレーター:巳波弘佳(関西学院大学副学長 / 工学部教授)
・ 巳波教授による「AI活用人材育成プログラム」についての紹介
・ AIを手話に活用することの可能性について(各登壇者とのディスカッション)
・ 今後の研究や教育に期待すること(各登壇者とのディスカッション)
16:00-16:20 質疑応答
16:20-16:30 閉会挨拶 松岡 克尚(関西学院大学手話言語研究センター長)

AIを手話に活用することの意義・可能性:
日本手話は主に日本のろう者が日常的に用いる言語でありながら、話者の少なさゆえ聴者にとって身近な存在であるとは言えません。また、音声言語と比べ手話を学習する環境も限られているのが現状です。
さらに、現行の手話辞書は日本語などの音声言語から手話を調べることはできても、手話から音声言語の意味を調べる辞書はほとんど存在しません。手話は書き言葉を持たない言語であることや、空間を用いる視覚言語であることが主な理由です。手話にAIを活用することで、カメラが付いたデバイスがあれば自宅にいても手話が学べ、手話が身近な存在になることが期待されます。AIによる手話認識技術を活用すれば、学習者が表現した手話をAIが認識し、音声または文字に変換する手話辞書の実現が可能になります。いずれ文レベルでの認識が可能になれば、AIによる手話通訳の実現も期待できます。

プロジェクト手話」とは:
もともと、香港中文大学手話言語学・ろう者学研究センター(The Centre for Sign Linguistics and Deaf Studies、以下CSLDS)が中心となり、日本財団の助成を受けながら、各国の手話のオンライン辞書を作成する「Asian Sign Bank」作成プロジェクトが進んでいました。その後、ICTを活用してより身近に手話学習ができる教材の開発を目指し、Google の手話認識技術の協力を得て、「プロジェクト手話」が開始。当初は香港手話のみのスタートでしたが、日本はAsian Sign Bankプロジェクトに協力してきたことから日本手話が追加されることになりました。また、CSLDSと関西学院大学手話言語研究センターは手話言語学に関する国際連携事業を進めてきたことなどから、「プロジェクト手話」に関西学院大学手話言語研究センターが協力する運びとなりました。

「プロジェクト手話」で開発されたアプリ「手話タウン」「手話タウンハンドブック」:
「プロジェクト手話」第一弾として2021年9月に公開されたのが、AIが手話表現を認識する手話学習ゲームアプリ「手話タウン」です。日本財団と香港中文大学が共同で開発を進め、Googleと関西学院大学手話言語研究センターが協力しました。ゲームの舞台は、手話を公用語とする架空の町。カメラに向かって実際に手話でアイテムを指示しながら、旅行に備えて荷物をまとめたり、宿泊するホテルを探したり、カフェで食べるものを注文したりと様々なシチュエーションに沿った手話を、ゲーム感覚で学ぶことができます。
その後、第二弾として「手話タウンハンドブック」の開発に着手。「手話タウン」で単語の認識に成功したこと、利用者から好評であったことなどから、「手話タウン」を発展させた手話辞書アプリ「手話タウンハンドブック」の開発着手に至りました。今回よりヤンゴン手話(ミャンマーで用いられている手話言語の一種)が加わります。一方で、AI機械学習のためには膨大な手話データが必要です。全国のろう者に手話データの提供を依頼していますが、データ数が少なく認識精度がまだ低いのが課題となっています。

「プロジェクト手話」で開発したアプリの特色:
音声言語の学習は、自分の発した声を耳で聞いて確認することができます。しかし、手話言語学習の場合、自分が表出した手話を見ることが困難です。プロジェクト手話のアプリは、パソコンやタブレット、スマートフォンのカメラに向かって手話を表出すると、AIが分析し、サンプル動画と共に自身の手話が画面に現れるため、自身の手話を見たりサンプル動画との相違を比較したりすることができます。

【関西学院大学 手話言語研究センターについて】
関西学院大学手話言語研究センターは、手話言語やそれに関連する領域において科学的・学術的研究を行い、手話の言語としての位置づけを学術的に確立すること、および社会的な認知度を高めることを目的にしています。2015年に学内の特定研究プロジェクトとして設立され、翌年度より日本財団の助成を得て様々な事業を展開するに至っています。2023年4月より学長直属の常設研究機関として新たにスタートすることになりました。

関西学院大学 手話言語研究センター 主催 「手話言語×AI~ICTを活用した新たなチャレンジ~」 開催のお知らせPDFリンク

手話言語×AI~ICTを活用した新たなチャレンジ~チラシPDFリンク