2022.10.03.
猪裕太さん(理工学研究科前期課程2年生)がJAXAはやぶさ2サンプル分析チームで活動しています ~科学誌「Science」掲載の論文にも貢献~

宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と本学の連携大学院協定によってJAXAに派遣中の猪裕太さん(理工学研究科博士課程前期課程2年生)が所属するはやぶさ2初期分析チーム「石の物質分析チーム」が2022年9月23日付(日本時間)、研究論文がアメリカの科学誌「Science」に掲載されたと発表しました。猪さんは2021年8月からJAXAへ派遣され、岩田隆浩・本学客員教授の指導を受けており、今回発表された論文の研究成果に貢献しました。

■JAXA発表プレスリリース (日本語) https://www.jaxa.jp/press/2022/09/20220923-1_j.html
(英語) https://global.jaxa.jp/press/2022/09/20220923-1_e.html

東北大学の中村智樹教授が率いる「石の物質分析チーム」は、小惑星探査機・はやぶさ2により2020年12月6日に地球へ帰還したリュウグウサンプルの物性(硬さ、熱の伝わり方、弾性波速度、比熱、密度など)を測定し、測定した物性値を用いて小惑星の形成進化のシミュレーションを行いました。猪さんは、JAXAの田中智教授が率いる物性計測サブチームの一員としてプロジェクトに参加。測定前には、リュウグウの石の強度の情報が乏しかったため、測定時に石を破壊することがないように、測定時の石にかかる荷重をモニタリング。その後、弾性波速度(※)を測定できるように新たな測定技術を開発し、弾性波速度を測定しました。測定した値は、小惑星の形成進化のシミュレーションに用いられました。

猪さんは派遣期間の2023年3月31日までJAXAで研究を行う予定。「リュウグウサンプルの類似隕石(炭素質コンドライト隕石)の弾性波速度の研究成果は多くありません。開発した測定技術で測定することで、炭素質コンドライト隕石の弾性的性質の理解を深めるとともにリュウグウサンプルの弾性的性質の理解を深めて、将来のサンプルリターン計画に役立たせたい」と今後の抱負を語りました。
(※)弾性波速度:弾性体の中を伝播する波動(弾性波)の速度。弾性波速度は媒質の密度、弾性定数で決まります。

■掲載論文について
タイトル:炭素質小惑星リュウグウの形成と進化:リターンサンプルから得た証拠
原題:Formation and evolution of carbonaceous asteroid Ryugu: Direct evidence from returned samples 掲載誌:Science
DOI:10.1126/science.abn8671

■JAXAとの連携大学院協定について

JAXAの研究者を客員教員として委嘱したり、理工学研究科の学生がJAXAに出向いて最先端の施設・設備を利用して研究指導を受けたりできるようになります。関西の大学では国立奈良先端科学技術大学院大学に続き、2校目、私立大学では関西初となります。(締結日=2020年11月30日時点) 参考: https://www.kwansei.ac.jp/news/detail/4239