2022.04.25.
関西学院大学などの学生約50人 胎内被爆者の体験記を英訳、発信へ

関西学院大学を中心とする学生グループが、広島、長崎へ原爆が投下された際、母親の胎内で被爆した「胎内被爆者」が当時やその後の人生をつづった体験記を英語に翻訳しました。戦争を知らない若い世代が体験記を読み込み、「地獄のよう」「死の斑点」といった言葉やニュアンスをどう訳すかを悩み考えながら取り組んだもので、電子書籍として6月下旬に世界に向けて発信することになりました。ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器の使用さえ取りざたされるなか、学生たちは「77年前の惨禍はまだ終わっていない」「今なお苦しみ続けている人がいる」ことを世界に伝えたいという思いが募っています。

学生たちが翻訳した体験記は、原爆胎内被爆者全国連絡会(代表・二川一彦さん、事務局・広島市)が計47人から寄せられた手記をまとめて2020年7月に発行した「生まれた時から被爆者~胎内被爆者の想い、次世代に託すもの」(B5判、244ページ)で、被爆70年にあたる2015年にまとめた「被爆70年に想う~胎内被爆者等の体験記」の続編。最初の体験記はすでに英訳されています。
今回、英訳に取り組んだのは、関西学院大学のハンズオン・ラーニング・プログラムの科目「社会探究実習」で、2020年に江田島・呉(広島県)をフィールドに「平和」について考え、学んだ学生が中心。実習で胎内被爆者の方から話を聞くなかで、第2集の翻訳ができていないことを知り、学生の力で取り組めないかと考え、友人・知人らを通じて関心のありそうな他大学の学生にも呼びかけてグループを結成しました。国際基督教大学や北海道大学、琉球大学、滋賀大学などからも含め約50人が参集。昨年8月から2人一組で翻訳を始め、毎月、オンラインで連絡会を開きながら12月までにほぼ作業を終えました。現在は最終的なチェックの段階で、6月に電子書籍として公開することにしています。
中心メンバーの一人、貞岩しずくさん(文学部4年)は広島市出身。「被爆2世、3世については意識していましたが、胎内被爆者についてはこれまで知らなかった。人間が作ったもので、長い間苦しむ人たちがいることを伝えることができれば」と話しています。

◆原爆胎内被爆者連絡会
2014年に胎内被爆者32人で結成。体験記は2015年に第1集、2020年に第2集を発行。毎年1回、「つどい」を開いている。