2021.06.05.
共同発表)新型コロナウイルス検出酵素試薬の開発 ~独自酵素開発酵素によるOne-Step Real-Time PCR法~

感染症診断において核酸増幅法の重要性が増しています。感染症の迅速な診断法の確立は、その後の感染症対策及び患者の生命予後を左右します。このほど、大阪母子医療センター・柳原格部長を中心とする研究チーム(※1)は、改良した耐熱性逆転写酵素、独自のDNAポリメラーゼの組み合わせで、高感度に新型コロナウイルスの核酸を検出するキットを開発しました。この方法で、溶液中5分子の新型コロナウイルスRNAを1時間以内に検出できました。また、大阪府立病院機構における研究(※2)において、保険収載された既存の新型コロナウイルス核酸増幅キットと比較した場合、本開発キットの感度は99.44%、特異度は100%でした。核酸増幅酵素試薬キットについての研究成果は、6月5日付科学誌PLOS ONEに発表されました。

本開発キットは、新たな感染症や、遺伝子の違い(変異)にも柔軟に対応することが出来ます。柳原らは研究用試薬として新型コロナウイルスの変異の検出に利用しています。解析で得られた情報は、次世代シーケンスによるゲノム情報とあわせて、厚労省「積極的疫学調査及び変異株に関する情報提供等への協力」要請に基づき、大阪府感染症対策企画課を通じて厚労省へ提供すると共に、国際的なSARS-CoV-2のゲノムデータベース(GISAID)にも提供しています。また、開発キットは検査試薬が枯渇した場合の緊急用として大阪府立病院機構に保存しています。

※1:大阪母子医療センター・柳原格部長、京大・院農・食生科・保川清教授、
    関西学院大・生命環境・生物科学・藤原伸介教授、阪大微生物病研究会・鈴木孝一朗主査
 ※2:大阪はびきの医療センター・感染症内科 田村嘉孝主任部長、大阪急性期総合医療センター・総合内科 大場雄一郎主任部長、
   大阪母子医療センター・臨床検査科 位田忍主任部長、同集中治療科 竹内宗之主任部長