2010.03.08.
震災きっかけにキリスト教を研究―中国人留学生の研究員が神学博士号取得

 中国人留学生で関学大神学研究科の奨励研究員の徐亦猛さんが、神学博士を取得した。指導教員の神田健次・神学部教授は、「中国人留学生で日本の神学博士号を取得するのはおそらく初めてではないか」と話す。
 中国・上海出身の徐さんは1994年11月に来日、大学入学を目指して神戸の日本語学校に通っていた。2カ月後に阪神・淡路大震災が起こった。住んでいた長田区の文化住宅は1階部分が崩れ、徐さんは窓を破って2階から脱出したが、1階に住んでいた5人の老人が亡くなった。「お金を持って逃げようとして、暗闇の中でカバンに入れたものが、偶然日本語学校でもらった聖書でした」と徐さん。火事ですべて焼けてしまったが、避難所で日本人の温かさに触れ、国という壁を乗り越えて支えあうことの大切さを知った徐さんは、キリスト教の道へ進むことを決心した。「祖父母がクリスチャンだったが、私は教会に通ったこともなく、はじめは経済学部や商学部に進学するつもりでした」と振り返る。
 聖和大学に入学し、日本の文部科学省の国費留学生となって関学大神学研究科に進学。博士課程を修了した後に研究員として在籍し、博士号の論文「中国におけるキリスト教本色化(土着化)運動―1920年代を中心に」を執筆した。今後は、神戸で牧師を続けながら、研究者の道に進み「中国と日本の学問的交流の架け橋になりたい」と話している。