2024.11.21.
楽しく、まじめに、体験しながら防災を学ぶ「防災キャンプ」第2弾を開催

関西学院大学とモリタホールディングスは11月8日(金)、9日(土)、神戸三田キャンパス(KSC)で「防災キャンプ」を開催しました。2023年3月に包括連携協定を締結して以降、2度目の開催となる今回は、2025年に阪神・淡路大震災から30年を迎えるタイミングでの開催であり、自分や家族の「いのち」を助けられる人財育成機会とすることを目的とし、防災の専門家が最も重視している「たべる・ねる・トイレ」に特化したプログラム構成での実施となりました。当日は大学1~4年生24名が参加し、各分野の専門家による講話のほか、防災食や段ボールベッドを体験するなど、様々なプログラムを通じて防災について学びました。

【ねる―段ボールベッド体験】
今回の防災キャンプでは、参加学生は段ボールベッドでの寝泊まりを経験しました。組み立てのレクチャーは避難所・避難生活学会常任理事でJパックス株式会社 代表取締役の水谷嘉浩氏が担当。避難所における睡眠の実態を語った水谷氏は「避難所での雑魚寝は、舞い上がった土埃を吸うことで呼吸器系の病気を発症することも多い。土埃の吸引を防ぐほか、プライバシーを守る意味でも、このような段ボールベッドが有用」と話しました。十数個の段ボール箱を組み立て、さらにその上に板状の段ボールを敷いて手早く段ボールベッドを完成させた学生たちは、「思ったより暖かい」「飛び跳ねても大丈夫なくらい頑丈で意外だった」と段ボールベッドの性能に驚いていました。また、水谷氏からはTKB48と言葉が紹介されました。これは、T(トイレ=清潔で安心できるトイレ)K(キッチン=温かい食事)B(ゆっくり休めるベッド)を48時間以内に避難所で整備することが大切であることを指しており、イタリアでは法律でも定められていることを知った学生たちは、興味深そうに講話に耳を傾けていました。

【たべる―防災食体験】
今回の防災キャンプ中の食事は、防災食を体験。防災士で、防災啓発活動を行う「博多 あん・あんリーダー会(地域防災士会)」初代女性会長である因幡那水氏が見本を見せながら、学生たちは発熱剤などをつかって防災食を調理しました。シェフでもある因幡氏は、「災害時でも盛り付けや彩りなど少しの工夫で心が晴れる。大変な時こそ、活力になるような食事が必要だ」と話しました。また、因幡氏からは、普段の生活で取り組める防災について講話を聞きました。講話のなかでは、災害への備えを考える時、リュックなどに入れて持ち出すことを想定する「非常用持ち出し備品」と長期の被災生活のために家庭に備えておく「備蓄品」に分けると取組みやすくなることが紹介されました。持ち出しアイテムを数あるリストからゲーム感覚で選択する「非常持ち出しゲーム」を体験した総合政策学部2年の米田凌梧さんは、「自分は3kg以上のリュックは持てないと思い、トイレ用品や寒がりである自身の特徴を踏まえてカイロより防寒着を選択するなど、いざというときの具体的な姿をイメージしながら最低限の物品に絞ったつもりだったが、3.5kgほどになっていた」と持ち出し品の選択の大切さを実感していました。

【トイレ―携帯トイレ・トイレカー体験】
特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事の加藤篤氏による講話と、携帯トイレ体験を実施しました。加藤氏は「被災地におけるトイレが安心・安全なものでないと、感染症を引き起こしたり、トイレに行かないようにするために水分補給を我慢したりと、様々な影響がある。排泄は何時間も我慢できるものではないので、重要度が非常に高い」と話しました。実際に携帯トイレを体験した学生は、「使用感は普段のトイレとそこまで変わらなかった」「被災時に電気もない状態で携帯トイレを使用するのは、思ったよりも難しい」などの感想をグループで共有しました。また、会場に用意されたトイレカー見学では、モリタホールディングスの岡本直彦氏から話を聞きました。トイレカーは男女に分かれた個室型で安心して利用でき、ストレスの軽減にもつながります。学生たちは実際に個室のトイレブースに入り、その快適さを体験しました。 このほかにも、会場には給水車と組み立て式温水シャワーが用意され、学生たちは講師の話を聞きながら、興味深く見学していました。
【給水車】
被災地で水道供給が断絶した時に活躍する「給水車」見学では、モリタエコノスの裏野陽大氏から話を聞きました。3,000Lのタンクへの給水方法には、上部からの給水口のほか、貯水槽からポンプで汲み上げる方法があることや、車両後部で給水作業を行う為、停車時の排気が車両前方へ向くような工夫をしている点など、説明を受けた学生たちは工夫の様子に感心していました。また、給水車の上にのぼり、上部給水口からタンク内部を覗きこんだ学生たちは、普段見ることができない澄み切った水がタンクいっぱいに広がる様子や、水量が減少した時の内部の水の揺れを防ぐ板状の装置を確認していました。
【組立式温水シャワー】
海水浴場でよく目にするコインシャワーを製造・販売する株式会社タニモトが、避難所生活に安心と清潔な環境を提供するため開発した「組立式温水シャワーシステム」見学では、開発者の谷本年春氏が解説。被災地でも比較的手に入りやすく安全な灯油を燃料とし、家庭用ボイラーにより毎分10Lの適温のお湯がすぐ利用できる節水型シャワーシステムは、開発者である谷本氏が何度も被災地に足を運びながら改良に改良を重ねたものです。1日目の夜にこのシャワーを実際に使用した学生たちは、谷本氏が語った障がい者、子どものいる母親など利用者の立場に立った工夫の数々に耳を傾けました。実際に利用した教育学部4年の髙橋桃菜さんは、「気温が低く寒かったが、すぐに温かいお湯が出てきた。個室も広く鍵もかかるので安心して使用でき、水温調節も簡単で、水圧もあり快適だった。おかげでゆっくり寝ることができた」と話しました。
2日間のプログラムを終え、今年防災士の資格を取得したという建築学部3年の関口裕信さんは、「TKB48や段ボールベッドについて、楽しく学ぶことができた。段ボールベッドや防災食の作り方を知識として知っているのと体験したことがあるのとでは大きく違うと思うので、今回参加してよかった。今後、いざというときに活かせると思う」と話しました。 モリタホールディングスの協力により、体験や専門家からの講話など普段の授業では得られないプログラムを取り入れることができ、学生一人ひとりが防災を自分事として考えることができる、実りの多い防災キャンプとなりました。