2024.10.01.
関西学院大学理学部化学科 小笠原 一禎 教授が 立方体型・ディスク型の元素周期表を考案!
工作しながら、直感的に元素を学べる周期表
関西学院大学(兵庫県西宮市、学長:森康俊)理学部化学科の小笠原一禎教授は、立方体型元素周期表(Element Cube)およびディスク型元素周期表(Element Disc)を考案しました。平面の元素周期表とは異なり、元素の連続性が表現されており、電子配置も理解しやすいのが特長です。組み立ては容易で、工作しながら元素周期表を学ぶことができます。また、授業の教材として教員にも有用なものとなっています。工作用データは2024年中に小笠原研究室HPで公開予定です。
立方体型周期表(Element Cube)の特徴
(1)元素の類似性をより正確に表現できる
例えば、1族と11族は元素の性質が似ており、現在一般的に用いられている長周期型の周期表より以前に用いられていた短周期型の周期表では、それぞれ1a族、1b族と呼ばれていました。Element Cubeでは遷移金属を天面に配置して
おり、 下記の組み合わせの族が縦に並んでつながることで、族の間の類似性が自然に表現できています。
【1族と11族 、2族と12族、3族と13族、4族と14族、5族と15族、6族と16族、7族と17族 】
(2)元素の連続性が表現できる
すべての元素が原子番号順につながることで元素の連続性が表現されています。
(3)電子配置が理解しやすい
s,p,d,f 各ブロックを立方体の異なる面に配置し、ブロック間の接続は接続マップの面で明示されています。そのため、次にどの軌道に電子が入っていくか、という軌道エネルギーの順番が理解しやすくなっています。また、最外殻軌道となるs,pブロックを側面に配置し、dブロックを天面、fブロックを底面に配置し、d,f軌道が内殻軌道であることをイメージしやすくしています。さらに、d,fブロックでは軌道が大きくなるほど外側に配置されるようになっているため、電子配置を容易にイメージできます。
(4)組み立てが容易
組み立ては折り紙のように折るだけ。ハサミもセロテープも不要なので、手軽に作成できます。
ディスク型周期表(Element Disc)の特徴
(1)元素の類似性をより正確に表現できる
s,p,d,f 各ブロックをディスクの異なる層に配置し、下記の組み合わせの族が上下に重なるようにしています。
これにより、族の間の類似性の表現が可能になりました。
【1族と11族 、2族と12族、3族と13族、4族と14族、5族と15族、6族と16族、7族と17族 】
(2)元素の連続性が表現できる
すべての元素が原子番号順につながることで元素の連続性が表現可能になっています。
(3)電子配置が理解しやすい
この周期表では、s,p,d,f 各ブロックをディスクの異なる層に配置し、層をめくってマークを合わせることで自然に次のブロックに接続できます。そのため、次にどの軌道に電子が入っていくかという、軌道エネルギーの順番が理解しやすくなっています。また、最外殻軌道となるs,pブロックを表面に配置し、dブロックとfブロックを内部に配置することで、d,f軌道が内殻軌道であることのイメージが容易に。さらに軌道が大きくなるほど、外側に配置されるようになっているので、電子配置をイメージしやすいものになっています。
(4)組み立てが容易
組み立てにはハサミとセロテープは必要ですが、比較的手軽に作成が可能です。
(5)楽しく学べる
dブロックやfブロックが内部に隠されていますが、層をめくってマークを合わせると連続的につながるようになっており、しかけ絵本のように楽しく学ぶことができます。
開発の経緯
これまでの立体周期表は円筒状で元素が全て側面に並んでいるものがほとんどでした。一方で、小笠原教授は、s軌道やp軌道が最外殻に対応してd軌道やf軌道が内殻軌道であることがわかりやすく、より電子配置をイメージしやすい周期表ができれば、高い教育効果が得られるはずであると考えていました。アイデアのきっかけになったのは、気分転換に解いていたルービックキューブ。立方体の各面に異なるブロックを対応させれば、立体的な周期表ができるのではないかという発想に至り、試行錯誤の末、Element CubeとElement Discが完成しました。作って学ぶ元素の立体周期表として京都大学大学院理学研究科固体量子物性研究室の前野悦輝教授が考案したElementouchに続く、直感的に理解しやすい周期表となっています。なお、小笠原教授はこれまでにも、最密充填構造に基づく結晶構造の理解の助けとなる「透明多面体による結晶構造模型」、さらにそれを工作しやすくした「作って学ぶ多面体結晶構造模型」を開発しています。
小笠原教授コメント
今回の周期表は、手軽に作成できるので、大学生・大学院生だけでなく、小学生・中学生・高校生にも学習教材として自由に利用してもらいたい。簡単な工作をすることで、楽しんで学んでもらえると思う。授業の教材として、教員にも利用してもらいたい。また、元素記号は万国共通なので、日本だけでなく、世界中で利用が可能だと考えている。教育的効果のみならず、実用性も高いので、物質を扱うすべての研究者・技術者にも使ってほしい。
制作用データの配布
それぞれの制作用データは、2024年中に小笠原研究室のホームページでダウンロードできるようになる予定です。