2024.01.25.
村上優衣さん(理工学研究科 博士課程前期課程 2年生)が第75回日本生物工学会大会で「学生優秀発表賞」を受賞

村上優衣さん(理工学研究科 博士課程前期課程 2年生 生命科学専攻 藤原伸介研究室)が9月3日(日)から9月5日(火)にかけて、名古屋大学 東山キャンパスで開催された第75回日本生物工学会大会(2023)において、「学生優秀発表賞」を受賞しました。

発表概要は以下の通りです。

【タイトル】
「黄麹菌におけるアルギニン脱炭酸酵素遺伝子1(adc1) のアグマチン合成への関与」
【概要】
アグマチンは神経疾患や記憶・学習障害を緩和することが知られている。醸造に用いられる麹菌Aspergillus oryzae はアグマチンを高生産する。このアグマチンを生産する酵素がアルギニン脱炭酸酵素 (ADC) であるが、ADC 遺伝子オルソログはA. oryzae において未同定である。そこでA.oryzae RIB40 株からADC活性を指標にタンパク質を精製したところ、45kDa の機能分子が得られた。質量分析により、このタンパク質がフォスファチジルセリン脱炭酸酵素(PSD)としてアノテートされている遺伝子によってコードされることが明らかになった。本研究では本酵素の生化学的特性の機能解析や生体内での役割の解明を目的とした。
adc1 遺伝子を挿入した高発現用プラスミドpET28a を使って、大腸菌BL21(DE3)Codon plus-RIL で組換え体として高発現させた。結果、20􁂏では可溶化しピルボイル型の成熟を受け、活性のある機能分子が得られた。黄麹菌内でも同様の成熟を経て機能していると考えられる。活性が確認された画分からタンパク質の精製を行い、複数の塩基性アミノ酸を基質として反応速度論解析を行ったところ、アルギニンに対する活性が最も高かった。同定した遺伝子を黄麹菌におけるADC 遺伝子と考え、adc1 と命名した。次にADC1 の特異的抗 体を取得し、異なるpH 環境で製麹したRIB40 株における発現を検討した。その結果、低pH ストレス依存的なADC1 の発現は認められなかった。また、CRISPR/Cas9 法を用いて麹菌内のadc1 遺伝子のノックアウトを試みた。ヤタラーゼによってプロトプラスト化したRIB40 株を、cas9 遺伝子を有するプラスミドを用いて形質転換した。この株のADC 活性測定を行なったところ、Δadc1株では親株と比べて顕著な活性の減少が確認された。これらの結果から、本酵素が実際にADC 活性を有し、麹菌内でアグマチン合成に関与している事が示された。