2023.12.05.
東京丸の内キャンパス開設15周年記念 「ゴジラ」コラボ企画【第2弾】開催

2024 年に135 周年を迎える関西学院大学と 70 周年を迎える「ゴジラ」とのタッグが実現し、大学祭「新月祭2023」における大学初コラボ企画に続き、11月19日(日)に開設15周年を迎える東京丸の内キャンパスを舞台に第2弾企画を実施しました。 東京丸の内キャンパスは、東京駅に隣接するサピアタワーの10階にあり、同窓・一般社会人対象のセミナーや生涯学習講座の開催、学生の就職活動をはじめ首都圏での活動拠点となっています。また、このサピアタワーは、「ゴジラ」作品の一つである『シン・ゴジラ』にも登場する場所でもあります。
冒頭の挨拶で、柳屋孝安 東京丸の内キャンパス長・副学長は、本学が核兵器の廃絶や原発を含むエネルギー問題にこれまで真摯に取り組んできた点も今回の「ゴジラ」とのコラボ企画につながったと述べました。
今回の第2弾企画は2部構成で、第1部では1954年に公開された「ゴジラ」第1作の上演会を開催しました。

第2部では「ゴジラとは何かー『ゴジラ-1.0』のルーツを探るー」と題し、塚田幸光氏(関西学院大学法学部・言語コミュニケーション文化研究科教授、日本映画学会常任理事)、岸田一晃氏(東宝株式会社 映画企画部企画室・「ゴジラ-1.0」プロデューサー、2013年関西学院大学社会学部卒業)、宮崎豪氏(東宝株式会社ゴジラルーム、2015年関西学院大学経済学部卒業)によるセミナーを開催し、「ゴジラ」第1作と現在公開中の『ゴジラ -1.0』の間に込められた制作秘話が披露されました。
同セミナーは東京丸の内キャンパス会場での約40名に加え、オンラインでも同時配信し約100名の方々が参加・視聴しました。

第2次世界大戦後を舞台にする第1作目よりさらに前の戦後直後にスポットを当てた『ゴジラ -1.0』の制作にあたり、岸田氏は「戦後を現代でとらえた時にどういう物語として展開していくのが良いかといことを、山崎貴監督と一緒に考えながらラストを作っていった」と語りました。その後、塚田氏より「時代設定が似通った2つの作品、最新作は最新技術VFX(Visual Effectsの略。CG技術を使用し実際の映像と組み合わせたもの)を駆使して制作、一方1作目は人の力で作り上げたミニチュアによる特撮のみで撮影されています。プロデューサーの目から見て、相違点、偉大さとはどのようなものなのでしょうか」と投げかけました。これに対し岸田氏は「1作目にはその時代の空気感が詰め込まれています。本多猪四郎監督は、戦地から1946年頃に日本に帰還。その途中、広島で下車し、被爆し焼け野原となった惨状を見ています。さらに1954年3月の第五福竜丸事件を受け、そこから「ゴジラ」制作に進み、同年11月3日に封切りされるという「スピード感」とエキストラを含め戦争経験者で作られる「熱量」は凄まじいです」と答えました。

話題は『「ゴジラ」とは何か』という本題に進みます。ゴジラは時代変遷や社会情勢の中で描かれ方が変わり、1作目以降のある期間にはゴジラが人類を救うヒーロー色が強い時期もありました。ゴジラは“反核兵器・反戦争の象徴”でもあり、戦争が迫っているという“戦争の化身”であるということを初心に戻って描こうとしたのが、今回『ゴジラ-1.0』なのです。岸田氏は「初代作品をリスペクトしながら、現代でさらにその前の戦後直後の姿を描こうとしました。映画制作中に戦争が起こってしまったりする中で、ゴジラというキャラクターが引き寄せてしまうような、時代の写し鏡になっていると感じます。そういう意味で時代は遡っているが、現代的な物語になっており、まさに戦後であった1作品目と、現代の写し鏡となっている『ゴジラ-1.0』は、同じ戦後を描きながらもベクトルが変わりながらテーマ性を内包しているのです」と語りました。塚田氏は「ゴジラが負の要素を引き寄せる写し鏡になっている点は重要な観点です。これまでの30作品は時代の節目で新たなキャラクターが登場したり、ゴジラを通して反米から親米を描いたり、さまざまな解釈がありますが、「ゴジラ」は多義性・多様性を引き受ける存在になっているのです」と考察しました。

続いて話題は1作品目と『ゴジラ-1.0』における「ゴジラ」の怖さの描き方に移ります。 まず、「ゴジラ」の恐ろしさの表現について、宮崎氏は「1作品目はモノクロで暗い場面が多く、「ゴジラ」も夜に登場するなど姿が見えづらいのですが、そこから底知れぬ得体の知れなさ、恐怖心を表現しています。一方、『ゴジラ-1.0』には昼間の街中に登場するシーンがあります。身体の細部に至るまで詳細に描かれていて、見えることが恐ろしさにつながり、人間の近くに現れることで恐怖感を描いています。暗闇に姿を隠さずともゴジラの恐怖が描けるようになった、まさに70年の映像の進歩が出ています」と語りました。
また、2作品で描かれる人間ドラマの違いについて、塚田氏より、1作品目は4人の俳優と顔が見えない群衆で描かれるのに対し、『ゴジラ -1.0』では、さまざまな著名な俳優が顔や表情がはっきり映し出される形で人間ドラマを豊かにしている点に触れました。この違いに関して岸田氏は「『ゴジラ-1.0』では、戦後どのように人々が生きて、戦争中に何があったのか、ということを俳優に背負わせたかったのです。そのため、顔が見える俳優の設定として、多くは語らないが発せられる言葉で、その人物たちから“戦争とはどのようなものだったのか”を多角的に描きたかったのでこのような人物配置にしました」と語りました。

最後は「ゴジラ」の大きさの話題で盛り上がりました。ゴジラは時代ごとのビル高層化に合わせて巨大化し、50mから80mになり、『シン・ゴジラ』では118.5mになっています。『ゴジラ-1.0』では戦後で高いビルがない中であまりに大きい「ゴジラ」は町との対比でアンバランスになるため、原点回帰をするとともに近くて怖い「ゴジラ」、陸上で体感する映画を目指し50.1mに設定されたという誕生秘話が披露されました。さらに、岸田氏は「今回の「ゴジラ」は、ちょうど東京丸の内キャンパスがあるサピアタワー10階の窓の外ぐらいにちょうど眼が目の前に来る大きさ。だから怖さを感じるのです。そしてその怖さを表現するため、倒れていくビルの中や「ゴジラ」の足元に置いて見上げる位置にカメラを配置することでこれまでにない映像を撮りました」と語りました。

「ゴジラ」への思いや今回の『ゴジラ-1.0』の制作秘話など、3名が熱く語り合う1時間のセミナーは大盛況のうちに終わりを迎え、会場からは大きな拍手が湧きました。
終わった後も、参加者が次々と岸田氏・宮崎氏のもとを訪れ、「ゴジラ」に関する質問が投げかけられました。4歳の時に『シン・ゴジラ』を見て以来「ゴジラ」のファンとなった小学2年生の最年少参加者から、「「ゴジラ」が大好きなので、将来、東宝で働きたい」という思いを受けとめた両氏は、「とにかくたくさんの映画に触れてほしい」というアドバイスとエールを送りました。
第1弾、第2弾として展開してきた関西学院大学とゴジラとのコラボ企画。これからも日本から世界に挑み、新しい歴史を刻んでいく幕開けとなりました。