2022.10.27.
橋本秀樹・生命環境学部教授が天然の光捕集効率を超える人工光合成アンテナ色素タンパク質複合体の創成に成功

関西学院大学・熊本大学・チェコ科学アカデミー・グラスゴー大学(英国)の共同研究グループ

生命環境学部の浦上千藍紗・専任講師と橋本秀樹・教授の研究グループは、熊本大学、チェコ科学アカデミー、グラスゴー大学(英国)の研究グループと共同で、カロテノイド色素を生合成しない紅色光合成細菌のアンテナタンパク質複合体に、高等植物由来のカロテノイド色素を再構成し、人工光合成アンテナタンパク質の作成に成功し、エネルギー移動効率を調査しました。
太陽光エネルギーを効率よく利用している天然の光合成系は、クリーンエネルギーの利用という点で近年非常に注目されています。紅色光合成細菌の光合成系では、光合成膜にあるアンテナタンパク質複合体中のカロテノイドが太陽光エネルギーを捕集し、その後、別の光合成色素である、バクテリオクロロフィルに捕集したエネルギーを伝達します。バクテリオクロロフィルはそのエネルギーを反応中心に伝達し、反応中心では伝達されたエネルギーを利用して電荷分離を起こし、その際生じる高エネルギー電子を用いてATP(生体エネルギー)の合成が行われます。この過程の中で、カロテノイドからバクテリオクロロフィルへのエネルギー伝達は30 〜 90%という効率で行われており、この機構を人工的に作成・利用しようと、様々な研究・開発が行われております。
本研究では、分子内電荷移動(ICT)状態という励起状態をもつカロテノイド色素を再構成することにより人工光合成アンテナタンパク質複合体を創成しました。エネルギー伝達機構を時間分解分光測定により調査した結果、創成したアンテナタンパク質複合体は、分子内電荷移動状態を介することによって天然を超えるエネルギー移動効率を実現していることを発見しました。
本研究成果は、Nature Publishing Group が出版する国際学術誌『Communications Chemistry』に2022年10月26日付けでオンライン掲載されました。
 

(報道発表)カロテノイド色素を生合成しない紅色光合成細菌に ICT励起状態をもつカロテノイド色素を再構成することによって 天然を超えるエネルギー移動効率を実現関連ページへのリンク