2022.09.01.
田中大輔・理学部教授ら研究グループが可視光を駆動力とした高選択的かつ高効率な二酸化炭素変換を実現
田中大輔・理学部教授、東京工業大学理学院化学系の鎌倉吉伸・特任助教と前田和彦・教授らの研究グループは、鉛-硫黄結合を有する配位高分子からなる可視光応答型の固体光触媒を開発し、貴金属や希少金属を用いない触媒として、従来にない高効率でCO₂からギ酸への変換を行うことに成功しました。
光エネルギーを利用してCO₂を有用な化学物質に変換する「人工光合成」の実施に向け、これまでさまざまな固体や分子を用いた光触媒の研究が盛んに行われてきました。しかしその大半は、貴金属や希少金属を用いたもので、資源制約やコストの観点から、普遍元素からなる固体光触媒の開発が求められていました。
田中教授らの研究グループでは、普遍元素である鉛を中心金属とし、硫黄と鉛の無限結合を有する配位高分子に注目し、CO₂変換の固体光触媒として応用。その結果、可視光を照射することにより、99%以上の高い選択率でCO₂を水素の貯蔵に有用なギ酸へと変換することに成功しました。さらに同触媒は、みかけの量子収率についても、CO₂をギ酸へと変換する単一成分の固体光触媒のうち、貴金属・希少金属を使わないもので最も高い値を示しました。
本研究で得られた結果は、貴金属・希少金属を用いないCO₂変換の固体光触媒の新たな材料設計の指針を示し、脱炭素社会の実現に道を開くものと期待されます。
研究成果は8月5日、米国化学会の国際雑誌「ACS Catalysis」にオンライン掲載されました。