2022.03.28.
テント内で作業すると創造力が高まる可能性を示唆~Camping Campusの教育効果を初めて実証~
長田典子・工学部教授らによる研究グループ
日本感性工学会春季大会で成果を発表
働き方の多様化を背景として、オフィスやコワーキングスペースなどの室内にキャンプ体験を取り入れる取り組みが活発になっています。キャンプ体験には、リラックスした雰囲気を作る、対人関係を円滑にする、発想を豊かにするなど、生産性や創造性を向上させる効果があることが経験的に知られていましたが、こうした非日常空間の効果は科学的に確認されたものではありませんでした。
関西学院大学の長田典子教授の研究グループは、関西学院大学と株式会社スノーピークの包括連携協定のもと展開するCamping Campusの効果を数値として測定する第一歩として実証実験を行い、テント空間が個人の創造性を高める可能性があることを発見し、2022年3月25日、「第17回日本感性工学会春季大会」で発表しました。
「キャンパス内のテント空間が創造性に及ぼす影響」(大塚栄輔、破田野智己、張帆、杉本匡史、山﨑陽一、長田典子)
関西学院大学と株式会社スノーピーク(代表取締役社長:山井梨沙、本社:新潟県三条市)は2020年から包括連携協定を締結し、大学内構内の共有スペースにテントを設置しキャンプ体験を採り入れる、Camping Campusという取り組みを行っています。この取り組みは、学生にリラックスできる空間を提供するとともに、主体的な学びやフラットなコミュニケーションを促進することを目的としたものです。テント利用者や、Camping Campusの活動に参加した学生からは、キャンプ体験が学びやコミュニケーションを促進するとの感想が得られましたが、効果が科学的に確認されたものではありませんでした。
研究グループは、関西学院大学の構内にある芝生広場と小教室内にテントを設置し、その中、あるいは外で創造性課題を行うことで、テントというキャンプに特有の空間が創造性を高めるかを検証しました。その結果、テント内で行った課題の成績は、テント外で行った場合よりも高くなることがわかりました。また、課題を行う空間の印象と課題の成績の関係をもとに分析したところ、参加者はアウトドア群、インドア群、平常群の3タイプに分類できることがわかりました。このうちアウトドア群は、課題を行う場所が開放的・健康的・陽気と感じたとき成績が高い傾向があり、実際に室内よりも屋外で課題を行った場合に成績が高くなりました。またアウトドア群とは反対に、インドア群は閉鎖的・人工的な・重いと感じた場所での成績が高い傾向があり、屋外より室内で成績が高くなりました。
今回の実験結果は、Camping Campusの効果の一端を実証したものといえます。こうした研究の積み重ねは、これまで経験的に知られてきたテント空間の効果に科学的な裏付けを提供するとともに、利用者に寄り添った空間の提供に寄与することが期待されます。