2022.03.15.
凍ったり融けたりする発光スイッチ材料を開発 ~引っかき刺激を発光で「見える化」する~

加藤昌子・生命環境学部教授と北海道大学などの研究グループ

 生命環境学部の加藤昌子教授(兼任:北海道大学大学院理学研究院 名誉教授・客員教授)と、北海道大学大学院理学研究院の吉田将己助教、小林厚志准教授、タルトゥ大学工学研究所のベルネル・サースク氏らの研究グループは、北海道大学大学院情報科学研究院の村山明宏教授らと共同で、加熱すると簡単に融けて膜になり、自由に発光をON/OFFできる新たな白金錯体*1材料を開発しました。

 光る金属錯体は、省エネルギー型ディスプレイの鍵になる有機ELや,発光で酸素濃度や外部刺激を検出するセンサーなど、次世代の光技術を支えるとても重要な分子材料です。しかし、このような光る金属錯体を膜化して大面積ディスプレイやパネルを作成しようとすると、多くの場合、高温や高真空、または多量の有機溶媒を必要とするなどの問題がありました。

 そこで研究グループは、明るく光ることで知られている白金錯体の融点を下げることで、この問題の解決に取り組みました。実際に、今回研究グループが開発した光る白金錯体は53℃という低い温度で融けるため、家庭用ドライヤーの熱でも融けて簡単に薄い膜になります。さらに、この錯体は融けたり凍ったりすることで、発光が消えたり復活したりすることもわかりました。これを活用することで、引っかいた部分が凍結して光るという、力学刺激を「見える化」する膜を作ることに成功しました。この成果はディスプレイの簡単な作成に繋がるのみならず、周りの環境や刺激を「見える化」する光学センサーなど様々な材料への応用展開が期待できます。

 なお、本研究成果は、2022年2月12日(土)公開のAdvanced Optical Materials誌に掲載されました。