2022.03.10.
就活中に差別・偏見感じたのは4割~研究報告「在日外国人学生の就職等における人権保障と大学の課題」

「在日」の大学院生や就活経験者も参加し、公開研究会を開催

 人権教育研究室は2月26日、「大学における在日外国人学生の就職等における人権保障と大学の課題についての研究」について報告する公開研究会をオンラインで開催しました。約70人が参加し、就活中の学生の3分の2が何らかの不安を感じ、卒業生の4割が就活中に何らかの差別・偏見を感じていたという調査結果が報告されました。聞き取り調査に協力した大学院生らも参加し、就活中に実際に受けた偏見などについて語りかけました。

 人権教育研究室2021年度公募研究「大学における在日外国人学生の就職等における人権保障と大学の課題についての研究」として取り組んだ研究の一環。2011年から3年間で実施した在日外国人の就職活動に関する調査をした際、面接で不愉快な思いをした学生が多く存在し、本名を用いる在日コリアンの採用が見送られた学生がいたことなどがわかり、その後7~8年経過したなかで、現状・実態がどうなっているかを改めて調査したものです。

 調査は、2021年6~9月、本学および他大学の在日コリアン、外国籍(留学生を含む)、難民など外国にルーツのある在学生の就活に対する不安の実態と、卒業生たちの就職活動の実態を明らかにしようと、WEBアンケートと聞き取りによって実施しました。

 その結果、「これから就活をする学生の不安の実態」調査(有効回答数 52)では、3分の2(66.7%)の学生が就活に対して何らかの不安を感じている▽不安を感じている割合は「外国の高校出身>日本の外国人学校出身>日本の高校出身」▽不安を感じるのは75.8%が国籍で、ルーツ(42.2%)、名前(27.3%)、出身高校(21.2%)の順▽不安の解消としての対策は「在日外国人系企業を対象に就活」(32.3%)、「日本名を使う」(12.9%)で、「国籍を変える」(12.9%)という選択肢を考える学生も存在した▽不安を相談できると回答したのは半数のみ――という結果になりました。

 また、「就活経験者の就活体験の実態」 (有効回答数105)では、4割が就活の中で何らかの差別・偏見を感じた▽差別・偏見を感じた割合は現役生と同じく、「外国の高校出身>日本の外国人学校出身>日本の高校出身」▽差別・偏見を感じたのは「国籍」(70.7%)、次いで「名前」(34.1%)、「外国人採用枠のある企業を対象に就活」(33.3%)、「在日外国人系企業を対象に就活」(14.3%)、「その他(就職先の変更)」(4.8%)と続き 、「日本名を使う」(4.8%)も一定数存在した▽差別・偏見を体験した人のうち相談できたのは日本の高校/外国の高校出身者は2割程度、外国人学校出身者なし――という結果でした。

 公開研究会には、聞き取り調査に協力した国立大学の大学院で学ぶ大学院生と、高校時代に本名(民族名)に変えた保険会社に勤める男性が、差別や偏見を感じた状況を話しました。大学院生は朝鮮大学校を卒業して大学院に進んで研究をしていますが、土曜や日曜に実験をしていた際、教授から「なに、勝手に実験しているんだ。外国籍だし、気をつけてくれないと困る」と注意されたと言い、北朝鮮に技術供与してはいけないという書類を見せられたこともあると話しました。研究職を志望した就活では、最初は好感触だった大手の会社から後日、「朝鮮籍では研究職に採用できない」と伝えられたことを報告しました。関西学院大学とは別の私立大学を卒業して保険会社に勤める男性は、就活の際、「ナニ人ですか」と聞かれたり、別の会社の2~3次面接では「韓国の人は日本嫌いな人多いよね」と尋ねられたりしたことを紹介。また、キャリセンターで面接した際に「採用がないのは、日本人だったらこうはならなかったかも。国籍が関係しているのかもね」と言われ、「かなり傷ついた」と話しました。

 研究報告では、「留学生や在日コリアンの学生たちは、自分たちの不安を大学の教職員が理解してくれるとは思っていない」「大学の教職員がこうした状況をしっかりと理解するとともに、普段から相談しやすい態度や環境をつくることが重要」「留学生や在日コリアンの学生に対応したプログラム提供が重要」などとまとめています。

※人権教育研究室ホームページ
https://www.kwansei.ac.jp/r_human