2021.10.26.
「Only Oneになるチャレンジを」「アフリカでは時間の概念が別世界」…国際ボランティア経験者らが現場を語る
公開フォーラム「世界市民への挑戦~国際ボランティアプログラム~」をオンラインで開催
「国連ユースボランティア」など特徴ある数多くの「国際ボランティア」として、学生を開発途上国に派遣してきた関西学院大学は10月23日、公開フォーラム「世界市民への挑戦~国際ボランティアプログラム~」をオンラインで開催しました。国連ユースボランティアを経験した卒業生や、開発途上国で活動中の学生らが、具体的な業務内容や事前の心構えとともに、卒業後どのように学びを活かしているのかなどについて語り合いました。一般の方も含め約70名が聴き入りました。
これまで、300名超の学生を開発途上国に派遣してきた「国際ボランティア」は昨年来、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、中止してきました。しかし、今秋より現地の状況に応じて再開し、まず国連ユースボランティアとして、キルギス、ナミビア、ザンビアへ学生3名を派遣。東ティモールへ向けても1名の学生が派遣準備中です。このフォーラムは、今後、「国際ボランティア」を順次再開することを見据えて企画したもので、本学フェローで現役の総合診療医として、また発展途上国への医療支援活動を展開するNPO法人「あおぞら」の理事長として活躍されている葉田甲太さんがファシリテーターを務めました。
国連ユースボランティア参加中の現役大学生からビデオレター
国連ユースボランティアとして、9月下旬に出発したのは、キルギスの国連食糧農業機関(FAO)に派遣された吉田優美華さん(総合政策学部3年)、ナミビアの国連開発計画(UNDP)に派遣された山田えみりさん(総合政策学部4年)、ザンビアの国連開発計画(UNDP)に派遣された吉田圭佑さん(総合政策学部4年)の3名。すでに現役国連職員とともに、SNSを用いた広報活動や現地調査への動向など、与えられる様々なミッションに従事しています。フォーラムにあたり、3名は現地での活動の様子をビデオレターで報告。合わせて、国連ユースボランティアを目指す学生に対し、「現役国連職員の活動を間近で見て学ぶ貴重な経験ができる」「常に英語を用い、業務をプロフェッショナルに遂行することの大変さなどはあるが、大変だからこそ必ず成長できるし後悔しないから、ぜひ参加して欲しい」といったメッセージを寄せました。
パネリストは芦田明美さん(総合政策学部2010年卒)、花田樹さん(総合政策学部2017年卒)、桑原志帆さん(国際学部2020年卒)の3名。芦田さんは在学中、国連学生ボランティアとしてキルギスに派遣され、神戸大学大学院で博士号を取得後、タイのUNESCOで勤務、現在は早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で講師を務めています。花田さんは国際社会貢献活動プログラムでマレーシアのNGOで5カ月間ボランティアをし、国連ユースボランティアとしてエチオピアに派遣され、現在はGoogle Japanで勤務。桑原さんは国連ユースボランティアとしてザンビアに派遣され、卒業後はイギリス・サセックス大学大学院でMedia and Journalismを専攻しました。
葉田さんのファシリテートのもと、事前に寄せられた多くの質問に加え、視聴者の方からいただいた質問に答える形でセッションを行いました。主な質問とパネリストからの発言は次のような内容でした。
Q1. プログラム参加前の事前準備として必要なことは?
・高度なAdobeなどのソフトウェアの使い方を渡航前にマスターしたものの、実際に自分が派遣されたのは国連の広報局だったが使用できたソフトはPowerPointだった。たくさん準備をしたことで完璧と思うのではなく、実際に現地で直面する問題に対して臨機応変に対応する柔軟性が重要だと思う。
・現地ではふだん教材で聞くアメリカやイギリスの英語ではなく、国によって様々なアクセントや特有の表現などを聞くことが多い。できるだけいろいろな人たちが話す英語に触れておくと良いと思う。
・「国連ユースボランティア」では、現地で国連職員の様々な会議に参加することになり、会議の議事録や報告書を作成する機会が多くなる。英語のライティングスキルを鍛えておくと良いと思う。
Q2. 現地で苦労したこととそれをどのようにして乗り越えたのか?
・アフリカでは時間の概念が別世界で、「10分遅れる」という連絡が2時間遅れたりするので、日本の感覚でスケジュールを作れない。一緒に各国に派遣された仲間と電話でお互いの苦労を共有し共感しながら、互いに鼓舞して支え合いながら乗り切った。
・渡航前は英語だけできれば大丈夫だと思っていたが、実際に現地に行ってみると全く通じず苦労した。英語以外の言語から見聞きする世界の重要性に気づくことができた。英語に加えて、もう一つ言語ができることで世界が広がることを体験できた。
現役学生へのメッセージとして、芦田さんは「現在のコロナの状況においてはどうしても縮こまってしまいがちだと思うが、そういう状況だからこそ、ぜひOnly Oneになるためにチャレンジして欲しい。みんなと同じことをしているだけではOne of Themになってしまう」と激励。花田さんは「自分のことは才能があるものだと過大評価しながら生きていく考え方の方が大きく成長することができる。もし才能がなかったらそれはそれでいいじゃないかというぐらいの姿勢が大事」と語りかけました。
最後に全体総括として、「国際ボランティア」代表教員である關谷武司・国際学部教授が「国際ボランティアは経験豊富な教員と多くの職員が万全の体制で運営している。多くの学生がコロナ禍において縮こまってしまっているが、ぜひ勇気をもって一歩踏み出して欲しい」と締めくくりました。
関西学院大学はこれからも、他者と対話し共感する能力を身に付け、よりよい世界の創造に向けて責任を担う“Mastery for Service”を体現する世界市民の育成に取り組んでいきます。