2021.10.13.
被災地に寄り添った4年間~熊本地震現地ボランティアを振り返る災害支援フォーラムを開催

「継続的な活動が生み出した学生と被災者の新たな支援の形」

 学生の自発的な声を受けて2016年の発生直後から4年間にわたって取り組んだ熊本地震現地ボランティア活動を振り返る災害支援フォーラム「継続的な活動が生み出した学生と被災者の新たな支援の形」が10月9日、オンラインで開催されました。活動に取り組んだ学生や卒業生、ボランティアを受け入れた熊本の関係者ら約80人が参加し、活動の継続と経験を今後に生かすことの重要性などについて話し合いました。

 本学では2016年4月の熊本地震の発生直後、学生たちの声を受けて、ボランティア活動支援センター「ヒューマン・サービス支援室」が中心になって、被災地での支援活動を模索。2016年7月から学生を現地に送り込む形で活動を始めました。2019年11月までに計15回(2020年2月は新型コロナの影響で中止)にわたって、延べ302人の学生が被害の大きかった益城町を中心に訪問し、避難所や仮設住宅での復興支援活動に取り組みました。

信頼と共感… 活動が「人生を変えるきっかけ」にも

仮設住宅での活動。くまモンも訪れ、子どもたちと交流しました(2017年9月)

仮設住宅での活動。くまモンも訪れ、子どもたちと交流しました(2017年9月)

 第1部では「私たちと益城町の4年間」をテーマに、学生たちが事前の準備、現地での活動について具体的に説明。最初の活動に参加した卒業生は、避難所の周辺で十分に遊ぶことができなかった子どもたちと水遊びをしたことや住民に足湯を提供したことを紹介。「遊ぶ場を提供するというより、一緒に楽しんだという感じ。足湯では心も緩むのか、住民の方も話す内容が変わり、雑談ができた」と振り返りました。

 第2部は、現地で学生の活動を支えた熊本YMCAの佐藤忍さん、学生を迎え入れた益城町の住民で仮設集会所の館長だった宮崎律子さんも参加したパネルディスカッション。学生が来てくれる意味合いについて、佐藤さんは「ふだんは呼びかけても出てこない人が、学生が来ると出てきた。人が集まった」と言い、宮崎さんは「若い子と接することで元気をもらった。夏休みなのに、益城町に来てくれる、その気持ちがうれしかった」「この活動が人生を変えるきっかけになってくれればうれしい」と話しました。さらに、佐藤さんは被災者が避難所、仮設住宅、復興住宅と転々とするなかで被災者に「孤立」という問題が繰り返し起こる点をふまえ、「学生の皆さんが現場でのコミュニティ支援を継続してくれたことで、孤立を防ぐことにもつながり、非常に助かった」と感謝しました。

 学生の要望を聞きながら、活動をリードしたヒューマン・サービス支援室の元ボランティアコーディネーター堀之内有希さんは「継続することで、現地の人との信頼関係が積み重なり、初めての参加者も安心して活動に取り組めた。学内では学生が活動を口コミで広げ、参加者が増えていった」。また、福祉関係で働いているという卒業生は「最初は支援するぞという気持ちで行ったが、2回目には私たちの方が元気をもらって帰っていることに気づいた。支援する、されるという関係性を超えた何かがあると感じ、人と向き合う大切さに気づかされた」と振り返りました。

 ヒューマン・サービス支援室長の関嘉寛・社会学部教授は「若い学生が元気を届けるというだけでなく、学生にとっては人とのかかわりを考え直す機会になった。最初は学生・ボランティアと被災者という役割同士の関係が、継続することで関学生と○○さんという固有名詞の関係に変わっていった。大学としても、最初は個人の活動をサポートするということから始まったが、継続することで活動が大学の資産・財産となり、組織として意味のある活動と考えられるようになった」と指摘。堀之内さんは「何かしたいけど、一歩踏み出すことが難しい学生がいるなか、このプログラムは学生がそうした一歩を踏み出すきっかけの一つになっている。大学のこうしたプログラムが学生の人生を変えていくことにもつながると感じた」と話しました。こうした議論を受けて、第3部では参加者同士がグループに分かれて意見を交換しました。

 第4部では、モデレーターを務めた室崎益輝・兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長が議論をまとめました。「一番重要なのは共感と信頼。被災者の思いに寄り添い、一緒に困難、課題を解決していくことを大切にしたい」とし、「現場で学んだことを大学や社会で生かす。行って終わりではない」「現地の課題を調べる下ごしらえと振り返り、準備と検証、活動の前後が大切」「支援には、多様性、自発性が大事。被災者の思いを聞き出し、ニーズにこたえていくことが必要だ」などと語りかけました。

 フォーラムの模様は、You Tubeでも見ることができます(2022年3月まで)。
  https://youtu.be/m3u95SvzxKI