2021.06.22.
代替ではなく、メリットや教育効果もたらす新たな国際教育の形に~体験した学生によるシンポジウム「オンライン国際教育の可能性」を開催
関西学院大学は6月20日、教育連携協定を締結している上智大学と合同で公開シンポジウム「オンライン留学を語ろう!~学生とともに考える、オンライン国際教育の可能性~」をオンラインで開催し、一般の方も含め約380名が聴き入りました。
コロナ禍によって海外渡航が難しく、「従来型の留学」の見通しが立たないなかで、「オンライン留学」の充実化が進んでいます。しかしながら、オンライン留学で学べることや魅力が十分に伝わっているとはいえず、また海外渡航にこだわるあまり、参加をためらう学生も少なくありません。そこで、オンライン留学を昨年から積極的に展開する両大学で、実際に体験した学生各2人がパネリストとなり、オンライン留学でもできたこと、オンライン留学だからできたこと、オンライン留学ではできなかったことを語り、そうした生の声をもとに、「今できること」の一つであるオンライン留学の促進を図りつつ、ポストコロナを見据えた国際教育のあり方を学生目線で検討することを目的に企画されました。
「新たな視点を学べた」「視野が広がった」
両大学の学生はまずそれぞれの留学体験を紹介。関西学院大学からは、総合政策学部3年生の纐纈(こうけつ)響七さんと、経済学部4年生の佐藤美乃里さんが発表しました。
纐纈さんは、海外異文化体験セミナー(ベトナム)とチェンマイ大学(タイ)による外国語研修(英語)に参加した経験を発表。これまで経済やマーケティングにはあまり関心を持っていなかった纐纈さん。異文化体験セミナーでは「べトナム市場にサンカットスプレーを拡販せよ!」というミッションが企業から与えられ、ベトナムの学生とチームで課題に取り組みました。「現地の経済や市場などに興味が拡がり、ビジネスの基本を知ることで将来にも役立つ経験ができた」「オンライン留学だからこそ、今まで興味がなかった分野のプログラムに気軽に参加することができ、視野が広がった」「専門の違う学生たちと国を越えてグル―プワークに取り組むことで、新たな視点を学ぶことができた」などと振り返りました。
佐藤さんは、これまで海外渡航によるプログラムを体験しており、この春が留学としては3回目。関西学院大学とカナダの4大学が提供するCross-Cultural College(CCC)「Global Career Seminar in Canada」に参加しました。積極的に発言し意見を表明するカナダ側学生と、英語での発言に遠慮がちな日本側学生の間で壁ができ、チームビルディング(仲間づくり)に苦労したといい、「オンラインだからこそ積極的なコミュニケーションをとる必要性を感じた」と説明。「日本側の学生だけでなぜ発言に遠慮してしまうのかを話し合い、カナダ側の学生に状況を伝えるなど、互いの溝を埋めるための工夫をし、一歩踏み込んだコミュニケーションに挑戦しました。ジェスチャーや場の雰囲気で語学力をカバーできる渡航型の留学では得られなかった経験でした」と話しました。今回は6日間集中のプログラムだったため、期間中は留学に集中し、英語でのインテンシブな学びの経験ともなりました。
意識して質問、積極的なコミュニケーションで相互理解~パネルディスカッション
学生4人に加え、上智大学グローバル教育センター長を務める出口真紀子教授のファシリテートのもと、ゲストに国際教育研究の第一人者である太田浩・一橋大学教授を迎えたパネルディスカッションには、視聴者から30を超える質問が寄せられました。学生からの主な発言は以下の通りでした。
Q.参加前後でのオンライン留学へのイメージの変化は?
・「オンライン留学」という初めての挑戦に、「実際の留学と比べてどこまでのことができるのか」「交流ができるのか」「英語が通じるか」等の不安が当初あったが、実際参加してみると、オンラインだからこそ気軽に参加ができ、視野を広げることができた
・現地に行かないと地域の特性や文化は学べないと思っていたが、その意識があったからこそ積極的に現地の人に質問するなど意識してかかわりを持つように努めたため、かえって深く学ぶことができた
Q.オンラインだからこそ学べたことは?
・オンライン留学は気軽に参加できるところが利点で、専門外の学びにもチャレンジできた
・海外渡航を伴う留学ではいろいろなイベントもあり、学びを振り返る時間を確保することが難しい場合もあるが、オンラインだからこそ自宅にいるメリットで、その日の学びを反芻することができ、より深く学ぶことができた。
・オンラインでチームビルディングを構築する難しさなど、オンラインならではの課題に直面したことでそれを乗り越えるための力がついた。
・特にオンラインでは、相互理解を深めるためには積極的にコミュニケーションをとることが大切であると学んだ
Q. 苦労したこととその乗り越え方
・2時間程度の時差でも、お互いの時間を合わせるのに工夫が必要だった。
・大きな時差があり、授業時間しか議論ができなかった。その分濃密な議論をしようと意識することができた。
・チームビルディングに苦労した。一体感が生まれない原因は何か日本人学生だけで話し合い、相手先大学の学生に伝えるなどして工夫をした。一方、チームによっては、アイスブレーキングを事前に行ってスムーズな議論を実現していたので、交流の工夫が必要であった。
そのほか、オンライン留学であっても、SNSを交換する等して留学終了後も連絡を取り合える仲間ができた、というような声も聞かれました。
最後に、太田教授から「海外渡航型留学の代替としてではなく、多くのメリットや教育効果をもたらす新たな国際教育の形としてオンライン留学をとらえるべきだということが、学生たちの声から明らかになった」との総括をいただきました。
また、閉会の挨拶で、本学の丸楠恭一副学長(国際連携担当)は「『境界を越える』ことが現代の学びの要となること、ICTがそれをより進化させ、オンライン留学という新しい学びの形が全ての学生に国際教育へのアクセスを可能とした一方で、オンラインだからこそ人と人の人間的なコミュニケーションンの重要性がますます高まっていることがよくわかった」などと締めくくりました。
関西学院大学では、このシンポジウムの成果を踏まえ、オンライン留学について、今後も単なる留学の代替としてではなく、学生たちの新たな可能性を拡げるツールとして開発・提供に取り組んでいきます。