2021.05.06.
法学部の学生が高等部生とキャンパス内の戦跡を巡る~高等部の生徒たちが制作した「KG PEACE MAP」を手に探訪

時計台前に集合した学生(右)と高等部生(左)たち

時計台前に集合した学生(右)と高等部生(左)たち

 関西学院高等部の生徒が、高等部や大学がある関西学院西宮上ケ原キャンパスと周辺に残る戦時中の暗い過去を持つ「戦跡」13か所などを記した「KG PEACE MAP」を制作し、4月、法学部の学生たちと一緒にキャンパス内を巡りました。学生たちは、ふだん何気なく見ている場所や馴染みの場所が戦争とも深くかかわっていたことを知り、驚いた様子でした。

 「KG PEACE MAP」を作ったのは、高等部2年生の必修選択科目「ハンズオンラーニング」を学んだ11人(現、3年生)。授業で「平和」について考える中で、西宮市や関西学院の身近な場所の多くが戦争に巻き込まれ、かかわっていたことを知り、日本一美しいと言われる関西学院のキャンパスを楽しく巡りながら「平和」について考えてもらおうとウォーキングマップを企画。散策できるコースを作るとともに、AR(拡張現実)を使ってスポットにスマホやタブレットを向けると、その場所の説明や写真、動画などを見ることができる工夫もしています。
 

 戦争に関係する「戦跡」として紹介するのは、①ランバス礼拝堂・校歌②奉安庫③時計台④神学部⑤中央芝生⑥エンブレム⑦旌忠碑⑧商学部⑨G号館玄関前⑩中学部⑪高等部チャペル横⑫上ケ原八幡神社⑬高等部グラウンド--の13か所。


 どんなことがあったのか。たとえば、
 ②奉安庫~本部棟の一角にある旧院長室に残る。天皇・皇后両陛下の御真影と教育勅語を保管した場所。御真影や教育勅語は残っていないが、扉は四重になっており、当時をしのばせる。
 ③時計台~関西学院のシンボルだが、現在は白い時計台が1944年には黒く塗られていた。米軍の爆撃の標的にならないためだった。
 ⑤中央芝生~1941年、学生会が解散し、その代わりの報国団の結団式や、運動部から改組した鍛錬部の結成式が行われた。
 ⑨G号館玄関前~海軍予備学生育成のために校舎やグラウンド(G号館南側)を1944年2月から貸与。グラウンドの地下には指令室や秘密文書庫として利用された地下壕があった。
 ⑫上ケ原八幡神社~関西学院の敷地内にあった海軍航空隊神風神社が敗戦後、焼却寸前に地域住民によって、学院西側の上ケ原八幡神社に遷座された。

MAPを見ながら、戦跡の場所を確認する学生と生徒のグループ

MAPを見ながら、戦跡の場所を確認する学生と生徒のグループ

 スポットを巡るお薦めルートとして、約1時間で7か所を回る「お気軽ショートコース」と約1時間40分で回る「キャンパス満喫コース」を設定しています。巡る際にスマホやタブレットを利用して説明の動画や写真が見ることができるようにもしています。これは、アプリ「マチアルキ:自分でつくれるARアプリ」を利用。スマホにアプリをダウンロードし、カメラ機能を使ってスポットにスマホをかざすと、その場所の説明や写真、動画が見ることができます。

 制作した高等部生と一緒にキャンパスを巡ったのは、法学部の高島千代教授(日本政治史)のゼミ生たち。高等部3年の籠谷凪さん、佐藤千晃さん、法学部3年の藤橋宥乃さん、谷端真衣さんの4人は、奉安庫からランバス礼拝堂、神学部、日本庭園を回った。藤橋さん、谷端さんは、奉安庫があることは知らなかったといい、こうした戦争の遺産が残っていることに驚いていました。