2021.01.05.
高性能純青色有機EL素子の開発に成功!~英国科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン版で公開

畠山琢次・理工学部教授と九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターの共同研究

研究で用いた青色発光分子(-DABNA)とスカイブルーTADF分子(HDT-1)の構造と、青色有機EL素子の発光スペクトル

研究で用いた青色発光分子(-DABNA)とスカイブルーTADF分子(HDT-1)の構造と、青色有機EL素子の発光スペクトル

九州大学
関西学院大学

 有機EL素子は薄く軽量な自発光型面発光デバイスであり、各種ディスプレイとして実用化され広く普及しつつあります。しかし、現在までに実用化されている発光分子は、青色有機EL (OLED)素子の発光効率が比較的低いことや、高効率青色素子の耐久性が低いこと、イリジウムなどのレアメタルを含むために材料コストが高いことなどの問題があります。これらの問題を解決する発光分子として、熱活性化遅延蛍光(TADF)分子が2012年に九州大学から世界に先駆けて報告されました。しかし、TADF発光分子の発光スペクトル幅は比較的広いためディスプレイ用途に適さないことや青色有機EL素子の耐久性が未だに低いことなどが課題となっていました。

 そこで九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(安達センター長、中野谷准教授、Chan研究員、田中研究員ら)と関西学院大学(畠山琢次教授)の研究グループは、高効率かつ高速な逆項間交差速度を示す新規TADF分子と発光線幅の狭い純青色発光分子を組合せ、TADF分子のエネルギーを純青色発光分子へと移動させることで、高い発光効率・色純度・素子耐久性を併せ持つ高性能な青色有機EL素子の開発に成功しました。試作した青色有機EL素子は、最大27%の高い外部EL量子効率とともに非常に狭い半値全幅(19 nm)のELスペクトルを示します。さらに、この青色有機EL素子は、初期輝度1,000 cd/m2における輝度劣化時間(5%劣化)が10時間以上と、高効率青色有機EL素子としては飛躍的に高い駆動安定性を示すことを明らかにしました。今後、素子構造の最適化などによるさらなる素子耐久性の向上が期待でき、ディスプレイの超低消費電力化に寄与する青色有機EL素子を実現できると期待されます。

 本研究は文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの支援のもと行われ、本研究成果の内容は、2021年1月4日(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン版で公開されました。

リリース資料は下記をご覧ください。

プレスリリース「高性能純青色有機EL素子の開発に成功!」