―自分に自信は持てなかったけど、家族には自信があった―
　SNSやコンテンツプラットフォーム「note」を通して、中学生の時に突然亡くなった起業家の父のこと、その後、心臓病の後遺症で車いす生活となった母、そしてダウン症の弟という家族のことを中心に、「ハチャメチャに面白いことばかりが起きる」日常を発信しています。「初めての人に話すとわりとギョッとされる家族構成」も、悲壮感など全く感じさせない軽やかで、愛とユーモアあふれる文章でつづるストーリーは多くの人の共感を呼び、話題に。2019年に作家として独立し、今年9月には初めての単行本『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を出版しました。
　作家になるきっかけは、2年前に弟に誘われて出かけた三重旅行。人間関係などで悩み、学生時代から約10年間働いてきた会社を休職していた時でした。「弟はいつもと変わらず、『姉ちゃん休みなん？』みたいな感じで。あと、誘われたと言っても、予算は全部私持ちなんですけどね」と笑いながら当時を振り返ります。当時、Facebookに、旅での弟の様子を「旅行を通して、弟にたくさんのことを教えてもらいました。世間体や思い込みにとらわれず、できることを精一杯やる弟が誇らしくて、誰かに自慢したくなりました」と投稿。見た人からは「すごく面白いから、ちゃんと残した方がいい」といった反応があり、誰もが見ることができる「note」に投稿を始めました。「自分に自信はなかったけど、家族には自信があった。だから大好きな家族をみんなに知ってもらいたかった」と話します。

―数千人とすれ違ってたった一人　「人と会う場」だった関西学院大学―
　いま、学生生活を送った関西学院大学を「人と会う場だった」と振り返ります。1年生の時、授業のゲストスピーカーで、障がい者の価値を最大化できるビジネスに取り組む社会起業家の田辺大（ゆたか）さんの話を聞きました。「父のような経営者になって、母と弟を幸せにしたいという思いは間違ってなかったと思えて嬉しかった」と涙があふれ、質疑応答では他の学生がいる中で涙ながらにお礼を伝えたといいます。「その後から『意識高い系の子』『泣いてた必死なやつ』などと周りからいじられ、ちょっと辛かったです」。田辺さんとは今でも連絡を取り合っており、関係は続いているそうです。
　同級生とも大きな出会いがありました。同じ社会起業学科で学んだ同期で、いまは大阪のホームレス支援NPO「Homedoor」で働く松本浩美さんです。高校の時から社会問題に関心を持って活動をしていた松本さんには、ほかの学生に言えば笑われるような真面目な話や本音を話すことができたそうで、「4年間で何千人とすれ違って、たった一人。本気で私がやりたいことを分かってくれて、応援してくれる人。彼女と出会えたことは大きかった」と話しています。

―予定を立てない方が幸せ　子ども向けの小説執筆に取り組んでいます―
　今後の展望について聞くと、「先のことは分かりません。予定を立てても、それを実行できないことの方が多い。だから予定を立てない方が幸せなんです」と話します。一方で、長期的な取り組みとして、自身のエッセイをもとにした小学生向けの小説の執筆を進めているそうです。自分のエッセイを子どもに読み聞かせる親が多いと知ったのがきっかけでした。「『困っているのに助けてもらえない』とか『人に理解してもらえない』など、障がい者や高齢者、あるいはその家族や子育て世代が困っていることは、大きくは同じだと思います。だから、私が書く話も私だけのことではない。読んだ人が、身の回りの誰かを思い浮かべてくれて、少しでも行動を変えてくれるといいなと思います」と笑顔で話しています。