2019.12.14.
「新しい世界を創る人に」と学生たちに呼びかけ~MIT宮川繁教授による特別講演会開催

宮川繁MIT教授

宮川繁MIT教授

 米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)の宮川繁教授による特別講演会「300万年前のヒトと最新のAI~イノベーションを比較する~」が12月12日、西宮上ケ原キャンパスであり、学生と教職員約200人が聴講しました。 

 言語学が専門でオープン・ラーニング担当副学部長を務める宮川教授は、300万~100万年前に起こった石器等の進化と現代社会で起こっているICTのイノベーションが同じようにMoor’s Law(ムーアの法則)に則った進化過程を経ていることに着目し、いつの時代もイノベーションが加速度的に進んでいくことを指摘。「自然世界はバリエーションを好み、バリエーションがさらなるイノベーションを生む。バリエーションが豊富であることが、新しく面白いものを生む」と説明。自身が言語学をベースとしながら異なる分野にも興味を持って活躍の場を広げたことや、ノーベル賞の研究の多くが当初の専門と異なるものから生まれたことを例に、「たとえ現在の専門と違ったとしても、新しい興味を大事にしてほしい。それが新たなイノベーションに繋がる」と語りかけました。

学生と意見を交換する宮川教授

学生と意見を交換する宮川教授

 学生を交えたパネルディスカッションでは、コミュニケーションの大切さを力説しながら、「現代では2言語を話せるのは当たり前。新しい社会で生き抜くにはトリリンガルが必要」と指摘。フロアから出た「読み書きの能力が退化してきている」との意見に対し、パネリストの学生から「動画やスタンプなどで伝達・知覚する能力は上がっており、コミュニケーション全体としては退化ではなく、変化・進化なのでは」という意見があり、宮川教授も「大変興味深い指摘」と話されました。そのうえで、宮川教授は学生に向け、「人間はイノベーションをせずにはいられない生き物。皆さん自身が新しい世界を創る人になってほしい」と期待を語りました。

 また、別途行われた大学執行部教職員との懇談会では、大学におけるEラーニングの現状と将来像などについて意見を交換。MITは2000年頃、世界に先駆けて授業をインターネットで配信する大規模公開オンライン講座(MOOC)を始めましたが、宮川教授は立ち上げと運用に関わった経験から、様々な偶然が重なってMOOCが生まれたこと、建学の精神に沿った取り組みが大学にとって重要であることを指摘されました。米国のミネルバ大学やジョージア工科大学の取組みを例にしたEラーニングの現状だけでなく、将来の高等教育界がEラーニングを主体として教育を行うとすれば、授業や単位のあり方だけでなく学位記や大学そのものの存在意義が変わること等、幅広い内容で話し合いました。