社会学研究科

 

 

渡壁 晃さん

PROFILE

渡壁 晃

社会学研究科 博士課程後期課程
関西学院大学 社会学研究科 博士課程前期課程修了
研究領域:歴史社会学、計量社会学、戦争社会学、記憶の社会学

なぜ関西学院大学 社会学研究科に進学されましたか?

私は、高校生の時から大学院への進学を希望していました。当時私は、学部生として過ごす4年間は社会学を勉強しつつも、さまざまな経験・学習をして幅広い教養を身につけ、その後大学院前期課程の2年間で専門的な勉強をして、社会に出たいと考えていたからです。社会学を学びたいと思ったきっかけは、中学3年生のときの担任の先生との出会いにあります。私は、関西の中高一貫校に通っていたのですが、中学3年生のときの担任の先生が社会学を専攻し、博士課程を修了した方で、その先生の話を聞き、社会学という学問に漠然とした興味を持ちました。高校2年生の時には選択授業でその先生のメディアに関する授業を取ったことで、大学(と大学院)では社会学を学ぼうという意思が固まりました。

「2年間専門的な勉強をして社会に出たい」というキャリアプランを持っていたにもかかわらず、なぜ後期課程に進学したのかというと、「もう少し研究をやってみたい」と思ったからです。具体的には、前期課程で学んでみて、自分の思い描いていた高度な専門性は2年で身につくものではないと思ったことと、研究に対する関心が持続していたということがあります。

ここで、社会学の大学院は他にもあるにもかかわらず、なぜ関西学院大学大学院社会学研究科を選んだかということをお話しします。決定的だったのは、学部時代の指導教員の先生から「手厚い指導体制がある」と聞いたからです。関西学院大学大学院社会学研究科は大学院生1人あたりの教員数が多いそうです。研究仲間の話を聞くと、大学院の指導スタイルはさまざまなようですが、私の性格にはきめ細かく手厚く指導していただける方が合っていると思ったので、関西学院大学大学院社会学研究科に進学することにしました。


 

どういった研究に取り組まれているか教えてください。

原爆が投下された広島と長崎における平和意識の変容をテーマに博士論文の作成に取り組んでいます。このテーマに取り組むきっかけは2つありました。1つは、大学3年生のときに「平和学特別演習『ヒロシマ』」という授業を履修したことです。原爆忌前後に広島に滞在し、平和式典に参列したり、講義を受けたり、フィールドワークをする授業なのですが、このときに原爆に関する問題に真剣に向き合っている人がいることを知り、原爆を調べれば、戦後日本社会で人びとが大事にしてきた価値のようなものがみえそうだと思ったのです。2つ目の理由は社会学部の「記憶の社会学」という授業に興味を持ったことです。私は、大学生の間に受けた最も興味深かった授業に関連した卒業論文を書きたいと思っていました。このような2つの授業での経験から生まれたのが、原爆の記憶についての卒業論文でした。卒業論文での関心をアップデートしながら今も研究しています。

大学院での研究成果についても少し触れます。広島と長崎の平和式典で市長が発表する平和宣言を計量テキスト分析という手法で分析した論文を日本社会学会の学術誌『社会学評論』72巻2号に発表しました。市長の党派など政治的イデオロギーとは別に平和宣言の内容が戦争に関する問題から核に関する問題へと変化したことを明らかにしました。ほかにも何本か論文を書きましたが、最初に挙げた大きな問題意識のもと研究を積み重ねています。

  

大学院生の生活がどのようなものか教えてください。

私は後期課程の大学院生なので、大学院生活は長いのですが、前半(後期課程1年生くらいまで)と後半(後期課程2年生くらいから)で様子が変わりました。どちらも研究活動をメインにした生活をしていることには変わりはないのですが、大学院生活の前半には指導教員の先生や副指導教員の先生以外のゼミにも積極的に参加し、社会学特殊講義や専門社会調査士科目も履修するなど授業を受けるのにかなりの時間を使っていました。後半になると、学術誌への論文投稿や学会発表の準備、研究会事務局の活動など大学の外での研究活動が増えていきました。また、2022年度からは非常勤講師として授業を担当する機会をいただき、教育者としての活動にも取り組むようになってきています。

現在取り組んでいる博士論文の作成では、その前段階となる学会誌への論文投稿や学会発表といった目標を設定することで、一定期間内に着実に研究を前進させられるよう工夫しています。一番重要だと感じているのは、指導教員や副指導教員といった指導してくださる先生方とのコミュニケーションです。論文を書いたときや学会発表をしたときなどに先生からコメントをいただくことがあります。すぐに理解できるコメントもあるのですが、1年や2年経ってから本当の意味がわかるコメントがあります。このような研究者としての未来を見越していただけるコメントは研究活動を進めるうえでとてもありがたいものです。

関西学院大学 社会学研究科の魅力はなんですか?

一言でいえば、学位論文(修士論文・博士論文)を書くためのサポートが充実していることだと思います。指導教員と副指導教員の2名の先生による指導体制はもちろん、社会学特殊講義や専門社会調査士科目など、関西学院大学大学院社会学研究科には大学院生として社会学を研究するために必要な教育環境がそろっていると思います。また、経済的なサポートが整っていることも魅力です。たとえば、博士学位取得のためのサポートとして、大学院奨励研究員として採用されれば月額25万円の支援が1年間受けられるという制度※があります。この制度については、他大学の研究仲間に話すとあまりの手厚さに驚かれます。教育面、経済面での恵まれたサポートが整っているのが関西学院大学大学院社会学研究科の魅力だと思います。

※2022年度時点の情報です。最新の「奨学金・研究支援制度」については下記ページからご確認いただけます。

修了後の進路について、現在の希望を教えてください。

研究者として大学等の機関に就職することを希望しています。大学入学後に社会学部で授業を受けてみて、それが私にはとても楽しく思えました。そのようなことがあり、「大学で勉強したことを生かせる仕事がしたい」と思っていました。後期課程の大学院生となった今も「大学(院)で勉強したことを生かせる仕事がしたい」という思いは変わっていません。これまで、大学(院)で勉強したことを生かせそうなさまざまな職業に就くことを想像することもありましたが、現時点での最適解は研究者であると思っています。

【研究実績】

「『平和』を表現する方法――広島における原爆関連行事の社会史」『ソシオロジ』67(3) 3-21, 2023年
「広島・長崎平和宣言からみた平和意識の変容」『社会学評論』72(2) 118-134, 2021年