[ 大学院総合案内 ]理工学研究科修了 吉田 聖士さん

プロフィール

吉田聖士さん

2006年 理工学部生命科学科卒業
2008年 理工学研究科生命科学専攻 博士課程前期課程修了

ケンミン食品株式会社 マーケティング部開発課
担当業務:常温商品全般のブランド戦略、商品企画、プロモーション企画など
 

学生時代について

大学院時代の研究テーマと具体的な研究内容について教えてください

「海洋性珪藻におけるCO₂応答遺伝子の探索」というテーマの研究を行いました。具体的には、海に最も多く生息している海洋性珪藻のCO₂応答機構を体系的に理解することを目的に、高CO₂ 環境下と通常環境下での使用されている遺伝子の違いを分析するという方法で、CO₂応答遺伝子の半網羅的な解析を行いました。

大学院時代の研究活動で印象に残っていることを教えてください

私が担当した研究テーマは、それまで先輩方が行ってきた研究の引継ぎではなく、全く新しく立ち上げたテーマであったため、研究の進め方や実験方法などを一から考えて作らなければならず、研究を始めた半年はとても苦労しました。
同級生が順調に実験を進めているかたわら、何度も失敗し、その度に失敗の原因を自分なりに分析して実験を進めるという経験は、これまでの商品開発の仕事でも、今取り組んでいるマーケティングという仕事においても、とても重要となっています。
例えば、当社が行なっている食品の開発における味づくりの評価というのは、数値ではなく人の感覚や食べた人の意見が重要となります。その中で、試作品が美味しくないという評価になった場合、その理由を伺うと、「塩っ辛い」や「味が濃い」、「味が軽い」など人それぞれ様々な表現で評価をされることが多くあります。時には、「塩っからい」と「味が薄い」という一見正反対の表現での評価が出る場合もあります。その際に、直接的に意見を聞くのではなく、その原因が何なのか、そもそも人はどのような味を美味しいと感じるのかと深く考えることにより、仕事を効率よく進めることができるようになりました。

就職活動について

企業への就職を決めた時期などについて教えてください

修士課程1年の夏から企業説明会などに参加し、就職活動を終えたのは年明け頃だったと思います。就職先を決めた理由は、自分のことを最も必要とされていると感じたことと、これまで進めてきた「研究」とそれまで好きで取り組んでいた「料理」の両方を活かせる仕事がしたいと考えたためです。

大学院生として臨む就職活動として意識したことを教えてください

内定をもらえる企業を探すのではなく、自分の人生を費やせる企業を探すということを意識しました。企業を選ぶに当たって、その企業で働いている人がどういう志で働かれているのかということを重要視し、単純にお金を稼ぐためではなく、やりがいや目的をもって働かれている方が多い企業を選ぶようにしていました。
やってみたい業務については、開発など新たなチャレンジができる業務を探し、具体的にどんな仕事をしているのかなど詳しく質問をしていたことを覚えています。

就活と研究活動の両立について教えてください

研究発表の準備が多忙な時期と就職活動の時期が、被ってしまうことがあったように思います。これについては、研究が忙しくなる時期が事前に予測できていたので、できるだけ早め早めに研究を進めるようにしていました。
私の場合、企業の研究に直結する研究分野ではなかったため、研究に関する直接的な技術をアピールするのではなく、その研究過程の考え方や論理的にプロジェクトを進める能力をアピールするようにしていました。

修了後の社会人生活について

大学院で身についた専門性やスキルアップしたことは何ですか?それは社会人になって活かされているますか?

プロジェクトを計画し、論理的に進めていくというスキルは、大学院生活で非常に身に付いたと感じています。目的を決め、それを達成するための方法を考え、実行した後の結果を考察し次に繋げていくという研究のスキームは、社会人においてもそのまま活かせる部分が多く、自分の中でのアドバンテージになったと感じています。
現在のマーケティングという業務においては、自分が担当しているブランドの問題を深く理解し、課題の仮説を立てて、それを解決するためのプロモーションや商品企画を行ない、その結果を分析して、さらに改善するという一連のPDCAを回し続けることが重要となっています。具体的には、現在私が担当している「ケンミン焼ビーフン」のブランディングにおいて、市場拡大という目的に対し、まずブランドの価値を明確にするという戦略を立て、その方法としてユーザーの意見を集め、その結果を分析し、ブランド価値の仮説を立て、それを検証するためにプロモーションを実施するということを行なってきました。その結果、ケンミン焼ビーフンの「野菜を手軽においしく食べられる」という価値を明らかにし、その価値を広めるために、野菜とのコラボレーションによる野菜売り場での露出拡大というプロモーションを実施し、売り上げを伸ばすことができました。
また、研究発表で培った人に説明するプレゼンテーションスキルも、今でも活かせていると感じています。

企業で働いてきた中で、学部卒の同僚と比べて仕事への取り組み方などに違いを感じることはありますか?

学部卒と比べると、論理的に自力で前に進むという部分において違いを感じることはあります。学部での学習は、教授から一方的に教わるということがベースになっているのに対し、大学院では、自力で研究を進めなければならないので、自分で課題を見つけ、対処法を考えて前に進んでいくという論理的思考力と行動力が自然に身についているように思います。

大学院の魅力について

社会人になったからこそ言える大学院の魅力は何ですか?

企業と異なり利益や責任にとらわれることなく時間がたっぷりある学生という立場で、社会人に必要なスキルのベースとなる論理的思考によるプロジェクトの実践、成果のプレゼンテーションという経験を積めることが一番の魅力ではないかなと思います。企業の場合、全てにおいてコストや利益を考える必要があるとともに、教える側も仕事を抱えているため、きちんとベースの部分を教わることができずに、仕事をやりながらなんとなく進んでしまうことが多いように思います。大学院ではその部分を、きちんと時間をかけて丁寧に教わることができると思います。

大学院進学に関心がある大学生へのメッセージ

論理的思考により物事を進めるということは、文系理系関係なく、社会人全員において必要なスキルで、これを学ぶには、研究が最も効果的だと思います。私自身、大学院での2年間の経験が、その後何十年と続く社会人生活において、とても大きなアドバンテージとなっていると感じています。是非、チャレンジしてみてください。