[ 大学院総合案内 ] 社会学研究科 社会学専攻 博士課程後期課程修了
三隅 貴史さん

プロフィール

三隅 貴史さん

2021年 社会学研究科博士学位取得
2022年4月~社会学部社会学科助教(若手研究者スタートアップ制度/特別任用助教)

三隅 貴史先生に、大学院への進学や研究者を志す魅力等について伺いました。

研究内容について教えてください。

 日本のお祭りについて研究しています。お祭りに関する研究は、社会学や人類学、宗教学、そして、私の専門である民俗学などの学術領域で盛んに行われてきました。現代の日本では、人口減少や高齢化などに伴うお祭りへの参加率の低下が生じていて、その結果、多くのお祭りで、地域外参加者、つまり、その地域には居住していない祭礼への参加者の活躍が目立つようになっています。私が博士課程で取り組んだ研究の問いは、地域外参加者がたくさん参加しているお祭りにおいて、地域的共同性、つまり、地域に愛着を持つ人びとの間でのわれわれ意識が成立し得るのかというものです。
 お祭りに参加し、一緒に神輿を担いだり、山車を曳いてみるというフィールドワークを通して、この問いに対して、地域の人たちと地域外参加者との間で軋轢が生じる場面があったとしても、闘争や協調の結果として、地域的共同性が成立し得ると回答しました。博士論文では、日本で最も有名なお祭りの一つである、東京都台東区浅草の三社祭を中心に研究しました。今も引き続き、変化を続けるお祭りのありように注目し、研究を進めています。

研究の面白さや魅力について教えてください。また、研究に興味を持ったきっかけがあれば教えてください。

三隅 貴史さん

  多くの社会現象には、既に膨大な先行研究が存在しています。その先行研究に敬意を表しながら、批判を通して現象に新たな「ものの見方」を提示する。私が示したものの見方も、それ以降の研究者が批判し、新たなものの見方が提示される。これが繰り返されることで、社会現象への理解がよりクリアになっていく。この一連のプロセスに関われることが、研究の魅力です。
研究が面白いと思ったきっかけとして思い当たるのは、関西学院大学図書館主催のJ.C.C. Newton賞への応募です。大学1年生の時に、第12回J.C.C. Newton賞に応募し、 賞をいただきました 。応募に際して、授業でもゼミでもなく、自分の意志で、自ら立てた問いに基づいて研究を行った経験と、それが評価されたことが、研究の面白さに目覚めたきっかけだったように思います。最優秀賞などではなく、審査員特別賞だったのですが(笑) その年度の大学図書館の館報『時計台』には、受賞者の声として、私の文章が掲載されています。そこで私が示した「論文は“人生密着型アトラクション”」だという研究への「ものの見方」は、今でも変わらず私の原点です。
一般社会では、研究と勉強は同じ物だと思われていますが、自ら問いを立てて、その問いに基づいて社会を探検する研究は、勉強とは全く性質が異なるものです。私はいわゆる偏差値エリートではないですが、自分が好きでやっている研究では、絶対に他人に負けたくないという気持ちは強く持っています。研究するために生きているんで。

在学中に日本学術振興会特別研究員(DC1)にも採択されていますが、いつから申請を考えておられたのでしょうか?

 博士課程前期課程1年生の4月には、研究推進社会連携機構主催の日本学術振興会特別研究員の申請説明会(セミナー)に参加しました。私は、博士課程前期課程修了後も研究を続けたいという思いが強かったので、その説明会に参加した時から、特別研究員になれる可能性を少しでも上げられるように行動してきました。なんとか計画通り採択されたことは、とても大きかったです。博士課程前期課程の1年生の時には申請条件等を確認し、何を書くことが要求されているのかを理解するなど、申請に向けた準備を早めに始めることが大切だと思います。
 日本学術振興会特別研究員に採択されると、月毎に研究奨励金が支給されるだけではなく、研究費として科研費を得ることができます。博士課程後期課程の3年間は、入学前には考えてもみなかったようなことが、何かと起こりがちです。大切かつ大変な時期に、金銭的な不安なく研究に集中できるのは、極めて大きなメリットです。一般にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、大学院に進学し、研究者を目指す場合は、積極的にチャレンジすることをお勧めします。

特別研究員採用期間終了後、現在は関西学院大学若手研究者スタートアップ制度を活用し、社会学部の特別任用助教として研究活動の傍ら、授業も担当され、研究者としての歩みを着実に進められています。この制度の感想を教えてください。

 研究者を目指すうえで、様々な選択肢や道のりがありますが、関西学院大学若手研究者スタートアップ制度の条件は、基本的に申し分ないと思います。3年間の任期付きとはいえ、安定した身分と経済的に安定した状態で研究に専念できる今の環境は、とても充実しています。存分な時間を研究に充てることができるのが、何よりの良さです。
 また、授業を担当し、教員としての経験を積むことで、教歴がつくことも大きなポイントです。大学教員の採用に応募する際には、任用歴や教歴が大きな強みになると思います。特別任用助教は研究推進社会連携機構が行っている出版助成制度に申請することもできるので、 博士論文を書籍化 する際に活用しました。これもとても良い制度だと思います。

大学院の受験を考えている方や研究者を目指している方にメッセージをお願いします。

 大学院に進むことの最大のメリットは、とにかく思う存分、研究が続けられることです。研究者への道のりは不確実なため、将来のことや経済的なことを考えると不安になることもあるかもしれません。また、研究を続ける中で、納得がいかないこともあるでしょう。私は博士課程後期課程で、「研究が楽しい」と無邪気に言い続ける私のような人のことが気に食わない人もいることにも気付きましたが、様々な制度やサポート体制のおかげで、不条理を含めて、研究のみに集中できる贅沢な時間を堪能できました。不安もあるでしょうが、研究を続けられること自体が魅力だと考えられる人ならば、何があっても学位取得までやり通すことができると思います。これからも、“人生密着型アトラクション”である研究を継続し、特別任用助教としての経験を生かして、研究者としてステップアップしていきたいです。

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