[ 大学院総合案内 ]人間福祉研究科 峰島里奈さん

プロフィール

人間福祉研究科 博士課程後期課程 人間福祉専攻 2年(取材当時)
峰島 里奈さん(社会学研究科 社会福祉学専攻博士課程前期課程修了)

大学院への進学について

進学しようと思ったきっかけを教えてください。

峰島里奈さん
勤め先のプログラムで子どもたちと一緒に書初めをしました

親との死別体験や阪神淡路大震災を経験したことから、学部時代に今の指導教員のゼミを選びました。親を亡くした子どもや青年のグリーフサポートに関心を持ち、勉強を始めました。先生が担当しておられた死生学の講義を受けたり、文献等を色々と読み進めたりしていくなかで、日本ではまだまだサポートが少ない分野であることが分かり、研究を通してこの分野で何か社会に貢献できないかと思ったのが、前期課程への進学を決めたきっかけでした。

進学することにどのような魅力を感じましたか?

私は前期課程修了後に就職し、福祉の現場を経験してきました。現場で実践を積み重ねてくると、無意識の内に経験値や主観に頼るところも自ずと出てきたように思います。改めて後期課程で様々な研究論文を読んだり、先生方やゼミでディスカッションしたりする中で、多様な視点をいただいています。アカデミックな観点でエビデンスに基づいた考え方も持つことは、悲しみや苦しみの中にいる子どもたちにとって本当に良い関わりができているのか見つめ直すために必要なことだと改めて感じています。色々な刺激をもらえたり、違う視点に気づいたり、さらに深く勉強できる環境や時間はとても大切であると感じています。
指導してくださる先生の研究への真摯な姿勢や幅広い知識に基づいた発言・論文に触れて、本当に心から尊敬しています。同時に、色々と教えていただき、人を大切にし、相手を尊重する姿勢など、人としても尊敬する先生で、出会えたのは幸運だと思っています。後期課程への進学を目指したのも、今研究できているのも、先生との出会いがあったからだと思いますので、 私にとっては道標のような存在です。そのような先生との出会い・学びがあるのも大学院の魅力だと感じています。

進学にあたって不安なことはありましたか?

学部を卒業して前期課程に進学する時は、不安がありました。この道でいいのかなとか、親にこれ以上経済的な負担はかけないために、早く就職して自立したいなと率直に思っていました。そういう点で、学部や大学院で奨学金を受けられたことは本当に感謝しています。
それと、前期課程に在籍していた当時は後期課程の先輩もたくさんいらっしゃって、一緒に講義を受けることもありましたので、いろいろ教えてもらったり面倒を見ていただいたりしたことが、とても助けとなったと思います。

進学に向けてどのような準備をされましたか?

前期課程修了後、そのまま後期課程へ進むか、福祉の現場へ出るか迷った結果、その時はまずは現場に出ようと思い就職しました。人間福祉学部(当時は社会学部社会福祉学科)の実践教育支援室で助手として勤務し、現在は親を亡くした子どもたちをサポートしているあしなが育英会に勤めています。 その中で出会ってきた子どもたちとの関わりを通し、少しでも社会に貢献できる研究を出来ないだろうかと思い、仕事も育児も家庭もあり迷いましたが、指導教員の先生に相談し、「進学するのであれば、今がラストチャンスだ」と後期課程への進学を決めました。

研究について

研究テーマを教えてください。

峰島里奈さん

親を亡くした青年のグリーフワークモデルの開発が研究テーマです。
喪失体験に伴う愛惜や悲しみなどの様々な感情をグリーフといいます。そのグリーフと共に生きていくプロセスをグリーフワークと捉えています。海外には様々な研究論文があり、その実践も多くみられますが、国内ではまだまだという現状です。特に子どもや青年を対象としたものは成人のそれと比べて少ないため、彼らの声に基づき明らかにしたいと思っています。子どもたちの「私はこれからどうやって生きていったらいいのだろう」、「なぜ親は死んでしまったのだろうか」という実存的な問いを含め、彼らがどのような途を歩むのか、社会全体や関わる大人が知るきっかけとなるようなモデルを提供することがテーマです。

どんなところに研究の面白さを感じていますか?

自分から能動的に動けば、どんなことも出来る可能性があると思います。指導教員や他の先生方と身近にコミュニケーションが取れますし、自分が学びたいと思った研究テーマなので調べる過程も議論も面白いです。また、自分次第で、他の研究分野も、講演会やセミナーなど多くのことを学ぶチャンスもあるかと思います。

研究で苦労したことがあれば教えてください。

修士論文のテーマを決めるのにとても苦労しました。
私の研究目的の根底には、子どもたちの助けとなるものを成果として出したいという思いがありますが、それだけでは抽象的で、そこから現実的に立証できるものは何かということをテーマに落とし込んでいくことは難しかったです。研究で明らかにすることは決して甘いものではなく、明らかに出来ることは本当に少しかもしれません。でも、だからこそ価値があるのだということを学びました。自分は研究をして、本当に何を明らかにしたいのか、自分自身が常に問われると思いました。

どのような時に自身の成長・スキルアップを感じますか?

自分で問題提起したことについて考えてまとめることや、自分と異なる意見を受け止めてどう議論するのかというスキルは、研究だけでなく仕事にも活用できるもので、前期課程でそのような社会に出て活かせるベースとなるスキルを鍛えることができました。特に統計分析やインタビュー等、様々な方法を用い、信頼性・妥当性のあるエビデンスをどう示すのか、その考え方や方法を学べたことは、大きな学びであったと感じています。

院生生活について

大学院生になって、毎日どのように過ごされていますか?

前期課程の時は、午前中にいくつかの講義を受けて、その後、図書館や研究室で自分の研究を進めていました。 夜遅くまで集中してやることも多く、何か1つのことを1人で黙々とやることもありますし、他の大学院生と一緒に残ってやることもありました。私は福祉が主専攻なので、実習で福祉の現場に行って学ぶ機会もありました。現在は、仕事と研究と二足の草鞋のため難しい部分はありますが、少しずつ取り組んでいっています。

今後について

大学院での学び・研究を将来どのように活かしたいと考えていますか?

今働いている福祉の現場で多くの方と関わっていくことは、ライフワークでもあると思っています。立場はどうなるかわかりませんが、研究者であっても実践者であっても、一つずつ研究を積み重ねていく、また、啓発的な活動を行って少しでも社会に役に立つことをできればと思っています。
また、グリーフサポートをしている団体は少しずつ増えていますが、そういう団体がなくても、「どうしたの?」って近くにいる大人が耳を傾けてあげられる社会になっていくことが、子どもにとっては望ましいことなのではないかなと思っています。各々の状況にもよりますが、子どもたち自身、受け止めて歩んでいく力を持っていると思います。ありのままの彼ら自身に寄り添える、そんな社会は、親を亡くした子どもたちだけでなく、子どもや大人にとっても豊かなものを与えてくれるように思います。研究や仕事を通して少しでも貢献できれば、そう思っています。

学部生へメッセージ

大学院で学ぶことの魅力を伝えてください。

峰島里奈さん

大学院進学に関心があるのであれば、一歩を踏み出すことをおすすめしたいと思います。学部生時代とは違う色々な人との色々な深さでの出会いがあって、自分が学びたいことを自分次第でどんどん広げていける、そんな環境が大学院にはあります。そこで出会えた人というのは、人生において重要な財産になると思いますし、徹底的に何かと向き合う、やり遂げるという経験は、今後何においても活きていくものだと思いますので、大学院に行きたいと思う方がいらっしゃったら、チャンスをつかんで、貪欲に自分のものにしていってほしいと思います。