[ 大学院総合案内 ]理工学研究科 的野志帆さん

プロフィール

理工学研究科 博士課程前期課程 生命科学専攻 2年(取材当時)
的野 志帆さん(理工学部 生命科学科卒)

大学院への進学について

進学しようと思ったきっかけを教えてください。

的野志帆さん

大学院進学は高校生の頃から考えていました。研究職に就きたいという気持ちがあったので、そのためには大学院に進むのかなと思っていました。学部2年生の時に就職について調べてみると、研究職に就くにはやはり大学院を出てないと難しいということをすごく痛感したので、大学院に行くことを決めました。また、同じ頃、研究に本当に興味があり、早く研究をしてみたかったので、今所属している研究室のインターンシップに参加しました。1週間程度、研究室で実際に実験を体験し、やはり自分は研究が好きだなと思いました。ピペットマンという器具を初めて使用した時は本当に嬉しくて、やっぱり研究ってかっこいいなと思いました。白衣を着て実験する姿もかっこいいし、将来は絶対研究職として仕事に就こうと改めて思いました。

進学することにどのような魅力を感じましたか?

学部4年生で大学院に進学するか就職活動をするかという大きな分岐点に立った時、やはり今やっている実験をこのまま続けたいと思いました。高校生の頃からテロメアの研究をしたいと強く思っていたので、それを今実際にできていて、これからもっと突き詰めて、新しい知見を残したいという考えがありました。また、知識やスキルをさらに身に付けてから社会にでたいという思いがあり、それを実現できる環境があることに魅力を感じました。

進学にあたって不安なことはありましたか?

私はワクワク感の方が強かったので、大きな不安はなかったですが、学費の面と同級生に比べて社会に出るのが2年遅くなるということに少しだけ不安がありました。しかし、学費については、現在、学内と学外から給付型の奨学金をいただいているので、安心して研究に専念できています。もし、同じような不安を持っている方がいたら積極的に奨学金制度を利用して欲しいなと思います。就職が2年遅れる点に関しては、私自身はすごくプラスに捉えるようにして、研究者としての知識・スキルの向上に繋がりますし、研究以外の活動を通じて自分の成長に繋げることもできる期間だと考えています。

進学に向けてどのような準備をされましたか?

2つあります。1つは、その当時に取り組んでいた実験をしっかりやること。知識やスキルを身に付け、大学院生の先輩と自分を比べて足りないところを見つけ、その向上に努めました。 2つ目は、前期課程の2年間で何か成果を残したいとの想いがあったので、進学する前に目標・計画を立てました。例えば、学会にでること、学術論文を投稿することです。また、4年生の時に卒業論文発表会の研究発表で賞をいただくことができたので、大学院でも賞をいただけるようになるとか、成績上位として表彰されるとかです。そういう目標を持つことはとても大事だと思いましたし、その目標に向かって具体的な計画を立てました。あと、学内外の奨学金制度を早めに知っておくことは大事だと思います。民間財団の奨学金を前期課程1年の時から受けていますが、それらの情報を知らないままだと受給の機会を逃してしまうので、自ら積極的に情報収集した方が良いと思います。

研究について

研究テーマを教えてください。

私は、高校生の頃から念願の染色体末端に存在するテロメアについて研究しています。テロメアの長さは、細胞が分裂する度に短くなることから、人間の寿命を表しており、テロメアを伸長させることで寿命を延ばすことができます。残念なことに、がん細胞においてはテロメアの長さが短くならないため、寿命がなく、永遠に増殖します。そこで、このテロメアの伸長を止めることで抗がん剤として応用できます。私は、このテロメアの長さ制御について研究を行い、抗がん剤への応用を目指しています。
元々は、中学生の頃にテレビのドキュメンタリー番組で、がんで苦しむ患者さんの姿を見た時に、副作用のない安価で画期的な抗がん剤を将来絶対に作りたいと強く思いました。その後、高校の生物の授業で抗がん剤開発にも繋がるというテロメアの研究に出会い、この研究を突き詰めていきたいと思いました。さらに別の側面として、テロメアの長さを制御することができたらアンチエイジングや不死身にもなれるかもしれないですよね。そういうところが本当に夢が詰まっていて、すごく面白いなって思います。

どんなところに研究の面白さを感じていますか?

的野さん

テロメアの研究自体かなり長い歴史がありますが、まだまだ分かってないことが多いです。それこそ、抗がん剤開発としての応用の可能性もありますし、他にはアンチエイジングとしての応用の可能性も秘められています。まだ世界中の誰も明らかにしていないことに自分が着目して、それを明らかにできるというところが研究の面白さの1つです。ただ、やっぱり失敗することは多いです。思っていた結果と全然違うということはよくあります。そういう時に何でこうなったのだろうと原因を解明していく過程もまた面白いです。1つ1つのステージをクリアしていくために、「今回は失敗したけど、次はここをこういうふうに工夫したら次のステージいけるかもしれない」といったゲーム感覚的なところもすごく面白いと思っています。

どのような時に自身の成長・スキルアップを感じますか?

私が過去につまずいた課題に後輩もつまずいていることがよくあります。こうしたらいいよってアドバイスしてあげて、実際にその後輩が成功した時には、自分の知識やスキルが蓄積されているという点で成長を実感します。研究を始めたばかりの時はプレゼンテーション能力も知識も無くて、質問に答えられなかったこともありましたが、経験を積み重ねていくごとに的確に答えられるようになって、プレゼンテーション時の話し方やスライドの作り方などはかなり上達できたと思っています。
論理的思考力もそうですし、計画力や分かりやすく伝える力も成長できていると思います。あと粘り強さ。特に精神面と体力面はかなりタフになりました。これはすごく自信になりますね。朝から晩まで研究していると、やはりすごく体力を使いますが、毎日片道1時間半かけて通学もしていることもあって、かなり強くなったと思います。
失敗したことでストレスを感じる方もいらっしゃると思いますが、私は全く感じることはなくなりました。むしろ次頑張ろうとか、多分あそこが駄目だったのかなと考えて、実際やってみたら改善できたりするとすごく楽しさを感じます。たくさんの失敗から学ぶこと、その失敗の原因を探していくという過程も面白いと思っています。

院生生活について

大学院生になって、毎日どのように過ごされていますか?

オンとオフを意識的に作るようにしています。大学で研究をしっかりやって、自宅に帰ってからはYouTubeとか見たりしてゆっくり休んでいます。研究室を長期間空けることは難しくて、夏休み・冬休みといった決まった休みもないのですが、短期間ですが自分から休みを取って、その時はゆっくり休むようにしています。

研究室の様子、雰囲気を教えてください。

研究室ですごく大事なのは、人とのコミュニケーションだと思っています。研究でつまずいた時とかに、誰かに相談したり頼ったりすることはすごく大事で、そこから新しいアイディアが生まれたり、解決策が見つかったりするので、そういったコミュニケーションが取りやすい環境が大切だということに気が付きました。所属している研究室は、すごくいい先輩・後輩たちが集まっていて、とても良い雰囲気だと思っています。私の場合、週に1回、指導教員とディスカッションする時間があります。毎回向き合ってくださって、研究に関してのアドバイスをいっぱいいただけるので、とても嬉しく、贅沢な時間だと思っています。
私は高校生の時からこの研究室のことや先生のことをネットとかで調べて追っかけていて(笑)、ここの研究室に入るために関学に入学しました。なので、先生に初めてお会いした時は、ネットで見ていた人に会えた!とすごく嬉しかったですし、今も変わらず尊敬しています。

今後について

大学院での学び・研究を将来どのように活かしたいと考えていますか?

今、4つの研究テーマに取り組んでいます。それぞれで結果を出して学会で発表し、論文投稿まで繋げたいなと考えています。また、研究者としてのスキルや知識をもっと高めて、身近な人だと助教の方に近づけたらなと考えています。

目標とするキャリアがあれば教えてください。

就職活動を終え、検査業界の研究職として働くことが決まっていて、検査試薬の発展に努めていきたいなと考えています。テロメアとは内容が若干違うのですが、結果的にがんを含む疾患をもつ方を救うことや健康な人の病気の発症を未然に防ぐことにも繋がると考えています。
人々の健康にも医療にも貢献できるところが検査試薬の良い点だと思いますので、安価で簡単に、迅速で高感度な診断が自宅でもできるような、そんな検査試薬を作って人々の健康と医療に貢献したいなと思っています。

学部生へメッセージ

大学院で学ぶことの魅力を伝えてください。

私が伝えたいことは、人生は本当に限られているので、どうせなら社会人になる前に、今しかできない大学院進学に挑戦してほしい、ということです。社会人としては、大学院を出てから30年以上働くことができますが、大学院生という選択は今しかできないと思います。少しでも研究は面白い、楽しい、興味があるという方は、大学院に是非進んでほしいですし、研究室訪問をしてみてください。私自身は本当に実験が苦手で、小中高でも失敗してばっかりでしたし、大学に入ってからもそうでしたが、研究が好きっていう気持ちだけでここまでやってくることができました。研究が少しでも楽しい、やりたい、今後続けたいって思うなら、本当に是非チャレンジしてください。
大学院に入って今思うことは、関学の奨学金制度が整っていたので、経済的な負担が少なく大学院に進めたという点はとても有難かったです。これは多くの人にチャンスがあるので、ぜひ利用してほしいです。また、神戸三田キャンパスのアカデミックコモンズのクレセントチューターに推薦していただいたおかげで、後輩への指導力を身につけることができました。また、学部4年生の時から、大学院の授業を先取り受講できたので入学後はより研究に専念できました。授業や研究だけでなく、イベントやプロジェクト活動なども色々と実施されていて、他の制度・環境も含めて、いっぱい充実しているのが関学だと思います。