[ 文学部 ]美学芸術学専修AESTHETICS AND ART STUDIES
メッセージ
ものの本質に迫り究める
人間は何に、なぜ感動するのでしょうか。感動した時、人々は「美しい!」と口に出します。ただし、芸術は美しい姿を多くの場合描き出しますが、芸術だけが美しいものでもありません。桜の木を前に、人は芸術作品ではない淡い色合いの花を美しいと感じることは事実です。その美しさは、理論的理解ではなく、それこそ理屈抜きに直感的に人の心に入ってきます。
美学はそのような「美しい」「気高い」「ユーモラス」など感覚的に人の心に素早く反応する気分(感性的認識)の働きを研究する学問であるといえます。
ある人が世界のあまりの美しさに心を動かされ、カンバス、楽譜、フィルムなど各自の芸術の形に移し換えて作品をつくり、他人がそれを楽しむのが芸術であるとすれば、世の中には芸術家と鑑賞者しか存在しなくなります。ここで、なぜこの作品は美しいのかを分析、研究する人々が登場します。芸術に関するさまざまな問いを投げかけ、それに対して自らの考えを示すのが芸術学であるのかも知れません。若い皆さん。あなた方の、ものの本質に迫ろうとするエネルギーが今日の美学、芸術学研究を支えるのです。期待しています。
教員紹介
演劇、映像、アニメーション、現代の諸芸術Research keywords
桑原 圭裕 教授
演劇と映画は隣接する分野です。いずれの劇場も観客を別世界へ誘う特別な空間でした。ゆえにそれらの研究も物語構造の分析を中心に議論が重ねられてきました。しかし、現在は演劇も映画もスマホやタブレットの映像として消費される時代です。一方で、映像を用いた舞台演出も多く見られるようになりました。このように演劇と映像の空間概念が接近するのにともなって、演劇・映画研究の対象も物語から離れて、劇空間を構成する光・色・音波など、映像のメディウムや物質性の視点に関心が高まっています。今や、映像は見て聴くものから、体感するものと捉えたほうが正確でしょう。例えば、映画のある場面を見て、頭の中では平常な視聴なのに、なぜか鳥肌がたった経験はないでしょうか。そのような体験の中には、映像の肌理や触感性が大きく関わっていると考えています。映像をミクロな視点で捉えることを研究基盤としつつ、具体的には「アニメーションのゆらぎ」をキーワードに、国内外のアニメーション表現について比較研究を行っています。
音楽史、メンデルスゾーン、オーケストラResearch keywords
小石 かつら 教授
私は、自身が演奏にたずさわってきたこともあり、音楽が「演奏者によって音にされる現場」に興味をいだき、近代的な演奏会の成立とその変遷について研究しています。
具体的には、世界最古の民間オーケストラであるドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、1781年以来現在まで、実際にどのようなプログラムで演奏会を開催してきたのかを調査・研究。同時に、この楽団を、世界のスタンダードとなる存在へと大きく舵をきった音楽家、F.メンデルスゾーンについても研究しています。 これらの研究は、現代日本の文化政策にもまっすぐにつながるものがあります。
西洋美術史、美学、表象文化論Research keywords
古川真宏 准教授
西洋の美術、なかでも19世紀から20世紀にかけての近代美術を、隣接する学問や思想、あるいは同時代の社会との関わりから問い直す研究をしています。いつの時代でも、美術作品の制作と受容には、政治や科学、経済、思想など、様々な要素が大きく関与しています。私は、そのような文化的ダイナミズムの中で芸術を捉えることに興味があります。
とりわけ、あらゆる分野で知の地殻変動が起こった特異なトポスとして知られている世紀末ウィーンの文化・芸術が私の研究対象です。世紀末ウィーンがいわゆる世紀末美術の中心地であると同時に精神分析の揺籃の地でもあることに着目し、美術と精神医学の関係に様々な角度からアプローチしています。また、そこから範疇を広げて、18世紀末のロマン主義から20世紀の近代美術に至るまでの「芸術と無意識」の系譜を描き出す研究にも着手したところです。
日本絵画、近世やまと絵、住吉派Research keywords
下原 美保 教授
私の研究分野は江戸絵画です。特に伝統的な絵画であるやまと絵に興味をもち、幕府の庇護を受けて活躍した住吉派に注目しています。この流派は、長い間、忘れ去られていましたが、正統派でありながらも、大胆でドラマティックな、時にマンガのような人物描写が、近年、評価されつつあります。
現在の研究テーマは二つ。一つ目は「作品や作家の評価はどのように決められるのか」。その理由が解明されれば、住吉派のように忘れ去られた作家たちに、再び光を当てることができるからです。二つ目は「19世紀に形成された海外の日本美術コレクションがどのような目的で収集され、どのように評価されてきたのか」です。
染織工芸史、服飾史、博物館Research keywords
山川 曉 教授
この服を着ると明るい気分になる、この器に盛ると美味しそうに見える、そう感じることはありませんか。衣食住さまざまな場面を支える工芸品は、身近にあって私たちの日々を豊かにしてくれます。
博物館に学芸員として勤務していたため、私は工芸品を手に取って調査する機会に恵まれました。その経験は、作品の形や文様、さらには製作技法などから、情報を読み取る訓練でもありました。寡黙な作品ですが、ひたすら向き合っていると、秘められた事象が見えてくることがあります。とりわけ、私が研究している、仏教において師の教えを正しく相承した証として授けられる伝法衣〈でんぼうえ〉には、たくさんの物語が詰まっています。
保存の難しい染織品が、いつどのような文化圏で製作され、どのような人々の手を経て今ここに伝えられているのか、染織品そのものを見定める眼を養うとともに、そこに込められた人々の想いや祈りに迫る研究を目指しています。
授業紹介
- 造形文化論
- 西洋・東洋といった地域、時代などの相違に注目し、あらゆる造形芸術(建築、彫刻、絵画、造形)の意味を検証します。「はたして、芸術活動には進歩があるのか」などの問いに気づかされることでしょう。
- 美学芸術学資料研究Ⅰ
- ルネサンスからロココまでの西洋絵画を題材として、イメージを読む能力を養います。学生はミュージアムの学芸員になりきり、課題作品に対する自身の研究成果を発表します。
- 人文演習Ⅱ
- 「私が企画する展覧会・上映会」をテーマにして、各自の企画した内容に即したチラシを制作し、パワーポイントをもちいて企画案を聴講者にわかりやすく伝えます。また、聴講者として発表者の説明をいかに評価するかをトレーニングします。