【准教授】福岡 弘彬(フクオカ ヒロアキ)

[ 編集者:文学部・文学研究科        2018年6月8日   更新  ]

研究テーマ:デカダンス、戦後文学、坂口安吾

 日本近代文学におけるデカダンスという概念について考察しています。「頽廃」「堕落」などと翻訳されるこの概念は、道徳的には退けられることが多いのですが、文学において、しばしば理念化されています。現在まで、岩野泡鳴・平林初之輔・保田與重郎・坂口安吾ら、デカダンスを唱えた文学者たちを中心に、この概念の文学史を編み上げようとしてきました。
 デカダンスとは、壊滅的状況を眼の前にしたときの身構えであり、廃墟の中で新たな何ものかが動き出すことを凝視しようとする、その態度のことでもあるようです。デカダンス文学者たちの言葉からこのことを知った私は、今、戦後文学をもう一度読み直そうとしています。「戦後」という時間の中で前提となった諸規範を否認し、「現実」を構成する言葉を問い直す、そのような契機が、文学の中にあります。今、言葉が言葉でなくなっていくような壊滅的状況の中で、文学に埋め込まれた様々な可能性を、あらためて掘り起こしたいと考えています。

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担当授業例
「日本現代文学」(2年生対象)

 アジア・太平洋戦争直後の文学や近現代沖縄文学を読むことで、「戦後」という時空間を文学から問います。毎回指定された作品を読んできてもらい、講義を経て自分の考えがどのように変化したか、どういうことを疑問にもったか、コメントを書いてもらいます。そのコメントに私が毎回リアクションをしながら、授業を展開していきます。

「日本文学演習Ⅲ」(4年生対象)

 4年生ゼミの春学期は、自分が卒業論文で扱う作品について、何をどのように問おうとするのか、原稿形式で発表してもらいます。対象作品は明治以降の文学作品であれば何でもよく、各自で決めます。自分の選んだ作品をいま・ここで読むこと、問うこと、考えることに、どのような意義があるのか、発表者には伝えてもらいます。ゼミの参加者は、対象作品を事前に読んできた上で、議論の中で発表者の問いを共有し、違う問いへとつなげ、めいっぱい広げていきます。たっぷり議論します。

卒業論文題目(一例)

『魔風恋風』における世間の眼――敗北させられた初野――
夏目漱石『門』論――「個」としての変化――
ナオミの「キャラ」理解とナオミズム――谷崎潤一郎『痴人の愛』論――
内田百閒「柳検校の小閑」論――不在の存在――
横光利一「微笑」――視覚的観点から読む心理――
戦場の普遍性――『野火』は誰の物語か――
遠藤周作『沈黙』論――「アウシュヴィッツ」以後の地平から――
「感覚」から巻き込まれる戦後世界――宮本輝「泥の河」論――
吉本ばなな『キッチン』における性のあり方
在日文学の枠を越えた『GO』