【教授】北村 昌幸(キタムラ マサユキ)

[ 編集者:文学部・文学研究科        2018年6月8日   更新  ]

研究テーマ:中世文学、軍記物語、歴史叙述

 「事実は小説より奇なり」という言葉があります。そんな「事実」を物語に仕立てれば、ますます「奇」に磨きがかかるはず。中世という戦乱の時代は驚嘆すべき「事実」で満ちており、それを正面から描いた軍記物語というジャンルが、フィクションにはない鮮烈な「奇」を備えていることは言うまでもないでしょう。しかも、軍記物語は一度書き上げられたのち、よりいっそうの充実をめざしてリライト(書き直し)が繰り返されるのがふつうでした。ゼミでは学生たちとともに、微妙に異なる五種類の『平家物語』の文章を読み比べながら、中世日本人が何を求めて改作していたのかについて議論しています。そのかたわら、私自身は南北朝時代の『太平記』を主軸にして研究に取り組んでいます。一見わかりにくいこの作品の魅力をひとつひとつ掘り起こしていくことが長年の課題です。

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担当授業例
日本文学文献研究Ⅰ(2年生対象)

 くずし字で書かれた和歌短冊の画像をテキストにして、一首ずつじっくり読んでいきます。受講者には文字解読と、パソコンを利用した歌ことばの検索に取り組んでもらいます。各自が集めたデータからどういう結論を導き出せるのか、思考力が問われる授業です。

日本中世文学(2年生対象)

 藤原定家、鴨長明、兼好法師、世阿弥など、中世文学の歴史に大きな足跡を残した人物を一人ずつ取り上げ、それぞれが生み出した作品の特徴や、他の作品との影響関係から浮かび上がってくる文学環境について解説します。

卒業論文題目(一例)

覚一本『平家物語』における敦盛と実盛の死―その服飾表現を通して―
『宇治拾遺物語』における安倍清明像
『とはずがたり』における遺言と夢について
和歌から読み解く『十六夜日記』
『徒然草』の虚構性について―王朝物語的章段の記述・表現にみられる平安文学の影―
『風葉和歌集』における『源氏物語』の贈答歌
配列から考える『梁塵秘抄』の解釈
中世王朝物語の女性像について―『しのびね』『今とりかへばや』の姫君たちを中心に―