【教授】大橋 毅彦(オオハシ タケヒコ)

[ 編集者:文学部・文学研究科        2018年6月8日   更新  ]

研究テーマ:近現代文学、上海に関わる文学、神戸の文芸文化空間

 大学での勉強を通じて文学が好きになり、文学についての関心を持ち続けていかれるようになったなら、それは目先の結果や利益に振り回されがちな現代を生きるあなた方にとって、すぐには気づかないかもしれませんが、貴重な財産になると思います。なぜならば、それは単なる知識や情報を得るだけでは満足してはいけない、豊かでエモーショナルな活動をおこなっている精神が存在していることに、文字で書かれたものを通して気づかせてくれるからです。そのきっかけを与えてくれたのが、たまたま高校時代に愛読した太宰治や堀辰雄の小説だったので、こうした紹介文で自分の専門分野を記すときには「日本近現代文学」としているけれども、もっと根っこのところでは、いま述べた考えを持ちながら日々学生たちと接しているのがこの「私」です、と伝えたいです。

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担当授業例
「近現代作品研究」(2年生対象科目)

 夏目漱石といえば「こころ」だけれども、いくつかの高校国語教科書に載っている同じ作者の「夢十夜」の中に、死んだ「女」の亡骸を埋め、そこで待ち続けていた男の前に現れたのが「百合」の花だったのはなぜだかわかる?――「じつはそこには当時西欧で流行していた『アール・ヌーヴォー』と呼ばれる芸術様式が影響を及ぼしているんだ」――と、こういった問答を出発点として、〈文学〉と〈美術〉とのつながりについて解説していきます。

「日本文学特殊講義」(3年生対象科目)

 神戸は近代以降さまざまな文学作品の舞台となってきましたが、その中にはいかにも海に向かって開かれた神戸の街らしく、ブラジルへの移民、中国から神戸に移住してそこで暮らし始めた華僑と呼ばれる人たち、戦争中ヨーロッパから亡命してきたユダヤ人たちが登場してきます。加えて、関西学院出身の文学者が書いた詩や小説の中にも、神戸の町がユニークな顔を覗かせます。それらの作品を読み味わい、その面白さを神戸文学館でのイベントを通して発信していきます。

卒業論文題目(一例)

光太郎の愛した冬を知る―冬と戦争の「満目蕭条の美」から―
坂口安吾の可能性―〈創造的生〉の営みとしての〈肉体〉の思考―
横溝正史と日本の本格推理小説
『レミング』「壁」の向こうへ 世界の涯てはどこにある
『万延元年のフットボール』の主題とは―主人公を巡る問題を検討して―
『ねじまき鳥クロニクル』の「井戸」の効果―井戸がもたらす〝救い〟―
小川洋子『冷めない紅茶』論―閉鎖空間の希求と脱出―
草野心平と関西学院(*「日本文学特殊講義」、神戸文学館での報告テーマ)
関西学院大学生ゆかりの喫茶店―カフェーパウリスタ・銀喫茶寮(*同上)
『横顔』を通じてみる関学同人たちとその作品(*同上)