[ 文学部 ]日本文学日本語学専修JAPANESE LITERATURE AND LINGUISTICS

メッセージ

日本文学と日本語学で学ぶ

大学で研究する日本文学は、高校国語の単純な繰り返しなどではありません。学生一人ひとりに課せられるのは、ある作品の新しい味わい方を提唱し、それがいかに魅力的であるか、また、そのように味わうことがいかに妥当であるかを実証すること、いわば「作品の新規プロデュース」といったところでしょうか。

まだ誰も気づいていない斬新な解釈を確かな形にしていくのは、なかなか大変な作業です。その探究の作業を通して、豊かな感性や、情報収集能力、思考力などが磨かれていくはずです。作品の新しい読み方を確立する過程は、じつは研究を行う人間の頭脳のはたらきを鍛えてくれるものでもあるのです。

日本語を研究する場合も、その点において大きな違いはありません。日本語表現に対する鋭敏さを高めることは、将来の進路が何であれ、私たちにとって一生の財産になるはずです。自分や他の人々の知的好奇心を満足させると同時に、自らの知的活動の能力を磨き上げることができる――それがこの専修で学ぶことの利点です。古典の世界に分け入るか、現代小説を読み解くか、日本語の奥深さに触れるか、ルートを選ぶのは皆さん自身です。

教員紹介

近現代文学、上海の文学、神戸の文芸文化空間Research keywords

大橋 毅彦 教授

大学での勉強を通じて文学が好きになったなら、それは目先の結果や利益に振り回されがちな現代を生きるあなた方にとって、貴重な財産になると思います。なぜならば、それは単なる知識や情報を得るだけでは満足しない、豊かでエモーショナルな活動をおこなっている精神が存在しているからです。

それに気づくきっかけは、たまたま高校時代に愛読した太宰治や堀辰雄の小説だったので、紹介文で自分の専門分野を記すときには「日本近現代文学」としているのですが、もっと根っこのところでは、いま述べた考えを持ちながら日々学生たちと接しているのがこの「私」です、と伝えたいです。

中世文学、軍記物語、歴史叙述Research keywords

北村 昌幸 教授

「事実は小説より奇なり」という言葉があります。そんな「事実」を物語に仕立てれば、ますます「奇」に磨きがかかるはず。中世という戦乱の時代は驚嘆すべき「事実」で満ちており、それを正面から描いた軍記物語というジャンルは鮮烈な「奇」を備えていることは言うまでもないでしょう。しかも、それらはさらにリライト(書き直し)を重ね充実していきました。

ゼミでは学生たちとともに、微妙に異なる五種類の『平家物語』の文章を読み比べながら、中世日本人が何を求めて改作していたのかについて議論しています。そのかたわら、私自身は南北朝時代の『太平記』を主軸にして研究に取り組んでいます。

言語学、古代日本語、複合助詞、引用助詞
Research keywords

辻本 桜介 准教授

主に、古代日本語(11世紀ごろまでの日本語)の文法を研究しています。これは、中学・高校の国語の授業で勉強する古典文法にほぼ相当します。古文を読もうとすると、しばしば参考書を使ってもうまく訳せないことがありますが、そこには未解明の文法現象が関わっている可能性があります。古典文法は未知の部分が少なくないのです。

私は、現代日本語を対象とした文法研究の知見を援用し、これまで気付かれることの無かった古代の文法現象を記述することに力を入れています。

デカダンス、戦後文学、坂口安吾Research keywords

福岡 弘彬 准教授

日本近代文学におけるデカダンスという概念について考察しています。「頽廃」「堕落」などと翻訳されるこの概念は、道徳的には退けられることが多いのですが、文学において、しばしば理念化されています。

デカダンスとは、壊滅的状況を眼の前にしたときの身構えであり、廃墟の中で新たな何ものかが動き出すことを凝視しようとする態度のことでもあると、デカダンス文学者たちの言葉から知った私は、今、戦後文学をもう一度読み直そうとしています。今、言葉が言葉でなくなっていくような壊滅的状況の中で、文学に埋め込まれたさまざまな可能性を、掘り起こしたいと考えています。

平安文学、物語、引用Research keywords

星山 健 教授

『源氏物語』を中心とする王朝物語の研究を行っています。今でこそ、「世界に誇る日本の古典」などと称揚される『源氏物語』ですが、当時は物語などサブカルチャーにすぎませんでした。そして、サブカルチャーであったからこそ描くことが出来た世界があります。

光源氏をめぐるさまざまな恋愛模様を描く中において、この物語は結局何を伝えたかったのでしょうか。また、その流れを汲む平安後期の物語は、『源氏物語』の圧倒的な存在感に押しつぶされそうになりながらも、それに抗う苦闘の中で、新たにどのような世界観を描き出そうとしたのでしょうか。一緒に読み解いていきましょう。

日本語学、日本語史Research keywords

村上 謙 教授

中世末以降の、いわゆる「近代日本語」の研究を行っています。特に、関西圏を中心とした上方語に関する資料、表記、音韻、文法、研究史など、各種の研究領域を幅広く扱うことで、当時の上方語の全体像の再構を目指しています。

また明治以降の上方語(一般的には関西弁と呼ばれています)についても、文献資料や録音資料、演劇資料などを用いて研究しています。

上方、西鶴、受容文芸学Research keywords

森田 雅也 教授

近世(江戸時代)の日本文芸を「受容文芸学」という学的立場から研究を行っています。特に西鶴を中心に上方の浮世草子・俳諧・歌舞伎・人形浄瑠璃等を研究課題とし、当時の読者にどのように受容されたかを知ることを大切にしています。したがって、作品が形成された同時代の文芸環境・社会的背景など総合的な視野で研究を行っています。

研究対象においても、近世文芸全体の体系化を目指して、近世後期小説はもちろん、近世の和歌、国字、漢詩、随筆等、幅広く考えています。さらに江戸時代を舞台とした歴史小説も研究。近世の人々に、そして、現代の我々に愛される近世文芸の本質なテーマに挑んでいます。

授業紹介

日本文学特殊講義
神戸は近代以降さまざまな文学作品の舞台となってきました。海に向かって開かれた神戸の街らしく、ユニークな顔を覗かせます。それらの作品を読み味わい、その面白さを神戸文学館でのイベントを通して発信します。
日本中世文学
藤原定家、鴨長明、兼好法師、世阿弥など、中世文学の歴史に大きな足跡を残した人物を取り上げ、それぞれが生み出した作品の特徴や、他の作品との影響関係から浮かび上がってくる文学環境について解説します。
日本文学演習Ⅲ
4年生ゼミの春学期は、自分が卒業論文で扱う作品について、何をどのように問おうとするのか発表します。ゼミの参加者は、対象作品を事前に読んできた上で、発表者の問いを共有し、違う問いへとつなげ、議論します。
日本語学演習Ⅰ
日本語の素朴な疑問を掘り起こし、その疑問はどうすれば解決できるのか、どんなデータが必要なのか、どうすれば上手にまとめられるのかなどを考えつつ研究・発表します。人間存在に対する深い洞察力の獲得をめざします。
日本文学演習Ⅱ
江戸時代における散文、韻文、芸能などの中から、自由にテーマを設定し、ゼミ形式で発表してもらいます。選んだ作品や作家のどこが面白いのか、短時間でゼミ生一同に理解してもらえることを目標とします。

堅田 愛菜 3年生 (撮影当時)

2年生の春に履修した「日本語音声・音韻論」で日常生活の小さな疑問を学問的に捉えることの面白さを知りました。学びの種は身の回りに数えきれないほどあり、それら全てが日本語の本質と邂逅するきっかけとなり得ます。気付きや発見を取りこぼさない習慣は、日本語学に限らず、自分の視野を広げながら毎日を楽しく生きる上での大きな財産となりました。

畑 瑶子 2年生 (撮影当時)

本を読むだけの学部、という考えがみごとに覆されたのは「日本文学史」の授業でした。文学史と聞くと、年号と作品、著者を暗記するという印象ですが、この授業は違いました。その時代の歴史を文学によって学ぶことで、現代に応用できる価値観を身につけることができたのです。それ以来、本を読むだけで終わらせずに、学んだことを用いて、誰かのために自分にできることを考えられるようになりました。