研究科長メッセージ

[ 編集者:大学院 司法研究科       2018年4月10日   更新  ]

img(研究科長)

司法研究科長 亀井 尚也

 関学ロースクールは、2004年度に設立され、2018年度で15年目を迎えました。これまでの12回の司法試験ですでに342名の合格者を出し、法曹界に確固たる地歩を築いています。
 2019年度より、関学ロースクールは、交通の便が抜群の西宮北口に進出します。
新しいキャンパスで、あなたが理想とする法曹像を志高く描いて、法曹への道を歩みませんか。
 優れた研究者教員と経験豊かな実務家教員とがバランスよく配置された教員体制、1クラス最大10名程度の演習や実務科目を中心にした少人数教育の徹底、全員に保障される個人専用キャレル(自習机)、本学出身の弁護士や上級生による丁寧な学習支援などの体制を整えています。教員やOBの熱心さ、学生との距離の近さは、他校の追随を許さないと自負しています。就職支援も細やかです。
 夢と希望を抱く、意欲あるあなたを、関学ロースクールは待っています。


 -PROFILE-

 亀井 尚也(かめい ひさや)
 
 1958年生まれ。東京大学法学部卒業後、1984年に弁護士登録。1992年に神戸市で
 かけはし法律事務所を開設し、現在に至る。関西学院ロースクールには2004年の開設当初
 から在籍し、主に実務基礎科目を担当。学外においては、兵庫県弁護士会副会長(2000年
 ~2001年)、日本弁護士連合会法科大学院センター副委員長(2002年~現在)、文部 
 科学省大学設置・学校法人審議会大学設置分科会法科大学院特別部会専門委員(2003年~
 2006年) 、(財)日弁連法務研究財団法科大学院認証評価事業・評価委員会委員(200
 3年~2012年)などを務める。

(2018年度入学式 研究科長式辞)

 満開の桜に包まれた素晴らしいキャンパスで、今日の入学を迎えられた皆さんに、心よりお祝いを申し上げます。
 今年は既修4名、未修9名と、人数がやや少ないですが、私たち教職員は、皆さん1人1人を大歓迎しております。なお、専任教員は、研究者教員が12名、実務家教員が8名の合計20名で、実務家教員のうち4名はフレッシュな新任、という体制で皆さんを迎えます。
 2004年にスタートした関西学院大学法科大学院は、今年で15年目という節目を迎えました。この間、関学法科大学院出身の法曹は約350名にのぼっており、また法曹の資格を残念ながら取れなかった多くの修了生も、各分野で活躍しています。また、昨年は司法試験の合格者が18名、合格率が20%近くで、特に現役修了生が多数合格するという成果を出して、今日を迎えています。

 さて、この間、法科大学院制度に対しては、いろいろな批判もなされております。その中には、制度の担い手の側の力不足や未熟さに起因する面への批判もあり、その点は改善していく必要があることも確かであります。しかし、法科大学院制度が目指している新しい法曹養成の理念については、概ね高い評価が得られていると言ってよいと思います。
 この理念は、2001年に司法制度改革審議会が取りまとめた意見書の中で、「国民の社会生活上の医師」という言葉に集約されています。その部分を少し読んでみますと、「『国民の社会生活上の医師』としての役割を期待される法曹に共通して必要とされる専門的質・能力の習得と、かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る」「専門的な法知識を確実に習得させるとともに、それを批判的に検討し、また発展させていく創造的な思考力、あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する」等とうたわれています。
 これは、まさに関西学院大学が掲げているMastery for Service (奉仕のための練達)と同様の理念であるといってよいでしょう。

 私は、幕末を大きく動かした坂本龍馬の「憎しみからはなんちゃー生まれん。」という言葉が大好きです。私が弁護士の仕事をしているときにも、いつも座右の銘にしています。この言葉が生まれた時代は、武士の中にも上士と下士に分かれ、上士が理不尽なことをすることが横行し、その中で、憎しみにかられて復讐をしようとする人たちもいたのですが、龍馬は、そのような行動からは何も生まれないと言い、それを自ら貫き通して、世の中を変えていったのです。
 人間が憎しみにかられてとる行動とはどういうものでしょうか。相手をやっつけ、不幸に陥れる、あからさまな暴力で相手を全否定する、といったものではないでしょうか。その最たるものが戦争やテロです。
 戦争は、為政者が政治支配の道具として計画的・組織的に行うという面がありますが、多くの人たちを戦争に動員し、協力させるには、憎しみを掻き立て、報復感情を増幅させるということが、いつも行われてきました。それによって、殺しあうことを正当化することに結びつけるのです。しかし、その結果は、報復と憎しみの連鎖をもたらすだけです。戦前・戦中の日本でも、そのようなことが多く行われましたし、中東を中心とするテロや報復の繰り返しもそうです、パレスチナ問題は、根深い歴史的な根源があるとは言うものの、和平の努力が報復の繰り返しによって損なわれ続けてきました。私は解決まで500年や1000年はかかるのではないかと思っています。

 法の理念は、これとは対極にある考え方です。
 人間の理性によって、野蛮な行為をコントロールするものです。法の究極には国家権力による強制という面もありますが、基本的には、権利を暴力ではなく理性に訴えて正しい方法で実現し、多くの人の納得と合意によって、社会の問題を解決していこうとするものです、法は、そのベースとしてのルールであり、人類の文明が生み出したかけがえのない知恵というべきものです。法が発展した成熟した社会からは、野蛮な暴力や、それによる人々の不幸は限りなく少なくなっていくはずである。私はそう信じて、法律家として生きています。
 皆さんも、法を学ぶということは、そのような崇高な営みであるということを、決して忘れずにいてほしいと思います。法科大学院を修了したうえで法曹の資格を得るためには司法試験に合格する必要があります。しかし、そのための小手先の技術を覚えるのでなく、生きた法の考え方を自らの血とし、肉とし、理性に満ちた平和な社会を築くための勉強をするのだ、という気持ちで取り組んでほしいと思います。

 理想を申し上げましたが、とはいえ、法を学ぶことには独特の難しさがあります。2年間ないし3年間で学ぶことは多岐にわたっています。その中で、初心を忘れないようにしてほしいですが、勉強漬けのような生活を強いられる面もあります。自信をもって学べない行き詰まりを感じたり、悩んだり、ということもいろいろ出てくると思います。そのようなときは、私たち教職員や多くの先輩、上級生の力を遠慮なく借り、また仲間同士で力を合わせながら、乗り切っていっていただきたいと思います。
 関西学院大学法科大学院は教員と学生の距離が近いことや、学生同士のまとまりがとても強いという特徴をもっています。
 関西学院大学法科大学院は、ここ上ヶ原から、来年には西宮北口にキャンパスが移動いたします。上ヶ原の、豊かな自然に恵まれた、ゆったりとした雰囲気も捨て難いものがありますが、西宮北口という、都会のきびきびした場所で、集中した学修に取り組む、ということも目指してほしいと思います。私たち教職員一同は、新しいキャンバスで、関学法科大学院がこれまで以上に飛躍的に発展できるようにと、張り切っています。
 そのような中で、皆さんが、心身ともに元気な姿でこれからの2年間ないし3年間を過ごしていかれ、立派な成果を勝ち取って社会に巣立っていかれることを期待しまして、私の式辞とさせていただきます。頑張っていきましょう。