INTERVIEW卒業生が語る学び

企業統治や個人情報保護法などに関わる
企業法務をはじめ、家事や刑事事件を経験。
今、不動産ファイナンス分野を扱っています。

白石有佳

弁護士 大森 楓

Kaede Omori

関西学院大学法学部卒業。
2017年4月、関西学院大学法科大学院(既修者コース)に入学し、同法科大学院を19年3月に修了。

19年9月、司法試験合格。
20年12月、弁護士登録。
20年12月~22年3月、第一法律事務所。
22年4月より、西村あさひ法律事務所・アソシエイト。

これまでに手掛けてきた主な分野は、不動産ファイナンス、企業法務、家事事件、刑事事件。

法律実務家教員との出会いが
きっかけで、ロースクールへ

法曹になることを強く志望していなかった私が法律家を目指すきっかけになったのが、弁護士をされていた教授との出会いです。法学部で学ぶ当時、企業法務分野で活躍されていた先生が解説される話には、経験と確かな知識に裏打ちされた含蓄があり、話振りや優しい人柄の人間性も含めて憧れを持ちました。

法曹を目指すのであれば、なるべく経済的負担を軽くしたいと考え、早期卒業制度を利用して関西学院大学を卒業し、関西学院大学法科大学院の既修者コースに入学しました。関西学院大学法科大学院は、奨学金制度が充実していること、先生と学生の距離が近い少人数教育であることに魅力を感じました。

密度が濃い議論をするロースクールの授業

既修者コースでは法律基本科目についての基礎的な知識を有していることを前提に、その知識を法律問題が潜んでいる事案の解決に生かしてみる授業から始まります。関西学院大学法科大学院では基礎演習と呼び、授業で検討するための事例問題を予め学生に配布し、学生は事例問題の適切な解決策について設例に沿いながら検討をして授業に臨みます。予習の段階で関連する判例や学説などを理解しなければならないことから予習には時間が掛かりましたが、こうした努力を持ち寄っての授業は密度が濃くなるため、正しい法律知識の定着をはかる上で役立ちました。先生からの質問に対する他者の考えをはじめ、先生とのやり取り、先生の解説を参考にし、自分の考え方の道筋を修正したりするようにしました。

実務を知る上で役立った科目が、「ローヤリング」や「刑事裁判実務」などです。「ローヤリング」は弁護士の先生の指導のもとで、一般の方(模擬依頼者)を対象にする法律相談を行い、その解決策を検討するものですが、実際の法律相談は事例問題とは異なり、事実関係が聞き取られているわけではありません。そもそも法律問題であるのか、法律問題であればどのような法律を適用すべきなのかを判断しなければならないため、事実関係の聞き取り技術や整理の仕方を養うことができました。また「刑事裁判実務」は、冒頭陳述や人定質問から始まる刑事裁判手続きの実際について派遣裁判官から指導を受けられる授業ですが、刑事訴訟法の理解を深めつつ、起訴状の起案などの実務力を養うのに役立ちました。

既修者コース2年次になると、演習科目の事案内容がより実務に近くなり、事実関係が複雑になります。例えば「民事法総合演習」は、判例を踏まえた事案になっていますが、判例とは異なる事実関係であることから、判旨をそのまま使えるわけではありません。事案の事実関係に条文が求める要件を照らし、判例の射程がどこまで及ぶのかについて検討する必要があります。授業では、法的に重要な事実の抽出や射程のおよぶ範囲などについて議論をし、適切な解決策について多面から検討しました。展開・先端科目から選択履修した「環境法」の授業では、環境によい社会づくりを目指し、規制をするだけではなく、環境負荷の低減につながるよう 弁護士な意思決定を促すにはどうするべきか、法制度の仕組みや目的の理解に重きが置かれ、行政法の理解を深めることにも役立ちました。

弁護士になり、これまでに契約書のチェックや企業統治、損害賠償、個人情報保護法などに関わる企業法務をはじめ、家事事件、刑事事件を手掛けてきました。現在は、西村あさひ法律事務所で不動産ファイナンス分野を扱っています。

不動産ファイナンス分野では、不動産の取得、運用、売却といった、それぞれの過程で発生する法律問題への対応が求められます。不動産の取得であれば、不動産所有者をはじめ、売買契約書、借入を起こすのであればファイナンス契約書の確認など多岐にわたります。不動産ファイナンスにおいて中心的な役割を担う投資運用会社に対する法規制もありますし、当事者が海外の場合もありますから、一般的な規範にとどまらない各スキームのメリットとデメリットを検討することも重要な役割になっています。

弁護士になって約2年半が経ちますが、依頼者から感謝の気持ちやねぎらいの言葉をかけられたときに大きなやりがいを感じます。その一方で、学ばなければならないことが多くあるとも感じています。より良いサービスを依頼者に提供し続けられるように、これからも努めていきたいと思っています。

法律の基本をしっかり身につけてほしい
司法試験が問うている力は、法律の基本的な考え方、原理・原則、条文を正しく理解できているかどうかだと感じています。事例問題であれば、事実関係において、ど の事実がどの条文の要件に当たるのか、基本に立ち返りながら広く見渡せる力を身につけることが大切です。仲間との議論、先生方との議論を通して、基本の深い理解と法的思考力に幅をもたせられたことが、司法試験でも、実務についた今でも生きています。
西村あさひ法律事務所
800人を超える国内外の弁護士等(提携事務所などを含む)が有機的に結びつき、ビジネスニーズに即した総合的・戦略的なソリューションを提供。手掛ける法分野は、M&A、コーポレート(ガバナンスや企業法務など)、ファイナンス、リアルエステート(REITや不動産ファイナンスなど)、事業再生、知的財産法、情報法、独占禁止法/競争法、消費者法、通商法/投資法、国際関係法、ウェルスマネジメント(相続や事業継承など)などと幅広い。