2021.04.05.
「IMFエコノミスト養成プログラム」参加報告

写真:今回IMFエコノミスト養成プログラムに参加した上田さん(国際学部)

写真:今回IMFエコノミスト養成プログラムに参加した上田さん(国際学部)

2021年3月16日(火)~22日(月)に国際通貨基金 (IMF) アジア太平洋地域事務所 (OAP)主催の「エコノミスト養成プログラム」がオンライン開催され、本学国際学部1年の上田桃子さんが参加しました。

IMFエコノミスト養成プログラムは、学生、若手研究者や社会人を対象に、IMFがどのようにファイナンシャル・プログラミングやその他の経済分析ツールを使用して、マクロ経済問題を分析し、政策提言を行っているのかを紹介することを目的としたイニシアティブで、参加者は、元IMFエコノミストによる講義や、IMFの模擬経済審査を行うグループワークを体験します。

今回選考を経て参加された上田さんの報告をご紹介します。

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<「IMFエコノミスト養成プログラム」参加報告>

■参加動機
かねてからCSRや、健康や環境によい商品と人々の消費行動に興味がありました。しかし、経済が不安定な国や発展途上国では、購買意欲やよりよい消費選択をすることよりも、生活の維持が優先されます。それでは安さを求めた消費活動になってしまい、より豊かな生活や世界的な課題の解決には近づきません。そこで、環境と健康に良い選択に繋がる人々の安定した生活には、国家または国家間の経済の安定が必要であると考え、その資金協力や政策提言を行うIMF(国際通貨基金)の取り組みを学び、経済政策分析を体験することでマクロな視点から消費活動を考えてみたいと思い、参加しました。

■プログラム実施内容
【第1日】まず、IMFの主な役割であるサーベイランス(政策監視)、金融支援、能力開発について学びました。IMFは国際通貨制度を安定させるため、加盟国や地域、世界全体の経済をモニタリングし、分析結果を報告書にまとめ、政策助言を行っていることがわかりました。経済には様々な要因が影響し、要因を特定するのは難しいのではないかと思っていましたが、分析をしながらも世界経済と各国の経済を保っているのだと言うことを知りました。
また、サーベイランスに使用されるファイナンシャルプログラミングとはどういうものかを学びました。ファイナンシャルプログラミングを構成する4部門一つずつとそれらの関連性から、データに誤りやリスクが潜んでいないかを検証するのがIMFの仕事の一つであり、大きな役割であると考えます。講師が問いかける形で、具体例であるデータを見ることができ、興味深かったです。

【第2日】この日はまず、ベースラインシナリオについて学びました。ベースラインシナリオとは、直近の経済動向を見て今後の見通しを立てることで、政策提言に直結します。経済学ということもあり、専門的な数式がたくさん出てきましたが、具体例や概念から先生が説明してくださったため、大まかにではありますが理解することができました。また、あくまでも見通しであるため、実際に見通し通りになるとは限らず、IMFのエコノミストがその都度分析し、予測を修正しているということも分かりました。
Covid-19と債務の持続可能性についても学びました。ここでは、新型コロナウイルスによる各国のGDPの成長率や対策費、財政収支、国の負債を地域や国ごとに分析しました。先進国のほうがコロナ対策に関連する支出が多いことや債務の重要性について知ることができました。

【第3日】景気循環や、いくつか種類のあるマクロ経済政策とその期待できる効果について学びました。ここでは、金利や市場金利、税率と輸出入量の変化、インフレーションなどが影響し合うことがわかりました。

【第4日】5日目に行うグループプレゼンテーションの参考として、IMFによるエジプトへのExtended Fund Facility(拡大信用措置)とその分析を先生がしてくださいました。また、JICAによるプログラム型借款について、JICA職員からお話を伺いました。

【第5日】Covid-19下におけるモルディブとネパールに対するIMFの金融支援に対する分析発表を、4グループに分かれて行いました。私の班はネパール担当だったため、ネパールの基本経済情報とCovid-19の状況、政府による対策、金融政策、経済指標などのデータを分析し、経済不均衡とマクロ経済政策が適切であったか、潜在的なリスクや課題についてデータを根拠に発表しました。データが多く、分析にはそれらを照らし合わせる必要があったため、初めは分析ができるか不安でしたが、班員と議論を重ね、自分たちなりの結論を導くことができました。

■事前準備について
事前にIMFについての概要や取り組み、仕組みなどについて書かれたウェブサイトを提示されるため、それらに目を通し、IMFについて理解する必要があります。また、マクロ経済学に関する用語集や、経済学の基本的なコンセプトが書かれた英文の資料も渡され、マクロ経済学のバックグラウンドに自身がない人は、それらを読んで基礎知識をつける必要がありました。
授業で使用する資料も事前に配布されました。それらは英語ですべて書かれており経済専門用語でもあるため、分からない単語があれば調べておくことも、授業内容を円滑に理解するために役立ったと思います。この講義に限らず、普段から議論をすることに慣れておくことも大切だと感じました。先生に対する質問はもちろん、プレゼンテーションを作るにあたり議論は必須であるため、根拠を用いながら論理的・積極的に議論に参加する必要があります。

■参加して感じたこと、今回の経験を活かして今後やりたい事など
経済用語や概念だけでなく、データを見ながら政策の成果や国ごとのマクロ経済の流れを把握し、その政策が適切であったのかや何がリスクとして考えられるのか、またその対策を自ら分析し提言するという、一人ではなかなかできない経験をすることができました。
また、IMFとマクロ経済政策について学ぶだけではなく、国際機関で働く方のお話を伺えたこと、学年も大学も国も異なる学生と議論でき、大変有意義な時間を過ごすことができました。特に、プレゼンテーション準備の際に班のメンバーと難しい、と悩みながらも少しずつ分析を前に進め、最終的に発表を成し遂げられた際は、とても嬉しく達成感がありました。

私のキャリアゴールは、環境や人に優しい商品を流通させ、SDGsなど社会問題への継続的なアプローチをすることです。
そのために、まずは消費行動や商品の価格設定などミクロ経済だけでなく、貿易論や経済政策などマクロ経済の学びを深めたいと考えています。今回参加した、IMF・OAP(アジア太平洋地域事務所)のエコノミスト養成プログラムはその一歩であり、今後の勉学と仕事に活かしたいです。
最終的には、健康や環境、人権に配慮した商品を普及させるために、各国での商品流通度合いや消費者の購買活動を分析し、マーケティングで適切な価格設定をし、安定した需要と供給関係を確立することで、社会問題へのアプローチを継続的にし、消費者にも供給者にも優しい商品を流通させたいと考えています。
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