2021.08.26.
「関西学院世界市民明石塾」を開講(7/31,8/4~8/5)

関西学院大学は将来のグローバルリーダー育成を目的として、明石康・元国連事務次長を塾長に迎え、高校生対象の「関西学院世界市民明石塾」(以下、明石塾)を開講しました。

明石塾は今回で5度目の開催となり、本学西宮上ケ原キャンパスを拠点に7月31日のプレセッション、8月4日~5日の本セッションの計3日間のフルリモートプログラムとして、全国の高校から選抜された31名の高校生が参加しました。「Challenges for SDGs!~地球の未来 / Future of Our Planet~」をテーマに、SDGs(持続可能な開発目標)から Goal 13:気候変動に具体的な対策を、Goal 14:海の豊かさを守ろう、Goal 15:陸の豊かさも守ろう、の3つの目標を取り上げて実施しました。

プレセッションでは(一社)イマココラボによる「SDGsワークショップ」を実施。ワークショップは、高校生同士がお互いを知り、よりコミュニケーションを円滑に取れるような関係性を構築することを目的として、マスターファシリテイターの能戸氏にファシリテイトいただきました。能戸氏によるSDGsについてのレクチャーを軸に、トピックに関する高校生同士のインタビュー(対話)を随所に設け、SDGsについて考えていることや今生きているこの世界について感じていること等を共有し合いました。冒頭、緊張の面持ちだった高校生も対話を重ねていくうちに打ち解けた様子で、高校生からは「いろいろな人と話せて楽しかった」、「学校では学べない考え方や視点に触れたり、普段話すことのない深い話をすることができ刺激になった」との感想が出ました。

開塾式

明石康塾長

本セッションは、明石康塾長による基調講演(テーマ:「SDGsと国連―これからの民主主義は?」)を皮切りにスタートしました。SDGsの17つの目標のうち、政治的、外交的問題が取り扱われているゴール16、17について言及され、SDGsが政府間での協定や宣言とは異なり、国連加盟国には法的拘束力はないが、首脳レベルで各国がSDGsの進捗を話し合うことになっており、民間セクターが積極的に政府に働きかけることがSDGs達成へのカギとなるとも述べられました。

続いて行われた明石塾長との対話セッションでは、高校生よりSDGsに関する質問から明石塾長のご経験に関することまで、質問の手が下がることがない熱気あふれるセッションとなりました。明石塾長は「鋭くてよい質問ですね」と何度も仰りながら、ご自身の経験も交え、1つ1つの質問に丁寧にお答えくださいました。「人生においてできるだけ遠くをみることが大切である一方、足元の問題から解決し、自分の理想や夢にむけて一歩一歩進んでいくことも重要である。昨今「グローバル」とよく言われるが、ローカルの視点も忘れてはならない。」とアドバイスも交えてお話くださいました。

セッション1

(一社)ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事坂野氏

セッション1では「地球と私たちの未来:21世紀のライフデザインとSDGs」をテーマに久木田純教授による講義の後、本学総合政策学部卒業生で、(一社)ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事の坂野晶氏にご講義いただき、絶滅危惧種の鳥カカポの保護活動をきっかけに環境問題に関心を持ったことや徳島県上勝町でのリサイクル活動等、ご自身の経験をもとにお話くださいました。坂野氏は、2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)共同議長を務められ、2020年より一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンにて循環型社会のモデル形成・展開に取り組まれています。大量消費社会への警鐘は、まさにゴミ問題と直結しており、若い世代への環境教育が問題解決に必須であることを力強くお話くださいました。

開塾式

OCHA神戸事務所所長 吉田氏

セッション2では、現役国連職員との対話セッションとして吉田明子氏(国連人道問題調整事務所(OCHA)神戸事務所所長)に、災害や紛争時の人道支援におけるOCHAの使命と活動についてご講義いただきました。吉田所長は、災害支援はもとより、Anticipatory Action(予測に基づく人道対応)の重要性が特に高まっており、より多くの命を救い、被災者の苦痛を軽減するために必要なシステムを構築し、より良い支援につなげていきたいと、お話くださいました。後半の質疑応答では高校生から熱心な質問が寄せられ、吉田所長は「現地での支援が一番の学び。物資の供給のみならず、いつも被災者の視点で活動することを念頭に置くよう、心がけている。OCHAの役割は各国、各機関との調整で、非常に難しい局面に対峙することも往々にしてあるが、成果につながる糸口を戦略的に見つけることが大切。それには地道な交渉こそが事態を前進させる。」と高校生からの問いに熱心に応じてくださいました。

本セッション2日目には、"Environmental Action Taken in Canada - Climate Change and the Need to Build Climate-Resilient Cities"をテーマに、前駐日カナダ大使のマッケンジー クラグストン・関西学院大学教授による英語での講義が行われました。気候変動による都市での影響や現状についての説明から始まり、これまでのカナダの環境変化や気候変動に対するバンクーバーでのアクションプラン等が紹介されました。全て英語で行われた講義でしたが、質疑応答の時間には多くの質問があがり、高校生の英語力や環境問題への関心の高さがうかがえました。

続いて「産業は地球温暖化の原因か/Is industry cause of global warming?」をテーマに日本語チームおよび英語チームに分かれてディベートを実施。肯定派と否定派ともにディベートが初めてだったという参加者もいる中で、具体的な論拠を交え、チームワークで議論を進めていきました。オンラインでの実施にも関わらず、物怖じせずにしっかり自分たちの主張を論じ、相手側からの鋭い指摘をかわすことなく的確に答えており、白熱した議論が展開されました。ディベートを終えて、「否定派は難しい立場ではあったが反論を考えることが楽しかった」、「相手側の反論ポイントが自分たちが予想していたものとは違い勉強になった」、「同世代の人たちがどのような考えを持っているかを知ることができて新しい発見があった」などの感想が述べられ、非常に貴重な経験に繋がったようでした。

世界市民明石塾の目玉でもある「地球の未来に関する青年の声明」の作成セッションは、まず5つのグループに分かれてグループ毎に声明文案を作成。続いて全体会合で、各グループの案を一つの声明文へまとめ上げる作業を行いました。このセッションは、国連や国際社会における必ずしも価値観や方向性が一致しない場において合意形成を進めるプロセスを体感することも一つの目的としています。それぞれのグループから出された案をもとに、声明文に盛り込む内容や表現・言葉選びなど細かい点にも議論が展開し、ファシリテーターの神余隆博教授(元駐ドイツ大使)のリードのもと、講師の久木田純教授(元UNICEFカザフスタン事務所代表)や、三輪敦子教授(元国連女性開発基金(現UN Women)アジア太平洋地域事務所プログラム担当官)のコメントも交えながら、声明文を完成させていきました。

全てのセッションを終えて閉塾式を実施。明石塾長からの参加高校生に向けてメッセージでは、「皆さん、よく頑張られました。最大級の称賛に値すると思います。これからの将来、皆さんにはさまざまな難しいことが待ち受けていると思いますが、簡単に負けず、広い考えや知恵を持って向かっていってほしい。」と激励されました。また、講師を務められた神余教授、久木田教授、三輪教授からのそれぞれメッセージをいただき、この明石塾でできたネットワークを大切にし、長い人生において目標やミッションをもって、将来様々な場所で活躍できる人になってくれることを願っていますとエールが送られ、明石塾全プログラムが終了しました。

次代を担う参加者の皆さんが、これからもお互いに切磋琢磨し、世界市民明石塾での学びと経験が将来グローバルリーダーとして活躍するための一助となるよう願っています。

2021年度 世界市民明石塾における地球の未来に関する青年の声明