[ 国連・外交統括センター ]学部副専攻「国連・外交プログラム」履修生の声
ー 劉 真希さん(法学部 4年) ー

※内容は取材当時のものです。

 

国連・外交プログラム履修を志望した理由

中国から移民した両親をもつ私は、移民2世の在日外国人として日本で生まれ育ち日本人同様の教育を受けてきましたが、家系は全員中国人であるため、双方の文化や習慣における違いを幼少期より経験してきました。また偏見にもとづく差別や、法による権利の制限、機会の不平等に直面することも度々ありました。私は日本社会に適応するため、時に自分の個性や主張を心の内に抑え、日本人らしく生きるうちに、次第に自身の民族的出自と帰属意識に乖離を覚えるようになりました。私のような在日外国人のみならず、国際社会に目を向けると、国際移動をする人々は年々増加しており、宗教や人種の違いなどによる衝突や紛争は至る所で耐えません。私はそうした人々が直面する問題・課題に興味関心があり、多様性を認めつつも平和裏に共存できる社会を構築するために今まで国際機関をはじめとして国際社会においてどのような取り組みがなされてきたのか、今後なされていくべきかについて学び考えるため、本プログラム履修を志望しました。

授業・先生についてや履修しての感想

本プログラムを履修して良かったことは、国連システムや国際問題(開発、平和、人権、人道)についての広範な理解が深まり、視野を広くして物事を批判的に考える力が鍛えられたことはもちろん、将来自身の目指したいキャリアについて真剣に考える機会が多かったことです。なかでも4年春学期に履修した「Career Seminar for International Organizations」という授業(院生向けだが英語要件を満たした学部生も履修可能)では、自身の人生におけるミッションや目標を考え、人生100年計画を作成しました。この計画作成段階でこれまで培ってきた経験や学びを振り返り、自分が人生において何を大切にし、これからどうしていきたいか、軸を定める大変良い機会となりました。また、その後4年夏休みに参加したニューヨークでの「国連セミナー」において、中満泉国連事務次長をはじめとする国連職員の方々や日本政府代表部の方々、コロンビア大学院生などからお話を伺うことで自身の軸をさらに具体化することができました。私は大学院進学に向けて、出願大学や奨学金の書類準備で「自身の研究と、それをどのようにその後の進路に繋げたいか、また研究を通してどのように社会に貢献したいか」といった問いに往々にして直面してきましたが、本プログラムを通して確立してきた自分軸を基にそれらを明確にすることができたと思います。その結果、志望大学院から合格、高倍率の海外留学を支援する奨学財団から採用をいただくことに繋がりました。

本プログラムは少人数制で演習形式の授業が多く、国際公務員や外交官としての実務経験が豊富な先生方から直接かつ密なご指導・ご助言をいただくことができ、国連・外交統括センター職員の方々からも手厚い進路サポートを受けることができます。それら全てが貴重な学びや経験となったとともに、自身の進路を切り開いていくことに繋がりました。

国連・外交プログラムと学部や他のプログラムでの学びの関連性

私は3年秋学期に関学独自の 国際ボランティアプログラム である「国際社会貢献活動」に参加し、マレーシアにあるトゥンク・アブドゥルラーマン大学(UTAR)に5か月間派遣されました。派遣期間中は、主に大学やその周辺の村々にある学校を複数訪問して、現地の中華系、インド系、先住民族を含むマレー系の子どもたちや若者に、日本語・日本文化を伝える活動を行いました。私は関学で教職課程を履修している関係で日本の教育について学んでおり、ボランティア派遣に先立ちマレーシアの教育も学んでいたため、現地では両国の教育実態を比較することができました。特に、子ども・若者の教育を受ける機会が平等に保障されているかという観点において、法学部のゼミで学んできた国際法・国際人権と、本プログラムの授業(「国連・外交入門」、「SDGs実践特別演習」等)において学んできたSDGsの知識を、現地での事象に関連づけて考える良い機会になったと思います。

特に現地で印象的だったことは、無戸籍であるために義務教育を受けられない子どもたちの実情を目の当たりにしたことです。また、マレー系優遇政策の一環で国公立大学へマレー系が優先的に入学できるため、実力に見合う志望大学に進学できず学費の高い私立大学を選ばざるを得ない中華系やインド系の若者がいることも知りました。子どもの権利条約では「すべての子どもが教育を受ける権利」が定められていますが、無戸籍でも義務教育は受けられ、能力に応じて高等教育を受ける機会が比較的保障されている日本との違いを感じる側面が多々ありました。両国の違いは先進国と途上国の違いで一概に括れるわけではありませんが、ただマレーシア滞在期間は、人権への問題意識が高まるとともに「平等」と「公平」はどちらを優先させるべきかという疑問が生まれ、その後日本に帰ってさらに勉強したいと思うようになりました。帰国後の4年秋学期には大学院の授業「Seminar in Global Diversity」に聴講生として参加させていただき、マレーシアで感じた疑問について学問的に掘り下げることができました。

進路、将来の目標

私の人生における目標は「多様な文化的背景を持つ人々が、相互理解の下で調和して共存できる社会の構築に貢献すること」です。卒業後は大阪大学大学院とイギリスの大学院に進学し、移民研究をされている先生方のご指導のもとでマレーシアの国民統合について研究する予定です。植民地独立後のアジア・アフリカ諸国では、その多様な人口構成からしばしば国民統合が重要課題とされてきており、マレーシアもその一例といえます。マレーシアは先住民族を含むマレー系と、イギリス植民地時代の統治政策の名残により中華系・インド系の人々が共存する多民族国家です。独立以降政府は土着の民族であるマレー系を教育や雇用、経済面で積極的に優遇するブミプトラ政策を長年行っており、政治システムも各民族を母体とする民族政治が執られているため、政治行政によって民族の区分がより目立つ国家になっています。様々な要因が複合的に影響した結果、統一した国民意識よりも各自の民族意識が先行し、潜在的な民族間の緊張関係が現在にかけて続いており、こうした状況下で2021年に独立後初となる包括的な国民統合政策が導入されました。私の研究は、マレーシア政府がなぜ独立以降半世紀以上も経過した現在において国民統合を強調し推進しようとしているのか、その背景的要因を明らかにするとともに、マレーシアの目指す国民統合のあり方から、他の多民族国家における社会統合にも応用できる知見を見出すことが目的です。将来的には、移住にまつわる課題の解決、移民の人権と尊厳を保障するNGOや、IOMなど国際機関で働き、関学のモットーであるMastery for Serviceを体現したいと考えています。

プログラムに興味・関心のある方、履修を希望する方等に向けてのメッセージ

本プログラムを履修するためには、1年の秋に出願する必要があり(2025年度より、第2期(2年次春学期)出願もあり)、その際に英語のスコアと志望理由を述べた願書を提出します。選考を通過する志望理由を書くためには、まず自分の中にある社会に対する問題意識や興味関心に真摯に耳を傾け、それを言語化してみることが第一歩です。自分の原体験などがあれば結び付けて書くと説得力を持たせることができます。そこから現時点の考えで良いので、本プログラムの特色を踏まえながら、学部や他のプログラムの履修と並行して何を学び、どのような経験を積みたいかといった4年間の学修計画、さらには将来何がしたいかといった展望や目標に繋げて一貫性を持たせてみましょう。学部を越えた熱い志をもつ学生たちと共に学びたい、学部横断的な学びによって視野を広げたい、国際問題に対してアクションを起こしたい、卒業後の進路をグローバルに切り開きたいといった想いがある方々は、ぜひ本プログラムに出願してみてください。その先により充実した大学生活と、入学時から何倍も成長した自分が待っています。心から応援しています。