立石 裕二准教授(2)

[ 編集者:社会学部・社会学研究科      2016年8月2日   更新 ]

科学技術を社会学的に捉える

担当している授業について教えてください。

「科学・技術の社会学」などの科目を担当しています。科学技術というと、スマートフォンなどの完成品はイメージしやすいですが、それだけだと社会学的には、視野の狭い議論になってしまいます。
授業では、科学技術にはどのような人たちが関わっているかをイメージできるようになることを目的にしています。直接・間接にどんな人が関わっているかを書き出していくと、科学技術といっても社会の中で起きていることであって、科学技術をめぐる問題も、結局は人と人の関係の問題として理解できることが見えてきます。

具体的な例はありますか。

例えば、先端医療の分野では、ヒトの受精卵を研究で使用するのはいいのか悪いのかという議論がずっとあります。もちろん、宗教的観点や倫理的観点からの議論は重要です。しかし、社会学が出来るオリジナルな貢献は、そこにどんな人たちが関わっているのかを捉えることです。
その受精卵は誰の受精卵で、研究に使われた経緯はどうなっているのか。研究者は受精卵の提供者とどういった関係なのか。研究成果は提供者にどういった形で還元されるのか、されないのか。提供者はそれをどういう気持ちで受け止めているのか、といった視点から物事を見ることができます。
いいか悪いかという話だけでは、堂々巡りになってしまうことがあります。そういった議論だけでは見えてこない、関わっている人たちがそれぞれどんな立場で、どう考えるのかという視点を持てることが社会学の強みだと思います。

受験生へのメッセージをお願いします。

あらかじめ与えられた問いを考えるよりも、自分で問いを立ててみたい、自分で立てた問いについて他の人と話しあってみたいという人、あるいはディスカッションが好きな人、今は苦手でも大学での学びを通じて伸ばしていきたいと思う人には、社会学部がぴったりだと思います。
社会学部の大きな特徴は、皆さん自身がどう考えるのかが、学びの中での主題になるということです。皆さん一人ひとりは現代社会に生きる人間で、それぞれ個性、多様性があります。われわれ教員とは世代が違うので、考え方も当然違います。そうした人たちがどう考えるのかを把握することは、社会学にとってまさに中心的な研究テーマです。ディスカッションの機会はほかの学部でもあるかもしれませんが、そうして引き出された一人一人の意見に対して、一番正面から向き合っているのは社会学だと思います。何でもいいので自分の意見を持ち、人に対して話してみて、納得されたり反論されたりするのを楽しむ。話し合った結果を手がかりにして、さらに考えを深めていく。そういうことが好きな人は、社会学部での4年間の学びを充実したものと受け止めて卒業しているように思います。