野波 寛 教授(2)

[ 編集者:社会学部・社会学研究科      2015年5月7日   更新 ]

「ゲーム」で読み解く社会の心理

どのような授業を担当されていますか?

野波教授1

ゲーミング社会心理学という科目を教えています。
この講義では、ゲームを通して人と人との関係/人と社会との関係について学ぶもので、RPG(ロールプレーイングゲーム)に似ています。
ゲームでは、プレーヤーが一定のルールのもとに特定の戦略を選択して、資源の獲得を目指します。もちろん社会は複雑でさまざまな関係性の上に成立していますが、それを単純なゲームに置き換えることで、社会のメカニズムの分析が可能となります。
授業では「習うよりも慣れろ」モットーに、人間関係をゲームとしてとらえ、それを体感してもらう心理実験や、実際の心理教育用ゲームを行っています。

ゲーミング社会心理学についてもう少し教えてください。

野波教授2

RPGといってもプレステのような1人用ゲームではなく、自分と同じタイプ/レベルの思考能力のある対戦者を相手に、お互いに適切な戦略を選び、順位を決めるゲームのことで、一人勝ちや共存共栄などいろいろな決着パターンがあります。
そういう意味では大学受験も1つのゲームとみることもできるかもしれませんね。なぜなら、同じ条件のもと受験生同士が競い合い、得意な勉強方法/受験方法で合格という資源の獲得を目指す仕組みは、受験生の皆さんは意識していないかもしれませんが、ゲームの一つの形式であるといえるからです。

社会学部と文学部の心理学は何が違うのですか?

野波教授3

高校生から、よく質問をもらいます。
社会学部の心理学(社会心理学)は、自分と他者との関係、自分と学校や国家のような集団との関係など、価値観や態度/行動が異なる社会の中で人がどのように変化するのかを学ぶことが中心となります。
一方、文学部の心理学は、例えば「物事をおぼえる=学習する」という頭の働きを調べるなど、脳のメカニズムを明らかにすることを重点にしています。例えば、ネズミなどの動物の学習行動を調べることで、人間の学習行動を明らかにするといった手法です。
それぞれ解明したいしたいコトが異なるので、違うアプローチで調べているのです。

受験生へのメッセージをお願いします。

野波教授4

社会学部にはさまざまな研究テーマを持った教員がいて、幅広い領域を学ぶことができます。
ただ、メニューが多すぎて、何を自分の軸として学ぶべきか迷ってしまう学生もいます。
情報の海の中でおぼれないように、『コレをやりたい!』という、目的をはっきりと決めておくことが重要です。やりたいことを実現するために大学で何を学ぶのか、将来のためにどのような経験を積むのか、というイメージをしっかりもって大学に来て欲しいと思っています。
高校3年生のときに将来の方向性を決めることができれば、大学では授業だけでなく部活でも人間関係でも、そこでの体験を将来につなげて、自分の人生における価値判断のモノサシとなるような大切なものを学ぶことができるはずです。

◆インタビューを終えて・・・
社会心理学との出会いを熱心に語る野波先生の姿からは、何ごとにも真剣に没頭して取り組む先生の人となりがうかがわれました。
ごくありふれた日常の相手と自分との関係を「ゲーム」として捉えてみると・・・。
きっとそこに多くの発見があることでしょう!