[ 法学部 ]学部長メッセージ

法学部長 山田真裕

関西学院大学 法学部長 山田 真裕

 数多くある大学や学部の中から、関西学院大学法学部にご関心を向けてくださりありがとうございます。関西学院大学法学部は、1934年の法文学部の開設に始まり、1946年に法文学部から分離・独立、1948年に新制大学制度に基づく法学部へと移行し今日に至っています。本学部は、初代法文学部長のH.F.ウッズウォースの言葉であるソーシャル・アプローチという教育・研究の理念を、今日まで80年以上の長きにわたって掲げてきました。ソーシャル・アプローチの理念は、市民社会における自由な精神、広く深い社会的視野と教養、社会への貢献(奉仕)という3つの要素を重視した教育・研究を進めるというものです。関西学院大学法学部は、この理念のもとでの人材育成を目指しています。こうした人材を本学部は法曹界、官界、実業界、教育界、学界などに送っています。これらの人々は現在の日本を担い、未来を創造する一翼として社会で活躍しています。
 皆様ご承知のように現在の日本を取り巻く状況は決して楽観できるものではありません。第二次世界大戦後、長く続いた平和さえも脅威にさらされています。そのような状況に対して大学がなしうることは、研究によって社会のために学識を蓄積し、その学識を踏まえた洞察力を持つ賢明な人材を育て社会に送り出すことに尽きます。
 このために関西学院大学法学部は法学と政治学を学びの中心に据えたカリキュラムを用意し、学生を受け入れています。どのような社会にも法律があり、法律を定める政治があります。社会において生きる限り、我々は法や政治と無縁でいることはできません。自分たちの暮らす社会をよりよいものにしようとするとき、我々は法や政治をうまく利用することが求められます。
 人間の社会に争いごとはつきものです。争わざるを得ないにしても、それによって自分自身や社会が被る実害をいかに少なく小さくするか。法も政治もそのための手段です。今のように世の中の先行きが見定めがたい時代だからこそ余計に、我々には法や政治をうまく利用する賢明さが求められるのです。
 そもそも人間は自分が今持っている信念を強化するような情報ばかりを頭に入れがちな傾向があります。その結果誤った信念が強化され、事実認識を誤ってしまいがちになります。陰謀論にはまるのは無知な人ではなく、むしろ多くの情報を持っている人であるという傾向は、こうした自己の信念を維持したい人間の欲求ゆえです。その弊害を回避するためには、明確に示される研究手続きによって得られた知識とその限界を知ることが必要です。これこそが学問を修めることによって得られる恩恵です。
 我々は無限の情報に接することはできませんし、我々の情報処理能力自体にも限界があります。その上で得られた知識でわかることとわからないこと、言えることと言えないことを明確に意識しながら日々の判断を行い、認識上の誤りが見つかればそれを修正することが求められます。こうした賢明さをこのキャンパスで皆さんが育むためのお手伝いができれば、我々教員としてこれ以上の幸せはありません。