2022.06.13.
【新刊紹介】岡本哲雄教授『フランクルの臨床哲学  ホモ・パティエンスの人間形成論』(春秋社)

岡本哲雄教授が『フランクルの臨床哲学  ホモ・パティエンスの人間形成論』(春秋社)を2022年2月に出版されました。岡本先生が当書籍を紹介してくださいます。

フランクルは、『夜と霧』という強制収容所体験記録で、また「ロゴテラピー=実存分析」で知られています。彼は医療や心理療法にとどまらず、教育、福祉、そして人を援助するあらゆる活動の中核に、生きる意味と苦しみにどう向き合うかについての思慮がなければならないと考えました。そのために、いくつもの哲学的著作の中で《意味/受苦》の思想を多角的に深めているのです。

本書は、それらを読み解き、彼の思想を20世紀における「臨床哲学」の一つの貴重な遺産と見立て、同時代の他の思想との対話を通じて、それが歴史に何を応答しようとしたのかを解明しています。これまで、精神療法の枠組みを超えて、その思想のポテンシャルを捉え直す研究はありませんでした。本書はそのささやかな挑戦です。

その際注目したのが「ホモ・パティエンス(受苦する人)」という人間理解の勝れて時代批判的な視点です。これは、近代以降称揚されてきた自律性・能動性を標榜する「ホモ・サピエンス(知性の人)」に対置され、身体によって世界と交わり、世界から影響を「被る」受動性・受苦性を人間存在の真相と見ています。本書はそこから人間形成論の風景を描こうと試みています。

詳しくは、朝日新聞「好書好日」の特設サイト「じんぶん堂」「哲学・思想」に二回にわたり紹介しています。

https://book.asahi.com/jinbun/philosophy/