2023.06.16.
【新刊紹介】齋木喜美子教授『戦後沖縄史の諸相-何の隔てがあろうか』(関西学院大学出版会)

齋木喜美子教授が『戦後沖縄史の諸相-何の隔てがあろうか』(関西学院大学出版会)を2023年3月に出版しました。

 本書は,昨年刊行した『立ち上がる艦砲(カンポー)()喰残(クェーヌク)(サー) 沖縄における教育・文化の戦後復興』(関西学院大学出版会,2022年3月)の続編にあたる書です。いずれの本も,沖縄研究の研究者たちとの共同研究の成果をまとめたものです。しかし学術書でありながら,各執筆者は沖縄研究の専門家でない方,初学者にもわかりやすく沖縄の歴史的課題を理解できるよう工夫を凝らし,末尾にはこの本をより理解してもらえるようなガイド文も添えました。本書で中心的に取り扱ったのは,沖縄戦終結から米国統治下の1972年までの変革期です。この時期は皆さんにはあまり馴染みのない時代かと思いますが,本土とは異なったさまざまな課題が「隔て(フィダティ」として横たわっていた時代でもあります。本書の前半では,その隔てを戦後沖縄の医療援助,戦争児童文学の歴史的展開過程を通して具体的に明らかにしました。後半では,ある音楽教師と戦争未亡人の半生を辿りつつ,戦後の文化復興の意味と沖縄戦の爪痕を描きました。一見関係性のない話題のように見えるかもしれませんが,背景にあるのは「被侵略,被占領としての沖縄近現代史」の諸相です。新たな「隔て」が生まれようとしている今,若い世代にぜひ読んでいただけたら嬉しいと思っています。

『戦後沖縄史の諸相-何の隔てがあろうか』(関西学院大学,2023年3月発行)齋木喜美子著

・著書プロフィール

齋木 喜美子(さいき・きみこ) 博士(学校教育学)

関西学院大学教育学部教授。専門:教育学、児童文化、児童文学。単著に、『近代沖縄における児童文化・児童文学の研究』(風間書房、2004年)、『沖縄児童文学の水脈』(関西学院大学出版会、2021年)、『立ち上がる艦砲の喰残し沖縄における教育・文化の戦後復興』(関西学院大学出版会、2022年)がある。