2023.06.08.
【新刊紹介】峯岸由治教授『生活科授業の探求』(関西学院大学出版会)

峯岸由治教授が『生活科授業の探求』(関西学院大学出版会)を2023年3月に出版されました。

 本書は、民間教育研究団体における生活科授業実践を手がかりに、生活科授業の形態と構成を解明したものです。本書は、まず、生活科授業実践214例を収集し、活動や体験の対象を手掛かりに、実践の動向を把握しています。次に、動向ごとに、活動や体験の構成と関連を形態として整理し、特徴的な実践事例の授業構成を解明しています。
 こうした検討の結果、社会、自然、自己を対象とした授業実践に加え、新しい動向として物質代謝を視点として自然と社会を「一体化」して対象とした授業実践、身近な社会への直接的な参加を図る授業実践等が見られました。授業構成を見ると、踏査、見学、観察、実験、栽培、飼育、調理、加工等、それぞれの活動対象にふさわしい活動や体験が選択され、構成されていました。また、記録や感想等、児童の認知や情意に関連させた表現活動が展開されていました。さらに、紙芝居、巻物、絵本、劇等、多様な表現手段が選択され、児童の認識の総括が行われるとともに、作品を通した他者との交流による効力感の醸成等が行われていました。
このように、民間教育研究団体における斬新で多様な生活科授業実践は、混迷の続く現在の生活科を教科として再生するための多くの示唆を提供しています。お読みいただければ幸いです。

『生活科授業の探求』(関西学院大学,2023年3月発行)峯岸由治著

・著書プロフィール

峯岸由治(みねぎし・よしはる) 博士(学校教育学)

関西学院大学教育学部教授。専門:社会科教育、生活科教育、日本文化教育、授業研究。単著に『「地域に根ざす社会科」実践の歴史的展開と授業開発 授業内容と授業展開を視点として』(関西学院大学出版会、2010年)、共著に『多様化時代の社会科授業デザイン』(晃洋書房、2020年)、『初等社会科教育の理論と実践-学びのレリバンスを求めて-』(教育情報出版、2022年)等がある。