統計物理研究室

谷口 亨 (たにぐち とおる) 教授

統計物理研究室

研究分野:
非平衡統計力学、カオス力学系、量子輸送現象
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 皆さんの親しい友達の1人を思い浮かべて下さい。その方について、自分の親から「その人どういう性格?」と聞かれたらどう答えますか。皆さんは、その友達は「のんびり屋さん」「朝早起きする」「サッカーが大好き」などいろいろな表現で答えることでしょう。では、ある外国人から「日本人てどういう性格?」と聞かれたときはどうでしょう。これは少々考えますね。日本人は沢山いて様々な性格の人がいるからです。「いろいろな人がいるから答えられないよ」と言う方もいるかもしれません。しかし、1つの例として、多くの日本人にある日何時に起きたか尋ねると多くの人が朝6時頃と答えたとしましょう。そして同じ質問をその外国人の生まれた国で行ったとき、多くの人が朝7時に起きると答えたとします。すると、先ほどの外国から来た人に「日本人は早起きだよ」と答えてもそれほど間違いではないのではないでしょうか。そう、多くの人に尋ねてみる、つまりアンケートをとることによって、集団の性格が分かるようになるのです。
 さて、我々の世界は、原子と呼ばれる数多くの小さい粒子でできていることが分かっています。沢山の原子が集まって我々の世界の様々な物質を形作っているわけですが、それについて、自分の親から「その物質はどういう性格?」と尋ねられたらどう答えるべきでしょうか。原子に日本語で尋ねてみるわけにはいきませんので、違う方法でアンケートを採らなければなりません。物理学では、100年以上にわたって、原子の集団にアンケートを採る様々な方法について提案し、実際にそれらのアンケートをとることにより原子の集団の性質を明らかにしてきました。我々の身の周りの物質や現象にアンケートをとるためのそれらの方法はまとめて「統計力学」と呼ばれています。例えば、あなたが「今日は暑いなあ」と思ったとき、実はそれは、我々が自分の周りの空気の分子の動きの激しさについてアンケートをとると、激しく動く空気分子が多いことを表すということを統計力学は教えてくれます。
 統計力学は、もともと非常に多くの粒子からなる巨視的な系を記述する物理として発展し、そのような系の静的な状態の記述に素晴らしい成功を収めてきました。一方で、熱の流れや粒子の流れがあるといった動的に振る舞っている系の統計力学は、その基礎となる理論の構築においてさえ現在でも活発に研究が行われている分野です。例えば、流れのある系において一般にどのように温度を考えればよいかさえ、未だに論争が続けられています。また、一方で、近年の微細加工技術の急速な発展により1ミリメートルの何万分の一といった系の統計力学的な性質にも注目が集まり、従来の巨視的性質に基づいた統計力学をいかにしてより小さな系に適用できるように拡張するかについて議論されるようになりました。さらに、それらの巨視的あるいは微視的な系での統計力学的な性質が現れるために必要な力学的な性質とは何かについても議論が進められています。我々は、このような微視的あるいは巨視的な系における動的な現象を記述する統計力学は何かについて研究しています。