赤外線天文学研究室

松浦周二

松浦 周二 (まつうら しゅうじ) 教授

赤外線天文学研究室

研究分野:
赤外線天文学,宇宙背景放射,観測ロケット,惑星探査機
研究室サイト

赤外線で宇宙を探る

CIBERで見つかった宇宙赤外線背景放射のむら
(Zemcovほか2013年Science誌より)

赤外線の宇宙背景放射を観測することにより宇宙のはじまりや天体のはじまりの痕跡を探査しています。

宇宙で最初に生まれた星や原始ブラックホールは高温のため紫外線で輝いていましたが、その光はビッグバンに始まる宇宙の膨張により波長が引き伸ばされ、現在は目に見えない赤外線として観測されると考えられています。また,ビッグバンで生み出された素粒子ニュートリノや宇宙初期に誕生した天体の爆発で周囲に撒き散らされた固体微粒子(ダスト)は、さらに波長の長い赤外線として観測されます。ところが宇宙や天体のはじまりの証拠となる赤外線はあまりにも弱く通常の観測では暗すぎて捉えられません。そこで私たちは、おびただしい数の天体の放射が天空に淡く広がった「宇宙背景放射」を観測するという独自の手法で研究を行なっています。

NASAロケットで大気圏外から観測する

地球大気は赤外線を吸収したり放射したりするため、宇宙初期から来るかすかな赤外線の宇宙背景放射を地上で捉えることは到底かないません。私たちはアメリカの研究者たちに声をかけNASAのロケットを用いて大気圏外から観測を行ないました。結果は驚くべきことに、宇宙背景放射に宇宙初期の痕跡のような成分が見つかりました。これを確かめるために関学で開発した新型望遠鏡を搭載した次期ロケット実験CIBER-2を行います。新型コロナの影響で予定が大幅に遅れてしまいましたが、実験に携わった学生たちとロケットの打上げを心待ちにしています。

JAXAの衛星および探査機計画

CIBER-2以外にも、赤外線天文衛星「あかり」が見つけた巨大ブラックホールが潜む銀河の研究や小惑星探査機「はやぶさ2」による太陽系小天体の研究も行なっています。将来は、ニュートリノ背景放射の探索を含むロケット実験を継続的に行い、さらにはロケット実験で培った技術を基に小型衛星や惑星探査機を用いた宇宙望遠鏡の計画をJAXA等と協力して進めてゆきます。

研究室の雰囲気

研究室の様子

研究室の学生たちは上のような多彩なプロジェクトに参加することで宇宙に特有なものづくりや測定技術およびデータ解析手法を習得します。また、国際共同研究を通して海外の学生や研究者との交流やチームワークを経験します。小さなロケット実験を学生たちとワイワイガヤガヤ試行錯誤しながら行うことを望みJAXAから関学に移ってきましたが、大きな宇宙プロジェクトに携わる卒業生がどんどん出てくることも望んでいます。2021年度開始予定のJAXA連携大学院では惑星探査や衛星計画に参加する関学生が当研究室から出ることでしょう。