そうせいTIMES 第7号 総政のフィールド・ワークは、世界がキャンパス。世界市民として、国際感覚を実践的に身につけます。(2013/12/02 発信)

[ 編集者:総合政策学部・総合政策研究科 2015年6月11日 更新 ]

世界遺産の保全に関する実態について

今井教授

今井教授

世界遺産へのアプローチの始まりは、私が行ったフィールドが世界遺産に指定されていたので、その地域の生活文化について調べ始めたことがきっかけです。世界遺産は、世界中に1,000箇所近くあり、人類共通の宝であるから保護しなくてはいけないということで、指定された国が責任を持って維持管理します。しかし現状は、観光地化による弊害が目につきます。例えば、ネパールのエベレストと周辺地域を、政府は観光地化して価値を高めようとします。すると住民の生業サイクルが観光業を中心に回り始めた結果、地域の自然に対する知識や技術が急速に失われてしまいました。その中には、将来私たちにとって役に立つ内容が豊富に含まれているはずです。私たちは、フィールド・ワークによってそれらを記録に残していく必要があるのです。

授業でのフィールド・ワーク実践

小西准教授

小西准教授

私は、前職で8年滞在したフィリピンにおいて、特に貧困層の中での教育問題に重点をおいた支援活動に取り組んでいます。フィリピンでは富裕層と貧困層の格差が広がり、urban poorと呼ばれる都市部における貧困問題が深刻化しています。ストリートチルドレンが暮らすスラム街や、かつてスモーキーマウンテンと呼ばれたゴミ山を学生達と訪れ、現地の国際NGOのスタッフと共に、子供たちの教育支援活動を実施するという取り組みを2009年より継続しています。

今井教授

今井教授

先ほども触れましたネパールは私の調査フィールドの1つですが、ゼミの海外授業でも訪れました。ネパール・カトマンズ郊外の町バクタプールの世界遺産調査です。エベレスト山麓だけでなく、都市部でも世界遺産指定と観光地化によって住民生活が制約を受けていることが浮き彫りになりました。今年はゼミの実習で沖縄県・西表島を訪問しました。「環境にやさしい」とされるエコツアーが、どの程度環境にやさしいものであるのか、現場を直接観察することによって検証するためです。

現地の人の生活に触れて、体験しなければわからないこと

今井教授

今井教授

現地調査では、私は人類学で言うところの参与観察※によって調査を進めています。これはフィールド・ワークには欠かせない調査手法です。自分が体験して初めて、その人の身になって考えることができるようになります。

小西准教授

小西准教授

ものごとの表面だけではなく、根幹の部分にまで目を向けることが大切だということですね。事前に現地の知識を得ておくことは必要ですが、さらに現地へ行って自身で体験することによって、その場所の課題や問題点が明確になり、多面的なアプローチで物事が理解できます。

※「参与観察」・・・活動に参与しながら、社会・活動を分析し理解すること。