そうせいTIMES 第5号 無意識な日常を意識すれば、総政の学びが見えてくる(2012/07/29 発信)

[ 編集者:総合政策学部・総合政策研究科 2015年6月11日 更新 ]

4つの異なる学科が集う関西学院大学総合政策学部。一見関わりのない分野が交わる時、どのような関係が生まれるのだろう。都市政策学科の八木康夫教授と総合政策学科の本田盛教授との対談から、総政の学びの可能性をさぐる。

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◆教員のステータス、担当授業科目は、2012年7月29日発行時点。

各教授陣

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言語と建築に潜む共通の「ルール」

八木教授

八木教授

本田先生の専門分野である言語と私の専門分野である建築とは、まったく関わりがないようで、意外な共通点がありますよね。

本田教授

本田教授

そうですね。言語にも建築にも「無意識のルール」が存在している、といったところでしょうか。言語の分野でいえば、私たちが当たり前に日本語を話せるのは脳の中に生物学的に組み込まれた無意識のルールがあるからだと考えられています。例えば、「花子は料理がうまい」とはいっても「花子は料理をうまい」とはいわないことを、私たちは学んだわけではなく判別することができるというわけです。

八木教授

八木教授

都市空間や建築物、あるいはプロダクツでいえば、人間が自然と好む形や無意識にホッとする形の存在にルールが潜んでいます。
パリのノートルダム寺院の形には1:1.618 の「黄金比」が隠されており、海外の俳優たちも黄金比に近い縦長のシャープな顔立ちが多く見られます。これに対して、日本では少し横長の1:1.4 の「白銀比」が好まれますね。郵便ポスト、スマートフォン、キャラクターのほか芸能人の顔立ちに至るまで、黄金比よりも少し横長で優しい印象のものが人気です。

本田教授

本田教授

個々が集まることで広がりや深みが出るところも共通していますよね。言語は個々の文やメッセージが集まり「談話」となります。「ポライトネス理論」という談話理論によると、人が円滑な人間関係を確立・維持しながらコミュニケーションをする時、相手との関係や距離感によって言語表現を選ぶといいます。ルールが無意識に働くのです。

八木教授

八木教授

その点、建物の集まりが織りなす街の風景は、その時代ごとにおけるルールで編成されているといえます。日本各地では常に景観論争や風景の変化が起こっていますが、これが街の活性化をもたらしているという見方もあります。アフォーダンス※ですね、要は、京都駅やスペイン広場の階段が「椅子」としてアフォードされているように、本来とは異なる使い方が後から見出されるケースも、実は空間を豊かにしているのかも知れません。

※ アフォーダンス(affordance)・・・生態心理学者「ジェームズ・J・ギブソン」が、英語の「afford:与える、提供する」という意味から創り出した造語。例えば、階段は私達の身体を支えること、上下移動することをアフォードしている。つまり、アフォーダンス理論では、階段が私達の身体を支えることにより、立たせたり、座らせたり、上下移動させたりしていることになる。