発がん分子機構学(大谷)研究室

割田 友子 (わりた ともこ) 専任講師

発がん分子機構学(大谷)研究室

研究分野:
新規抗がん剤の探索、比較腫瘍学、応用分子細胞生物学
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研究テーマ

 新薬開発には長い年月と莫大な費用がかかるため、今すでにある薬(既存薬)を別の病気の薬として再開発するドラッグ・リポジショニング(既存薬再開発)が注目されています。コレステロール低下薬であるスタチンは脂質異常症の治療薬として使われる既存薬ですが、がんを抑制する効果があることが報告され、近年、がんの治療薬として期待がかかっています。しかし、実際のスタチンによる制がん効果の程度はがん細胞の種類によりかなりの差があり、その具体的な作用メカニズムの詳細はわかっておりません。スタチンのがん治療への臨床応用の実現には、スタチン適応のがんを的確に判断するための情報が必須です。私たちは、そのために重要な“スタチン感受性を保証する分子”の同定に取り組んでいます。

具体的に行っている研究活動

前立腺がん細胞株

 細胞内の代謝産物を網羅的に解析し(メタボローム解析)、スタチンが効くがん細胞とスタチンが効かないがん細胞の細胞内代謝の変動の比較を行っています。その結果を元に、現在は以下のテーマで研究を進めています。
・がん細胞の糖代謝活性レベルとスタチン感受性との関連
・HMG-CoA還元酵素の活性レベルがスタチンの制がん効果に及ぼす影響
・メバロン酸経路に関わるCoA産生量がスタチンの制がん効果に及ぼす影響
・がん細胞のコレステロール合成能とスタチンの制がん効果との関係
また、国内の獣医系大学、海外の医学系大学と共同研究を行っており、医学・獣医学の視点からの研究も展開しています。
卒業研究を通して、細胞培養、DNA・RNA・タンパクの抽出、定量的RT-PCRによる遺伝子発現量の比較、代謝物の比色定量、ウエスタンブロットによるタンパク量の解析等、基本的な細胞生物学的および分子生物学的技術の習得を目指しています。