地球環境化学研究室

谷水 雅治

谷水 雅治 (たにみず まさはる) 教授

地球環境化学研究室

研究分野:
地球環境問題、気候変動、質量分析
研究室サイト
伊藤 茜

伊藤 茜 (いとう あかね) 助教

研究分野:
環境地質学、同位体地球化学

研究テーマ

地球システムと人類の調和について化学的視点から考える
地球化学という学問分野では、周期表に整然と並べられた元素たちが、地球や宇宙のなかでどのような濃度で分布しているのかを正確に把握することが重要な研究目的のひとつです。地球環境化学研究室では、とくに地球表層での、大気-水圏-土壌のあいだで、さまざまな元素がどのくらいの濃度で、どのような化学種で、どれぐらいの時間とどまっているのか、を正確に把握するために、いろいろな環境試料(河川水や地下水、エアロゾルや降雨、土壌や植物など)を野外調査により採取し、化学処理を行って分析しています。
さらに、近年の人類の工業活動は地球環境に影響を与えるほど大きな因子となっており、地球がもともと持っている元素循環のサイクルに、どのように影響を及ぼしているのかについての把握を試みています。たとえば炭素(C)という元素を例にとると、大気中ではCO2として、水圏では溶存炭酸イオンとして、土壌や地中では石炭、植物や石灰岩として固体で存在しています。大量の化石燃料の利用と大気への放出が、地球の炭素循環システムにどのような変化をもたらすかは、我々の直面する地球温暖化問題と関連して、早急に把握すべき重要な課題です。

具体的な研究活動

研究活動の様子

元素を最新の技術で分析し、過去の情報を把握して未来に生かす
地球表層の中でも大気や水圏では、さまざまな化学反応が複雑に絡み合いながら、元素が循環しています。そのなかでの元素の挙動を正確に知るために、雨水や地下水の元素分析を行っています。たとえば地下水は、雨水が土壌中に染み込んで形成されますが、雨水中に溶存した酸素は地下水が流れていくうちに徐々に消費されるため、酸化的な地下水から還元的な地下水に変化していきます。この過程で、元素は還元されたり、還元的な環境に対応した化学種に変化していきます。地下水中の代表的な溶存化学種として硝酸性窒素があります。硝酸性窒素は農業における化学肥料や畜産での家畜糞尿などの人為的な要因から地下水に混入する例が報告されており、水質の悪化が懸念されています。現在は熊本市域の地下水の広域調査を行っており、硝酸性窒素の地域分布をまずは把握し、同位体トレーサー(注1)を用いて、その混入起源の推定を試みています。硝酸性窒素は地下水中では徐々に還元されてほかの窒素化学種に変化するため、その混入起源の追跡が難しくなります。地下水中で変化しにくい新しい同位体トレーサーを確立し、地下水の流れの把握に生かすことで、混入起源の特定を目指しています。
元素の中には、産業には欠かせないが、環境中では毒性を示す元素も多くあります。これらの元素は、ごく微量でも生態系に悪影響を与えるため、非常に低い濃度まで正確に定量する必要があります。1グラムの試料中に、数十億分の1グラムしか目的元素を含まない試料の濃度定量には、無機質量分析(注2)の技術をもちいた、試料中の元素イオンを一個ずつ計測する手法が使われており、技術開発によるさらなる微量な濃度の定量も試みています。
ほかの化学分野との大きな違いは、時間軸が入る研究であるという点です。たとえば地球温暖化問題は、過去に遡って大気中のCO2濃度の変化を把握することで、20世紀後半のCO2濃度の上昇速度が、地球の歴史上で稀にみる速さであることがはじめてわかります。そのほかの元素についても、湖や泥炭地の堆積物はゆっくり積み重なってできるため、過去数千年間の環境の情報を保持していることから、現在の最新の分析技術で過去を紐解き、未来への予測へ生かすことができます。

研究室の雰囲気

学生の自主性を重んじて主体性を育てる
環境問題は、化学だけではなく物理や生物、地学といった科学全体でとらえなければならない課題です。さらに環境問題にどう対処するかという意味では、工学的あるいは社会学的な連携も視野に入れて研究に臨まなければなりません。このような背景から、ひとつの専門分野を深く掘り下げるよりも、さまざまな領域の研究を統合して地球環境問題に対処するアプローチをとっており、学生にも幅広い研究テーマを出しています。これらの研究テーマは、国連の定めたSDGsの17目標の多くの項目に合致しています。研究テーマ相互はある程度独立して実験を開始しますが、研究が進んでいくうちに、研究テーマは相互に関連していき、最後にはチーム全体として課題解決にあたる、そのような研究スタイルを理想としています。大学は学生が主体となって学ぶ場であることから、学生自ら動いて自分のペースで研究を進め、責任をもって課題に取り組み、新たな知見に至る、そして充足感と自信をもって社会に羽ばたいていく、そのようなスタイルの指導を行っています。

研究室の様子1
研究室の様子2
研究室の様子3